最強美人が可愛い過ぎて困る

くるむ

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第一章

意外な援護射撃 2

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御影さんの友達の、鈴木さんと山木さんという強い見方をなぜだか手に入れた俺は、出来るだけ俺のことを知ってもらおうと連日のように御影さんの元へと走っていた。



「ごちそうさまー」

お昼休み。凄い勢いで弁当を完食した俺は、さっさと机の上を片付けて席を立つ。

「……蒼空、もう行っちゃうのか?」
「ああ、ごめん。放課後は自分の部活もあるから剣道部に見学には行けないからさ。時間がある時くらいは、御影さんの顔見に行きたいんだ」

「そっか」
「……蒼空の気持ちは俺もよく分かるけど、あんまり押し過ぎるなよ?」

「――あ、うん」

2人に手を振って教室を出たけど、さっきの苦笑交じりに忠告する陽翔の言葉が俺の胸を突いていた。
同じようにすごくモテて困っている者同士だから、もしかしたら経験から来る俺に対するアドバイスだったのかもしれない。

「…………」

押したり引いたりの駆け引きなんて俺には出来そうにないけど、陽翔の大事な忠告だけは、ちゃんと胆に銘じようと心に誓った。



2年の教室がある廊下を歩いていると、ビシビシと痛い視線が突き刺さってくる。どうやら大声での自己紹介が祟っていて、俺が御影さんに一目ぼれをして纏わりついている要注意人物としてみんなに知れ渡ってしまっているようだった。


「また来たのかよ、お前」
「…………」

うんざりした声に振り返ると、やっぱり俺の全然知らない2年生が立っていた。

う~ん。
こういう時は何て言ったらいいんだろう。きっと御影さんの恋人になりたい俺にとってはライバルなんだろうけど、威嚇するのもなんだか違う気がするし。


「松田君、おいでおいでー」

4組の教室からニョキっと顔を出した山木さんが、俺を呼びながらコイコイと手招きをしている。
もしかしたら、俺がここに来るたびにみんなから些細な威嚇をされていることに気づいていたのかもしれない。山木さんの声に呼応したように、鈴木さんが教室から出て来た。

「お菓子が余ってるんだ。食うだろ?」

そう言いながら、俺を教室の中へと促してくれた。
鈴木さんが顔を出してくれたおかげで、さっきの絡んできた人はどこかにいなくなっていた。

教室に入ると、御影さんの周りには山木さんだけじゃなくて数名のクラスメイトらしき人たちが一緒に居た。

「こんにちは」

いくら好きな人がいるからとはいえ、上級生の教室に入るのはやっぱりあまり居心地の良いものではない。俺はちょっぴり緊張しながら挨拶をした。

「よお、いっつもご苦労さんだなー。御影を好きになるのは構わないけど、変な真似したら許さんぞ?」
「え!? あ、はっはい」

変な真似?
変な真似ってどういう意味でだろう。

御影さんを無理やり押し倒そうとしてボコられた人がいるって話は聞いたことはあるけど、それはあくまでも単なる噂だから本当のことかどうかなんて当人にしか分からない。
もしもそういうことを言っているのだとしたら、もちろん俺にそんなつもりは無い。
恋人になってほしいとは思ってるけど。

チラッと御影さんを窺ってみる。

パチッと目が合った御影さんは相変わらずの無表情で、平常心そのものだ。
その顔は、『お前なんかに興味はない』と言っているみたいでちょっぴり俺をへこませた。
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