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第一章

後はよろしく。頑張れ蒼空 from陽翔

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「ふあ~ああ」

御影さんを好きになってからの俺は、気持ちが乱高下しがちだ。
俺は割と楽天的というか、ポジティブ思考だと思っていたのに、最近はその考えに疑問符が打たれることがしばしばだ。

「おはよう蒼空。どうしたの? 珍しいね、寝不足?」
「……ホントだ。可愛そうに、恋の病か?」

「はあ……。そうかもな。御影さんに相手にされてないしな、俺」
「……そうなの?」
「うん、ほぼ俺に対して無表情だし」
「ん~? どうだろ。御影先輩って、よほど親しくならない限り心許しそうにない感じだからな。蒼空に対してだけってわけじゃないと思うぞ」

「はあ……」

励まそうと思って陽翔は言ってくれたんだろうけど、その一言で昨日の御影さんの表情を思い出してしまった。
剣道部の田上先輩に見せていたあの表情。鈴木さんたちに見せるリラックスした表情とはまた違って、楽しそうな顔をしていた。

「蒼空……」
「なあ、そ……」
「松田くーん!!」

陽翔の声をかき消す大声で、鈴木さんの声が飛んできた。

「鈴木さん……、あっ」

鈴木さんの隣には御影さんもいた。

「おはようございます」
俺につられて、陽翔も由羽人も同じように御影さんたちに挨拶をした。

「おはよう。……ん~? 寝不足? なんだか元気ないね」
「そんなことないですよ。元気です!」

御影さんも傍にいるんだ。
まさかその当人に恋煩いしているから元気がないんだなんて思われたら、御影さんに会いづらくなってしまう。
ただでさえ相手にしてもらえない立場なのに、これ以上気まずい感じになるのは嫌で、カラ元気で鈴木さんに答えた。

チラリと御影さんを窺うと、なんだかちょっぴり面白くなさそうな顔。

「…………」

やっぱ俺のこと迷惑なのかな……。
また落ち込んでしまいそうになり始めたところで、陽翔の意外な声が飛んだ。

「鈴木先輩! ちょっと俺らに付き合ってくれませんか?」
「え?」

陽翔が由羽人をグイッと引き寄せて、由羽人と2人で話があるというようなジェスチャーをした。

「おい、陽翔?」
「いいから、いいから。俺と由羽人で、鈴木先輩にちょっと用があるんだ。駄目ですか? 先輩」

クルンと真顔で仰ぎ見る陽翔に対して、鈴木さんは何かに思い当たったような表情になった。

「オッケー。いいよ。……じゃあ御影、松田君のことよろしくな」
「え!? おい、愁……!」

「蒼空、先行ってるからな」
「て、おい。陽翔……!」


戸惑う俺たちを残して、3人はまるで付いてくるなと言うように、足早で俺たちから離れて行った。
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