10 / 57
第一章
冷静な人
しおりを挟む
「御影さん!」
走り寄って名前を呼んだら、御影さんが『え?』という表情で振り返った。
まさか俺が話しかけるとは思ってもいなかったらしい。
「……なに?」
一見綺麗で愛らしい風貌に相反するニコリともしないその表情が、御影さんの冷静さを余計に際立たせていて、俺は悲しいことに緊張を強いられるハメに陥る。
そういや御影さんの笑っている表情も、バカ笑いに程遠い静かで控えめな表情だったよなあ……。
「用がなければ行くよ。のんびりしてる暇はないだろ? 君も」
「あ、すみません! あの……、えとっ、えと……、す、好きです」
「…………」
特に用事があったわけじゃない。ただ御影さんの傍に行きたい、そして出来れば何か話がしたいと思っただけだ。
だから慌てて発した俺の言葉は、すごくバカ丸出しな物になってしまっていて焦った。
御影さんも絶句しているし……。
「――知ってる。前にも聞いた。だけど……」
「え?」
なんだか意味深にも聞こえる御影さんの返事に、なんだろうと御影さんを見た。だけど御影さんは相変わらず静かな伏し目がちな表情で、言葉以上のことを読み取ることが出来ない。
「いや、何でもない。これ以上のんびりしていたら遅刻する。もう行くぞ」
「あ、……はい。引き止めて、すみませんでした」
俺の挨拶が済むや否や、すぐに御影さんは踵を返して去って行ってしまった。
……片思いって、悲しいなあ。
好きって気持ちはムクムクと嫌になるくらい育っているのに、大好きな御影さんとの距離は一向に縮まる気配すらない。
あ~、もうっ!
グダグダ考えるのは性に合わないんだよ!
……だけど御影さんは、俺にとってはまるで雲の上に居るような人だ。
いくら好意的に応援してくれる人がいたとしても、その雲の上に居るような人が俺のことを好きになってくれる確率はかなり低いだろう。
どうすれば御影さんが俺のことを好きになってくれるのか、何度考えても出てきてくれない答えに、俺はため息を吐いたのだった。
走り寄って名前を呼んだら、御影さんが『え?』という表情で振り返った。
まさか俺が話しかけるとは思ってもいなかったらしい。
「……なに?」
一見綺麗で愛らしい風貌に相反するニコリともしないその表情が、御影さんの冷静さを余計に際立たせていて、俺は悲しいことに緊張を強いられるハメに陥る。
そういや御影さんの笑っている表情も、バカ笑いに程遠い静かで控えめな表情だったよなあ……。
「用がなければ行くよ。のんびりしてる暇はないだろ? 君も」
「あ、すみません! あの……、えとっ、えと……、す、好きです」
「…………」
特に用事があったわけじゃない。ただ御影さんの傍に行きたい、そして出来れば何か話がしたいと思っただけだ。
だから慌てて発した俺の言葉は、すごくバカ丸出しな物になってしまっていて焦った。
御影さんも絶句しているし……。
「――知ってる。前にも聞いた。だけど……」
「え?」
なんだか意味深にも聞こえる御影さんの返事に、なんだろうと御影さんを見た。だけど御影さんは相変わらず静かな伏し目がちな表情で、言葉以上のことを読み取ることが出来ない。
「いや、何でもない。これ以上のんびりしていたら遅刻する。もう行くぞ」
「あ、……はい。引き止めて、すみませんでした」
俺の挨拶が済むや否や、すぐに御影さんは踵を返して去って行ってしまった。
……片思いって、悲しいなあ。
好きって気持ちはムクムクと嫌になるくらい育っているのに、大好きな御影さんとの距離は一向に縮まる気配すらない。
あ~、もうっ!
グダグダ考えるのは性に合わないんだよ!
……だけど御影さんは、俺にとってはまるで雲の上に居るような人だ。
いくら好意的に応援してくれる人がいたとしても、その雲の上に居るような人が俺のことを好きになってくれる確率はかなり低いだろう。
どうすれば御影さんが俺のことを好きになってくれるのか、何度考えても出てきてくれない答えに、俺はため息を吐いたのだった。
2
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる