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第四章
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なーんか、敵地に乗り込む気分だな。
別に剣道部のみんながみんな、田上先輩のような人だとは思わないけど、御影さんの近くにいる人ならそのほとんどが、この人の魅力に惹かれずにはいられないと思うんだよな……。
複雑な思いでチラッと御影さんに視線を向けるとパチッと目が合った。
目が合って、……御影さんは静かに微笑んでくれた。
……あー、なんか。
今、体の中のやる気ゲージがぐんぐん上昇してるぞー。
そうだよ、部の先輩たちがなんだって言うんだ!
御影さんが選んでくれたのは俺なんだから、何も臆することなんて無いんだからな!
ウシッ!
「……?」
ちょっぴり視線を感じて横を向くと、1人気合を入れて表情を目まぐるしく変えているだろう俺を、御影さんが不思議そうな顔で見ていた。慌てて取り繕ってニコリと微笑むと、御影さんは小首を傾げた。
か……、かわいいぃぃぃっ!!
でも、いちいち悶絶する俺もウザい!
「蒼空……?」
どうしたのかと不思議そうな表情で俺を見つめるその顔もヤバイ。
人のことは言えない。俺も御影さんに関しては、ウザさまっしぐらだ。
「……っあ、な、何でもないです! えっと、その……。テストが終わってもしばらくは部活が忙しくて御影さんとゆっくりしてられないんだろうなって、ちょっと寂しいなって思ってたんですっ」
明らかに取り繕った言葉だ。
御影さんも、『?』とは思ったようだけど結局は流してくれた。
高校総体が近づいていることが、きっと御影さんの頭の中にあったからだろう。
「……ああ、そうだな。俺らは試験が終わったら早朝練習が入って、放課後は30分部活が延長になるんだけど蒼空のところはどうなんだ?」
「早朝練習は無いですけど、放課後の部活時間の延長は一緒です。御影さん、試合には出ますよね?」
「ああ、蒼空は?」
「俺はまだまだなんで、応援組ですよ。……あー、でも、御影さんの試合見に行きたかったな―」
「日程が一緒で場所が違うからな……。仕方がないさ」
「はい……」
あの練習試合以来、俺は御影さんの剣道を見たことが無い。
普段の可愛い御影さんとはまた違う、凛々しくかっこいい御影さんをもう一度見たい……、あ!
「御影さん!」
「うわっ、びっくりした。なんだ?」
「あ、すみません。あの、早朝練習って……、こっそり見させてもらってもいいですか?」
「……え? 早朝練習を?」
「はい。俺も普段は部活があるから、御影さんが剣道しているところを見たくても、そうそう機会はないです。でも今回は俺らには早朝練習は無いですから、御影さんの剣道を見る絶好の機会なんです!」
鼻息荒く訴える俺に、御影さんが目を見開いた。
「……そんなに俺の剣道が見たいのか?」
「もちろんですよ! あの迫力、すっごくかっこよかったです!」
「……そう、か」
驚いた表情のその顔が、だんだんうれしそうに綻んでいく。
「いいよ。黙って見てるだけなら、誰も文句は言わないから」
「やった! おかげで楽しみが増えました。御影さん、頑張って勉強しましょうね!」
「……そうだな」
俺の勝手な激励に、御影さんははにかんだように笑う。
そんな表情を、こんな間近で当たり前のように見れる機会が増えていることが、本当にうれしい。
俺はそんな御影さんに勝手に充電させてもらって、嬉々として敵陣(?)の待つ図書館に入ったのだ。
別に剣道部のみんながみんな、田上先輩のような人だとは思わないけど、御影さんの近くにいる人ならそのほとんどが、この人の魅力に惹かれずにはいられないと思うんだよな……。
複雑な思いでチラッと御影さんに視線を向けるとパチッと目が合った。
目が合って、……御影さんは静かに微笑んでくれた。
……あー、なんか。
今、体の中のやる気ゲージがぐんぐん上昇してるぞー。
そうだよ、部の先輩たちがなんだって言うんだ!
御影さんが選んでくれたのは俺なんだから、何も臆することなんて無いんだからな!
ウシッ!
「……?」
ちょっぴり視線を感じて横を向くと、1人気合を入れて表情を目まぐるしく変えているだろう俺を、御影さんが不思議そうな顔で見ていた。慌てて取り繕ってニコリと微笑むと、御影さんは小首を傾げた。
か……、かわいいぃぃぃっ!!
でも、いちいち悶絶する俺もウザい!
「蒼空……?」
どうしたのかと不思議そうな表情で俺を見つめるその顔もヤバイ。
人のことは言えない。俺も御影さんに関しては、ウザさまっしぐらだ。
「……っあ、な、何でもないです! えっと、その……。テストが終わってもしばらくは部活が忙しくて御影さんとゆっくりしてられないんだろうなって、ちょっと寂しいなって思ってたんですっ」
明らかに取り繕った言葉だ。
御影さんも、『?』とは思ったようだけど結局は流してくれた。
高校総体が近づいていることが、きっと御影さんの頭の中にあったからだろう。
「……ああ、そうだな。俺らは試験が終わったら早朝練習が入って、放課後は30分部活が延長になるんだけど蒼空のところはどうなんだ?」
「早朝練習は無いですけど、放課後の部活時間の延長は一緒です。御影さん、試合には出ますよね?」
「ああ、蒼空は?」
「俺はまだまだなんで、応援組ですよ。……あー、でも、御影さんの試合見に行きたかったな―」
「日程が一緒で場所が違うからな……。仕方がないさ」
「はい……」
あの練習試合以来、俺は御影さんの剣道を見たことが無い。
普段の可愛い御影さんとはまた違う、凛々しくかっこいい御影さんをもう一度見たい……、あ!
「御影さん!」
「うわっ、びっくりした。なんだ?」
「あ、すみません。あの、早朝練習って……、こっそり見させてもらってもいいですか?」
「……え? 早朝練習を?」
「はい。俺も普段は部活があるから、御影さんが剣道しているところを見たくても、そうそう機会はないです。でも今回は俺らには早朝練習は無いですから、御影さんの剣道を見る絶好の機会なんです!」
鼻息荒く訴える俺に、御影さんが目を見開いた。
「……そんなに俺の剣道が見たいのか?」
「もちろんですよ! あの迫力、すっごくかっこよかったです!」
「……そう、か」
驚いた表情のその顔が、だんだんうれしそうに綻んでいく。
「いいよ。黙って見てるだけなら、誰も文句は言わないから」
「やった! おかげで楽しみが増えました。御影さん、頑張って勉強しましょうね!」
「……そうだな」
俺の勝手な激励に、御影さんははにかんだように笑う。
そんな表情を、こんな間近で当たり前のように見れる機会が増えていることが、本当にうれしい。
俺はそんな御影さんに勝手に充電させてもらって、嬉々として敵陣(?)の待つ図書館に入ったのだ。
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