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第一章

靡いてくれない…

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「額、赤くなってるよ。大丈夫?」
「はい、大丈夫です」

御影さんと同じチョコバーを食べれていることに満足している俺は、満面の笑みで答えた。
と、突然横から手が伸びてきて、俺の肩を山木さんがパシパシと叩く。

「おもしれ―! 松田君ってホント面白いな。こんな弟、欲しかったなー」
「……山木さんって一人っ子ですか?」
「いーや。生意気な弟が2人もいるよ。松田君と違って可愛げの欠片も無いけど」
「反抗期、ですかね?」
「まあ、そうかもしれないけどなー」

鈴木さんも山木さんも俺のことを受け入れてくれて、気を遣ってくれている。だから俺は2年生の教室にお邪魔しているにも関わらず、緊張しないで済んでいる。

ホント、いい人たちだよなあ。楽しいし。


すっかりこの2人に打ち解けてしまった俺は、お昼休みを目いっぱい上級生の教室で満喫してしまっていた。


「あ、そろそろ午後の授業が始まる時間ですね。俺、もう戻らなきゃ」
「ああ、本当だ。あっという間だったな。またおいでね」
「はい、ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げて挨拶をした後、御影さんの方を向いた。
パチリと目が合ったのに、フイッと逸らされる。


――ズキン


……御影さんにはやっぱり、俺って迷惑なままなのかな。


明るくバイバイと手を振ってくれる鈴木さんたちに心配を掛けるわけにはいかないので、目を合わせてくれない御影さんに落ち込みながらも、俺も手を振って御影さんの教室を後にした。


恋がこんなに大変なものだなんて知らなかった。
他人の恋を応援している時は、自分のことじゃないから周りもよく見えていたけど、いざ自分のこととなると俺がこうやって頑張っていることも正解になっているのかちっとも分からない。


でも、分からないからと言って、指をくわえてジッと見ているだけだなんて俺には出来そうもないから、当たって砕けろの精神で頑張っていくしか俺には出来そうになかった。
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