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エピローグ

前編

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夏休み後半、今俺の部屋のベッドには、御影さんがちょこんと座っている。
夕飯も風呂も何もかも済ませて、初めてのデートの時に俺が買った、あのピンクのTシャツを着て。

「インハイ、お疲れ様でした」
「……いや、応援に来てくれたのに勝てなくてすまなかったな」

「何言ってるんですか! 御影さんの真剣な試合に、俺がどんだけ興奮したと思ってるんです? コテを取られた後のメンに飛び込む迫力は、御影さんの剣道そのものでしたよ。……結果は負けでしたけど、俺はあの試合はほぼ互角だったと思ってます」 

「城頼高の瀬尾の粘りはすごかったからな……。俺ももっと集中力や精神力を高めなきゃいけないな」
「大丈夫です。御影さんなら、これからもっともっと強くなりますよ」

「ああ。頑張らなきゃな……」

前向きに頷いてくれてホッとした。
御影さんにはいつも微笑んでいて欲しいから。


「それにしても、コレ……やっぱり可愛すぎやしないか?」

ああ。
さっきからもぞもぞとシャツを心許なさそうに弄っていたのは、居心地が悪かったからなのか。

「そんなことないですよ。ヤバいです」

「……ヤバイってなんだ」

あ、剥れた。

不服そうに唇を尖らせているその顔もたまらん!

……ああもう俺、御影さんに対しては完璧オヤジだ。


「愛らしくて愛らしくて……、どうにかしちゃいたいくらいって意味ですよ」
「……どうにか?」

一瞬意味を捉えきれなかったんだろう。
キョトンとした顔をしている。

だけど俺の困ったようなスケベ笑いを見て察してくれたんだろう。
クスリと笑って俺の傍にくっ付いてきた。


コトンと俺の肩口に、頭を預ける。


……え、ええっと。
意味わかって無かったのかな……。
それとも了承の意味……?


どっちが正解なのか分からなくて、心の中でわたわたしながら固まっていると、御影さんが徐に顔を上げた。

「なんだ、何もしないのか?」

ハウッ!
まさかの了承の方!

「……い、いいんですか? 俺、ちょっと……もしかしたら押し倒しちゃうかもしれませんけど……」

ドギマギしながらそう言うと、御影さんの目がまるで妖艶な猫のように細くなる。

「――いいんじゃないか? ……恋人なんだし」


その一言は俺の理性を完璧に崩壊させた。

御影さんを抱き寄せて、何度も何度も口づけをした後――、



俺はせっかくのピンクのシャツをはぎ取って、白くつややかな肌に舌を這わせた。
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