12 / 57
第一章
後はよろしく。頑張れ蒼空 from陽翔
しおりを挟む
「ふあ~ああ」
御影さんを好きになってからの俺は、気持ちが乱高下しがちだ。
俺は割と楽天的というか、ポジティブ思考だと思っていたのに、最近はその考えに疑問符が打たれることがしばしばだ。
「おはよう蒼空。どうしたの? 珍しいね、寝不足?」
「……ホントだ。可愛そうに、恋の病か?」
「はあ……。そうかもな。御影さんに相手にされてないしな、俺」
「……そうなの?」
「うん、ほぼ俺に対して無表情だし」
「ん~? どうだろ。御影先輩って、よほど親しくならない限り心許しそうにない感じだからな。蒼空に対してだけってわけじゃないと思うぞ」
「はあ……」
励まそうと思って陽翔は言ってくれたんだろうけど、その一言で昨日の御影さんの表情を思い出してしまった。
剣道部の田上先輩に見せていたあの表情。鈴木さんたちに見せるリラックスした表情とはまた違って、楽しそうな顔をしていた。
「蒼空……」
「なあ、そ……」
「松田くーん!!」
陽翔の声をかき消す大声で、鈴木さんの声が飛んできた。
「鈴木さん……、あっ」
鈴木さんの隣には御影さんもいた。
「おはようございます」
俺につられて、陽翔も由羽人も同じように御影さんたちに挨拶をした。
「おはよう。……ん~? 寝不足? なんだか元気ないね」
「そんなことないですよ。元気です!」
御影さんも傍にいるんだ。
まさかその当人に恋煩いしているから元気がないんだなんて思われたら、御影さんに会いづらくなってしまう。
ただでさえ相手にしてもらえない立場なのに、これ以上気まずい感じになるのは嫌で、カラ元気で鈴木さんに答えた。
チラリと御影さんを窺うと、なんだかちょっぴり面白くなさそうな顔。
「…………」
やっぱ俺のこと迷惑なのかな……。
また落ち込んでしまいそうになり始めたところで、陽翔の意外な声が飛んだ。
「鈴木先輩! ちょっと俺らに付き合ってくれませんか?」
「え?」
陽翔が由羽人をグイッと引き寄せて、由羽人と2人で話があるというようなジェスチャーをした。
「おい、陽翔?」
「いいから、いいから。俺と由羽人で、鈴木先輩にちょっと用があるんだ。駄目ですか? 先輩」
クルンと真顔で仰ぎ見る陽翔に対して、鈴木さんは何かに思い当たったような表情になった。
「オッケー。いいよ。……じゃあ御影、松田君のことよろしくな」
「え!? おい、愁……!」
「蒼空、先行ってるからな」
「て、おい。陽翔……!」
戸惑う俺たちを残して、3人はまるで付いてくるなと言うように、足早で俺たちから離れて行った。
御影さんを好きになってからの俺は、気持ちが乱高下しがちだ。
俺は割と楽天的というか、ポジティブ思考だと思っていたのに、最近はその考えに疑問符が打たれることがしばしばだ。
「おはよう蒼空。どうしたの? 珍しいね、寝不足?」
「……ホントだ。可愛そうに、恋の病か?」
「はあ……。そうかもな。御影さんに相手にされてないしな、俺」
「……そうなの?」
「うん、ほぼ俺に対して無表情だし」
「ん~? どうだろ。御影先輩って、よほど親しくならない限り心許しそうにない感じだからな。蒼空に対してだけってわけじゃないと思うぞ」
「はあ……」
励まそうと思って陽翔は言ってくれたんだろうけど、その一言で昨日の御影さんの表情を思い出してしまった。
剣道部の田上先輩に見せていたあの表情。鈴木さんたちに見せるリラックスした表情とはまた違って、楽しそうな顔をしていた。
「蒼空……」
「なあ、そ……」
「松田くーん!!」
陽翔の声をかき消す大声で、鈴木さんの声が飛んできた。
「鈴木さん……、あっ」
鈴木さんの隣には御影さんもいた。
「おはようございます」
俺につられて、陽翔も由羽人も同じように御影さんたちに挨拶をした。
「おはよう。……ん~? 寝不足? なんだか元気ないね」
「そんなことないですよ。元気です!」
御影さんも傍にいるんだ。
まさかその当人に恋煩いしているから元気がないんだなんて思われたら、御影さんに会いづらくなってしまう。
ただでさえ相手にしてもらえない立場なのに、これ以上気まずい感じになるのは嫌で、カラ元気で鈴木さんに答えた。
チラリと御影さんを窺うと、なんだかちょっぴり面白くなさそうな顔。
「…………」
やっぱ俺のこと迷惑なのかな……。
また落ち込んでしまいそうになり始めたところで、陽翔の意外な声が飛んだ。
「鈴木先輩! ちょっと俺らに付き合ってくれませんか?」
「え?」
陽翔が由羽人をグイッと引き寄せて、由羽人と2人で話があるというようなジェスチャーをした。
「おい、陽翔?」
「いいから、いいから。俺と由羽人で、鈴木先輩にちょっと用があるんだ。駄目ですか? 先輩」
クルンと真顔で仰ぎ見る陽翔に対して、鈴木さんは何かに思い当たったような表情になった。
「オッケー。いいよ。……じゃあ御影、松田君のことよろしくな」
「え!? おい、愁……!」
「蒼空、先行ってるからな」
「て、おい。陽翔……!」
戸惑う俺たちを残して、3人はまるで付いてくるなと言うように、足早で俺たちから離れて行った。
2
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
これは兄さんじゃありません
くるむ
BL
東田志音(しおん)の兄、壱琉(いちる)はある日一人旅に出たまま行方知れずになった。
だが兄の事をどうしても諦められない志音は、兄の友人大翔(ひろと)、新(しん)、晴斗(せいと)の3人と、行方不明になる直前に兄が宿泊の予約を入れていたホテルに泊まりに行くことを決意。
そしてとうとう、行方不明になった壱琉に出会うことが出来たのだが……?
「ちょっと待って、なに? 僕のこと好きになっちゃった!? 待って、待って、待って。急にキスしたりなんてしないで―――!!」
ブラコンで兄さん大好きな志音と、彼を取り巻く人たちとの悲喜こもごもとした(?)ラブストーリーです??
短いですが、シリアスごちゃまぜの基本ギャグ。
なんとも言えない空気感が漂っていると思います。ちょっぴりご注意くださいませ。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる