最強美人が可愛い過ぎて困る

くるむ

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第一章

意外な援護射撃

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時間が一分一秒でも惜しくて、必死で走って御影さんの教室に着いた。

……あ、いた!
探すまでもなく、御影さんは友達と3人で廊下でおしゃべりをしていた。

やっぱり、どう見ても最強って言葉の似あわない風貌だ。友達としゃべるその表情も、穏やかで静かだ。しかも可憐だし……!

ドキドキしながら御影さんを見ていたら目が合った。
俺と目が合った御影さんは一瞬眉間にしわを寄せたけど、おかげで俺も今の状況を思い出した。

そうだよ、俺は御影さんに俺を知ってもらおうとここに来たんだ。
恥ずかしいだのなんだのと躊躇している暇なんて無い。俺は拳を握り締めて一歩前へと出た。

「み……、御影さん! 俺、1年の松田蒼空って言います! あの、初めまして!」

緊張のあまり、体育会系丸出しの大きな声で自己紹介をしてしまった。
おかげで、他の2年生達の視線を一斉に浴びる事になってしまい冷や汗が出た。


何やってんだ俺、信じらんねー!
御影さんに迷惑かけちゃってるんじゃ……。

恐る恐る顔を上げると、御影さんもそうだけど傍に居る2人も呆気にとられた顔で俺を見ていた。

「あ、あああ、あの、すみません! 大声出しちゃって!」


ぷっ!

……え?

ぷくくくく……っ!

御影さんの傍にいる友達が、可笑しそうに笑いながら御影さんをパシパシ叩いている。

「痛いよ」
「ああ、ごめん。ごめん。……松田君だっけ。何? きみ、御影のこと好きなの?」
「おいっ」
「はい、そうです。だからその……、御影さんに俺のこと知ってもらいたくて!」

俺の気持ちをちゃんと伝えたくてまっすぐ御影さんを見ながら言ったのに、こんな状況は慣れっこなのか御影さんの表情には何の変化も見られなかった。
なんだか試合前に平常心を保ち続ける冷静な人と言った風情だ。

相手にされないだろうことは覚悟していたけど、あまりにも平然とされていてちょっと凹む。
けど、勝手に凹んでいる時間は無い。とにかく気持ちを伝えなければと気合を入れた。


「……実は俺、御影さんのことをちゃんと知ったのは昨日の練習試合を見た時なんです。噂では、その……、聞いたことはあるんですけど」

「強かっただろ、御影」
「はい! すごく強くて感動しました! 迫力が凄くて獰猛で、御影さんスゲーかっこよかったです! 俺、剣道には興味ないはずなのに、気が付いたら手に汗握って前のめりになって見てました!」

……あ。
また興奮して大声を出してしまってた。

頭を掻いてすみませんと呟いて、チラッと御影さんの顔を見ると、さっきまでの冷静な表情とは違いなんだか驚いた表情をしていた。
横にいる友達2人も、さっきまでの少し揶揄うような表情は消えて、少し優しい表情に変わっている。

「松田君、俺、御影の幼馴染で鈴木愁って言うんだ。よろしくな」
「俺は山木光士郎。よろしく」

「え? あ、こちらこそよろしくお願いします!!」

「おい? お前ら、なに自己紹介なんかしてるんだよ」

急に始まった俺らのやり取りには、さすがの御影さんもびっくりしたようだ。
もちろん俺も、びっくりしたけど。

「いいじゃん、別に。俺、松田君気に入ったよ」
「俺も。松田君、御影が嫌がろうがいつでも遊びにおいでね。俺らは歓迎するから」

「あ、はい……。あ、えっと……」

もしも御影さんが迷惑だと思っていたらどうしようと、不安になって御影さんの顔を見た。

「…………」
「あ、あの……」

「俺は、誰とも付き合う気は無い」

「……あ、はい」

やっぱ、そうだよな。
いきなり一目惚れしましたって言われても……。

あー、なんか落ち込んできた。
分かってはいてもやっぱり凹む。

「でも、会いに来る分には良いんだろ?」

鈴木さんが、なんだか意味深に言葉を強調しながら意味深な表情で御影さんに言った。

そんな鈴木さんの表情に、御影さんの表情が揺らぐ。
その揺らいだ表情が何を意味するのかは分からない。だけど御影さんは、すぐにふっと息を吐いて顔を上げた。

「……別に来るなとまでは言ってない」


居心地悪そうに俺に告げる御影さんに、俺の心臓の奥がきゅうーーーーんと甘く疼いた。
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