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第一章

ライバルなのか……?

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「お疲れ様でしたー」

練習後に野田の持って来たスナック菓子も完食し、部室を出た。
大杉先輩を中心に、皆でワイワイ話しながら校門へと向かう。すると前方にも部活終わりらしき団体が歩いていた。

「おい、あれ剣道部じゃないか? ……あ、やっぱそうだ。御影さんがいる」

誰かの一言にハッとして御影さんを探すと、団体の前方でにこやかな表情で話しをしている御影さんが見えた。


……あんな顔、するんだ。

俺が御影さんを知ってから、初めて見る表情な気がする。御影さんにそんな顔を見せているのはどんな人なんだろうと、気持ちをざわつかせながら凝視した。

「あ、田上先輩だ。いいなぁ。あの美人にあんな顔させちゃって」

部活仲間の塩谷の言葉に『え?』と思わず反応してしまった。

「なに?」
「あ、いや。……田上先輩って、今御影さんとしゃべってる人?」
「ああ。剣道部の部長だよ。多分御影さんが尊敬してる人なんじゃないかな」

……尊敬。

俺が大杉先輩を尊敬するのと同じ感じなのかな。
でも、それにしたってあの楽しそうな表情は、地味に俺の気持ちをエグってくれる。

「はあ……」

自然とため息が出てしまった。

「なんだため息なんかついて」

大きな手で肩をポンと叩かれて、グラグラと揺らされた。

「うわわわわ、と……、大杉先輩」
「どうした? 悩みでもあるのか?」

心配そうに顔をのぞかれて、グッと何かがこみ上げて来てしまいそうになり慌てた。

「あー、いや。なんでもないです。小腹が空いちゃって」
「何言ってんだ、お前。さっきの野田の差し入れをバカバカ食べてたじゃないか」
「アハハ、やだなー。それはそれ、これはこれです」
「まあ、ハードな練習をこなすにはちゃんと食べなきゃだめだからな」

あー、やっぱり大杉先輩にはかなわないな。
こんな風に部員のことを気にしてくれるのは、部長だからって事だけじゃなくてきっと先輩自身の性格なんだろう。

「アレー、三上?」

宇佐美先輩の声がして、前を歩いている剣道部の団体がこちらを振り向いた。
振り向いた中には御影さんも居て、俺とパチリと目が合った。
ぺこりと頭を下げると軽く頷いてくれたようだ。

……トクン。


もしかしたらこんな軽い挨拶なんて流されるかもしれないと思っていただけに、御影さんが反応を返してくれたというただそれだけの事で嬉しさがこみ上げて来た。
そんな馬鹿みたいな小さな幸せに浸っていたら、御影さんの隣にいる田上先輩とかいう人が『誰?』というような表情で御影さんに話しかけた。

それに対し、一言二言話をした後、田上先輩が俺の所にチラリと視線を向ける。

その感じがなんだか意味深で……。


もしかしたらこの人は、俺のライバルなのかもしれない。
俺の気持ちはさらにザワザワと、さっきよりも激しく動揺し始めていた。
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