41 / 57
第四章
田上先輩の来襲 3
しおりを挟む
「てめー! 蒼空になにしやがる!! 蒼空は常識人なんだぞ! 図書館でそんなこと、蒼空が仕掛けるわけないだろ!」
「そうだよ、暴力反対!!」
「……お、お前ら……」
突然の声の乱入者には、田上先輩もそうだけど俺もびっくりした。
多分田上先輩に連れていかれる俺を心配してこっそり後を付けていたんだろう。階段の上の方からこちらを覗くように陽翔と由羽人が立っていた。
それにはさすがの田上先輩も気勢をそがれたのか、ふーっと息を吐いて握りしめていた拳を下した。
「俺は言いがかりなんか付けてない。……なんせしっかりこの目で見ちまったんだからな」
チラリと視線を俺によこす。その目は心底嫌な物を見るような目つきだ。
「ホントなの? 蒼空」
びっくりする由羽人の隣から陽翔が俺に駆け寄って来た。隣にいる田上先輩を思いっきり無視して俺の肩をガシッと掴む。
「やったな、蒼空! おめでとう!」
「あ、はは……。いや、まあ」
「すごーい、蒼空……。あのクールな先輩と……、うわぁ」
この場の雰囲気をものともせずに感慨に浸る俺の友人たち。
由羽人なんて何を想像しているのか頬を真っ赤に染めている。
「……おい」
「さすが蒼空だよな。蒼空の真っ直ぐなところとか穏やかなところとか、そういうところに御影さんも絆されてくれたんだろうな」
「うん、きっとそうだよ! 俺たちもかなり蒼空にはお世話になってるし、御影さんもちゃんと蒼空のこと見てくれてるんだね」
「おい!!」
「うわっ! びっくりした! なんだよ耳元で。煩いだろ」
田上先輩を無視した一連のやり取りに、堪忍袋の緒が切れたようだ。怒りでどすの利いた声で俺らを呼ぶ先輩に、一番傍にいた陽翔が本気でびっくりしたようだ。上級生だからと言って態度を改めるだなんて考えもしない陽翔は、これまた心底鬱陶しそうに邪険に返した。
「それはこっちのセリフだ! なんだお前らの態度は。人が話しているところに乱入してきやがって!」
「それはそっちが蒼空にいちゃもん付けてるからだろう! 蒼空はなあ、ちゃんとTPOを考えられる奴なんだよ! いくらムラッと来てもな、自分を抑えることが出来る奴なんだよ!」
「……陽翔」
困惑したような由羽人の声。
俺も隣で困惑していた。
……ムラッとってお前……。
「……じゃあなにか? お前は御影がしてくれって頼んだとでも言いたいのか?」
あ、拙い。
変な方向に話が流れそうだ。
いくら御影さんでも、あの時の細かい事情を同じ部の先輩にまで知られたくは無いだろう。
「あの、田上先輩、……とにかく、田上先輩が考えているような状況とは違うんです。……だけど、これからはもっとちゃんと考えるようにしますから。御影さんにはいちいち聞かないであげてください。お願いします」
「蒼空……」
ぺこりと90度に頭を下げた俺に、陽翔たちはびっくりしたようだった。
だけど俺が御影さんのことを考えての行動だと理解してくれたようで、一緒になって2人とも俺と同じように頭を下げてくれた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙の後、田上先輩が渋々と言ったように口を開いた。
「……分かったよ。お前がちゃんと考えるんなら今回のことは許してやる。……俺も御影を困らせる気は無いからな」
「田上先輩」
「……じゃあな」
「……噂通り、あの人って御影さんに超過保護なんだね」
遠くなりつつある田上先輩の後ろ姿を見ながら、由羽人が小声でつぶやいた。
「負けるんじゃねーぞ、蒼空。俺あいつ嫌い!」
「……うん。頑張るよ」
「うわ、授業もう始まるよ! 急がなきゃ」
由羽人の言葉に我に返った俺たちは、階段を駆け上がって教室へと飛び込んだ。
「そうだよ、暴力反対!!」
「……お、お前ら……」
突然の声の乱入者には、田上先輩もそうだけど俺もびっくりした。
多分田上先輩に連れていかれる俺を心配してこっそり後を付けていたんだろう。階段の上の方からこちらを覗くように陽翔と由羽人が立っていた。
それにはさすがの田上先輩も気勢をそがれたのか、ふーっと息を吐いて握りしめていた拳を下した。
「俺は言いがかりなんか付けてない。……なんせしっかりこの目で見ちまったんだからな」
チラリと視線を俺によこす。その目は心底嫌な物を見るような目つきだ。
「ホントなの? 蒼空」
びっくりする由羽人の隣から陽翔が俺に駆け寄って来た。隣にいる田上先輩を思いっきり無視して俺の肩をガシッと掴む。
「やったな、蒼空! おめでとう!」
「あ、はは……。いや、まあ」
「すごーい、蒼空……。あのクールな先輩と……、うわぁ」
この場の雰囲気をものともせずに感慨に浸る俺の友人たち。
由羽人なんて何を想像しているのか頬を真っ赤に染めている。
「……おい」
「さすが蒼空だよな。蒼空の真っ直ぐなところとか穏やかなところとか、そういうところに御影さんも絆されてくれたんだろうな」
「うん、きっとそうだよ! 俺たちもかなり蒼空にはお世話になってるし、御影さんもちゃんと蒼空のこと見てくれてるんだね」
「おい!!」
「うわっ! びっくりした! なんだよ耳元で。煩いだろ」
田上先輩を無視した一連のやり取りに、堪忍袋の緒が切れたようだ。怒りでどすの利いた声で俺らを呼ぶ先輩に、一番傍にいた陽翔が本気でびっくりしたようだ。上級生だからと言って態度を改めるだなんて考えもしない陽翔は、これまた心底鬱陶しそうに邪険に返した。
「それはこっちのセリフだ! なんだお前らの態度は。人が話しているところに乱入してきやがって!」
「それはそっちが蒼空にいちゃもん付けてるからだろう! 蒼空はなあ、ちゃんとTPOを考えられる奴なんだよ! いくらムラッと来てもな、自分を抑えることが出来る奴なんだよ!」
「……陽翔」
困惑したような由羽人の声。
俺も隣で困惑していた。
……ムラッとってお前……。
「……じゃあなにか? お前は御影がしてくれって頼んだとでも言いたいのか?」
あ、拙い。
変な方向に話が流れそうだ。
いくら御影さんでも、あの時の細かい事情を同じ部の先輩にまで知られたくは無いだろう。
「あの、田上先輩、……とにかく、田上先輩が考えているような状況とは違うんです。……だけど、これからはもっとちゃんと考えるようにしますから。御影さんにはいちいち聞かないであげてください。お願いします」
「蒼空……」
ぺこりと90度に頭を下げた俺に、陽翔たちはびっくりしたようだった。
だけど俺が御影さんのことを考えての行動だと理解してくれたようで、一緒になって2人とも俺と同じように頭を下げてくれた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙の後、田上先輩が渋々と言ったように口を開いた。
「……分かったよ。お前がちゃんと考えるんなら今回のことは許してやる。……俺も御影を困らせる気は無いからな」
「田上先輩」
「……じゃあな」
「……噂通り、あの人って御影さんに超過保護なんだね」
遠くなりつつある田上先輩の後ろ姿を見ながら、由羽人が小声でつぶやいた。
「負けるんじゃねーぞ、蒼空。俺あいつ嫌い!」
「……うん。頑張るよ」
「うわ、授業もう始まるよ! 急がなきゃ」
由羽人の言葉に我に返った俺たちは、階段を駆け上がって教室へと飛び込んだ。
2
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる