最強美人が可愛い過ぎて困る

くるむ

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第四章

勉強が目的ですからね

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館内は結構な人だった。
窓際のあの席も、既に人が座っている。

「今日はいい席が空いてませんね……」
「そうだな、二人分の席が空いているところは……」

御影さんとキョロキョロと館内を見渡していると、中央に近い大きなテーブルにいる人が、御影さんに向かって手を振っていた。

……さっきの剣道部ご一行様だよ……。

御影さんもその合図に気がついて、ぺこりと頭を下げた。そして俺の腕を取って、そのテーブルに近づいて行く。

「こんにちは。ここの二席、空いてますか?」

……。
やっぱ、そうなるか。

「空いてるよ、どうぞ」
「ありがとうございます。蒼空、ここ良いって」
「あ……、はい。失礼します……」

まあね、他も同様で相席させてもらえなきゃ座れない状態だもんな。だったら合図してくれたところに座らなきゃ、御影さんとしても居心地悪いだろうし……。

8人が腰かけられるところに5人が既にいるので、空いてる席は3席だ。
御影さんはちょっと悩んだ後で、2席並んで空いている席に腰かけた。そして俺をその隣に座るように促してくれた。

御影さんの隣の一番端っこの席に着いた。
おかげで真正面には誰もいないので、あまり緊張しないで済む。

だけどこの状況では、御影さんとの楽しいコソコソ話も出来ないよな……。
ふうっ。

ため息交じりに教科書を捲っていると、斜め前から強烈な視線を感じる。ちらりと顔を上げると田上先輩に挑戦的にニヤリと笑われた。

……!!
怒!

陽翔じゃないけど、変な怒りに火が点いた。
絶対負けない!

だけど御影さんに迷惑を掛けたくは無いので必死に平静を取り繕って教科書を開く。睨みつけるように問題を見ていたら、チョンと横からほっぺを突かれた。

……え?

「顔」
「……、え?」
「顔が怖いぞ。分からないところでもあるのか?」

間近で綺麗な瞳に見つめられてじわじわと頬が熱くなった。

「あ、いいえっ。なんでもないです。大丈夫です」
「そうか? じゃあ分からないことがあったら何でも聞けよ」
「はい、その時はお願いします」

俺の返事に安心したのか御影さんも軽く頷いて、今度は自分の教科書に目を移した。


視界の隅に映る田上先輩の何とも言えない苦々しい表情に、俺は心の中でほくそ笑んだ。


だけど悲しいことにその後の御影さんとの図書館での勉強会は、今日とほぼ同じような状況で、とてもじゃないけど2人っきりという雰囲気は初日以来味わうことは出来なかった。
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