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第四章
田上先輩の来襲 3
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「てめー! 蒼空になにしやがる!! 蒼空は常識人なんだぞ! 図書館でそんなこと、蒼空が仕掛けるわけないだろ!」
「そうだよ、暴力反対!!」
「……お、お前ら……」
突然の声の乱入者には、田上先輩もそうだけど俺もびっくりした。
多分田上先輩に連れていかれる俺を心配してこっそり後を付けていたんだろう。階段の上の方からこちらを覗くように陽翔と由羽人が立っていた。
それにはさすがの田上先輩も気勢をそがれたのか、ふーっと息を吐いて握りしめていた拳を下した。
「俺は言いがかりなんか付けてない。……なんせしっかりこの目で見ちまったんだからな」
チラリと視線を俺によこす。その目は心底嫌な物を見るような目つきだ。
「ホントなの? 蒼空」
びっくりする由羽人の隣から陽翔が俺に駆け寄って来た。隣にいる田上先輩を思いっきり無視して俺の肩をガシッと掴む。
「やったな、蒼空! おめでとう!」
「あ、はは……。いや、まあ」
「すごーい、蒼空……。あのクールな先輩と……、うわぁ」
この場の雰囲気をものともせずに感慨に浸る俺の友人たち。
由羽人なんて何を想像しているのか頬を真っ赤に染めている。
「……おい」
「さすが蒼空だよな。蒼空の真っ直ぐなところとか穏やかなところとか、そういうところに御影さんも絆されてくれたんだろうな」
「うん、きっとそうだよ! 俺たちもかなり蒼空にはお世話になってるし、御影さんもちゃんと蒼空のこと見てくれてるんだね」
「おい!!」
「うわっ! びっくりした! なんだよ耳元で。煩いだろ」
田上先輩を無視した一連のやり取りに、堪忍袋の緒が切れたようだ。怒りでどすの利いた声で俺らを呼ぶ先輩に、一番傍にいた陽翔が本気でびっくりしたようだ。上級生だからと言って態度を改めるだなんて考えもしない陽翔は、これまた心底鬱陶しそうに邪険に返した。
「それはこっちのセリフだ! なんだお前らの態度は。人が話しているところに乱入してきやがって!」
「それはそっちが蒼空にいちゃもん付けてるからだろう! 蒼空はなあ、ちゃんとTPOを考えられる奴なんだよ! いくらムラッと来てもな、自分を抑えることが出来る奴なんだよ!」
「……陽翔」
困惑したような由羽人の声。
俺も隣で困惑していた。
……ムラッとってお前……。
「……じゃあなにか? お前は御影がしてくれって頼んだとでも言いたいのか?」
あ、拙い。
変な方向に話が流れそうだ。
いくら御影さんでも、あの時の細かい事情を同じ部の先輩にまで知られたくは無いだろう。
「あの、田上先輩、……とにかく、田上先輩が考えているような状況とは違うんです。……だけど、これからはもっとちゃんと考えるようにしますから。御影さんにはいちいち聞かないであげてください。お願いします」
「蒼空……」
ぺこりと90度に頭を下げた俺に、陽翔たちはびっくりしたようだった。
だけど俺が御影さんのことを考えての行動だと理解してくれたようで、一緒になって2人とも俺と同じように頭を下げてくれた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙の後、田上先輩が渋々と言ったように口を開いた。
「……分かったよ。お前がちゃんと考えるんなら今回のことは許してやる。……俺も御影を困らせる気は無いからな」
「田上先輩」
「……じゃあな」
「……噂通り、あの人って御影さんに超過保護なんだね」
遠くなりつつある田上先輩の後ろ姿を見ながら、由羽人が小声でつぶやいた。
「負けるんじゃねーぞ、蒼空。俺あいつ嫌い!」
「……うん。頑張るよ」
「うわ、授業もう始まるよ! 急がなきゃ」
由羽人の言葉に我に返った俺たちは、階段を駆け上がって教室へと飛び込んだ。
「そうだよ、暴力反対!!」
「……お、お前ら……」
突然の声の乱入者には、田上先輩もそうだけど俺もびっくりした。
多分田上先輩に連れていかれる俺を心配してこっそり後を付けていたんだろう。階段の上の方からこちらを覗くように陽翔と由羽人が立っていた。
それにはさすがの田上先輩も気勢をそがれたのか、ふーっと息を吐いて握りしめていた拳を下した。
「俺は言いがかりなんか付けてない。……なんせしっかりこの目で見ちまったんだからな」
チラリと視線を俺によこす。その目は心底嫌な物を見るような目つきだ。
「ホントなの? 蒼空」
びっくりする由羽人の隣から陽翔が俺に駆け寄って来た。隣にいる田上先輩を思いっきり無視して俺の肩をガシッと掴む。
「やったな、蒼空! おめでとう!」
「あ、はは……。いや、まあ」
「すごーい、蒼空……。あのクールな先輩と……、うわぁ」
この場の雰囲気をものともせずに感慨に浸る俺の友人たち。
由羽人なんて何を想像しているのか頬を真っ赤に染めている。
「……おい」
「さすが蒼空だよな。蒼空の真っ直ぐなところとか穏やかなところとか、そういうところに御影さんも絆されてくれたんだろうな」
「うん、きっとそうだよ! 俺たちもかなり蒼空にはお世話になってるし、御影さんもちゃんと蒼空のこと見てくれてるんだね」
「おい!!」
「うわっ! びっくりした! なんだよ耳元で。煩いだろ」
田上先輩を無視した一連のやり取りに、堪忍袋の緒が切れたようだ。怒りでどすの利いた声で俺らを呼ぶ先輩に、一番傍にいた陽翔が本気でびっくりしたようだ。上級生だからと言って態度を改めるだなんて考えもしない陽翔は、これまた心底鬱陶しそうに邪険に返した。
「それはこっちのセリフだ! なんだお前らの態度は。人が話しているところに乱入してきやがって!」
「それはそっちが蒼空にいちゃもん付けてるからだろう! 蒼空はなあ、ちゃんとTPOを考えられる奴なんだよ! いくらムラッと来てもな、自分を抑えることが出来る奴なんだよ!」
「……陽翔」
困惑したような由羽人の声。
俺も隣で困惑していた。
……ムラッとってお前……。
「……じゃあなにか? お前は御影がしてくれって頼んだとでも言いたいのか?」
あ、拙い。
変な方向に話が流れそうだ。
いくら御影さんでも、あの時の細かい事情を同じ部の先輩にまで知られたくは無いだろう。
「あの、田上先輩、……とにかく、田上先輩が考えているような状況とは違うんです。……だけど、これからはもっとちゃんと考えるようにしますから。御影さんにはいちいち聞かないであげてください。お願いします」
「蒼空……」
ぺこりと90度に頭を下げた俺に、陽翔たちはびっくりしたようだった。
だけど俺が御影さんのことを考えての行動だと理解してくれたようで、一緒になって2人とも俺と同じように頭を下げてくれた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙の後、田上先輩が渋々と言ったように口を開いた。
「……分かったよ。お前がちゃんと考えるんなら今回のことは許してやる。……俺も御影を困らせる気は無いからな」
「田上先輩」
「……じゃあな」
「……噂通り、あの人って御影さんに超過保護なんだね」
遠くなりつつある田上先輩の後ろ姿を見ながら、由羽人が小声でつぶやいた。
「負けるんじゃねーぞ、蒼空。俺あいつ嫌い!」
「……うん。頑張るよ」
「うわ、授業もう始まるよ! 急がなきゃ」
由羽人の言葉に我に返った俺たちは、階段を駆け上がって教室へと飛び込んだ。
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