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第五章

聞いて欲しい、聞きたいこと

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「……ちょっと、ホッとしたかな」
「え……?」

静かに目を伏せて、微笑む姿が愛らしい。
こんな状況なのに、俺の心はトクンと喜びの音を放っていた。


「……!?」

突然目の前に拳がやってきてびっくりして固まった。

その拳は俺の顔面直前でピタリと止まって、額にコツンと可愛らしくくっ付いた。


「……み、影……さん?」


くっ付けた拳を離して、俺の背中に腕を回す。
そして俺の体をふわりと抱きしめた。


「勝手に空回りなんかしてるんじゃない。……俺を理解してくれる優しい蒼空は好きだけど、無理をするお前は嫌いだ」
「……御影さん」

「蒼空は十分俺なんかよりずっとしっかりしている。それ以上背伸びして、どうするつもりだ? たまには俺に甘えてもいいんじゃないのか?」

「……うっ、……っ、だっ……て、俺……影さんの……こ……、きで……。だから……」
「――分かった。……だったらちゃんと俺のことも信じろ。俺は、蒼空のことだけが好きなんだ」

俺の顔を両手で挟み上向かせて、目をしっかり合わせての御影さんの告白。


もう、恥ずかしいくらいに溢れだす水分を、俺はやっぱり止めることは出来なかった。



15分しか無い道のりだから、途中寄り道をして公園のベンチに座った。

「で?」
「……え?」

俺の顔を覗き込みながら聞かれてキョトンとした。
俺のその表情を見て、御影さんの眉間に軽くしわが寄った。

「えと、あの……、なにが……」

本当に訳が分からなくて困惑していたら、御影さんは呆れた表情になった。

「――だから、お前は俺に聞きたいことは無いのかって」
「……あ」

ああ、そうか。
俺が気になっていた、御影さんが田上先輩と何を話したのかってことを聞けと言ってくれているのか。

「はい。……あの」

御影さんの気持ちを聞けたからもういいかって思っていたんだけど、たぶん違うんだな。ちゃんと話したいって、きっと御影さんは思っていてくれてたんだろう。
わだかまりを残さないためにも、俺は遠慮なく聞くことにした。
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