最強美人が可愛い過ぎて困る

くるむ

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第三章

強いことは知ってます  

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「あー、美味しかった。やっぱ好きな人と一緒のご飯って、よりおいしく感じられるものなんでしょうね」
「……そうかもな」

普段通りの静かな表情だけど、それでも穏やかな目元が御影さんの気持ちをちゃんと俺に伝えてくれている。
喜怒哀楽のはっきりした人ではないけれど、俺の中ではそこも御影さんの魅力の一つとなっていて、貴重で大好きな表情の一つだ。

「さてと、そろそろ帰らなきゃですよね。俺、送っていきます」
「は? なに言ってんだ。逆だろ」
「……へ?」

「俺の方が年上だし強いんだ。だから俺の方がお前を送っていく」
「…………」

凄く真面目な表情で言い切る御影さんに、ああ……と何となく思い当たる。
たぶん御影さんは、自分が守られる立場だと思ってもいないし思われたくも無いんだろう。

だけど……、俺としては過去の御影さんが被って来た被害が実在のことだと分かった以上、ほんのわずかな可能性の芽も総て潰してしまいたい。

……う~ん、ここはどう言えば俺の気持ちを分かってもらえるだろう。

「あのですねえ、御影さん」
「なんだ?」
「俺は見ての通りの顔なので、痴漢なんてあったことはありません」
「…………」
「御影さんは何度か被害に合ってるんじゃないですか?」
「……被害になんて合ってない、みんな未遂だ。触られる前に察知して防いでる」

ああ、うん。分かってますよ。御影さんが強いことは十分に。

それに、今日だけ御影さんを送ったところで意味の無いことも分かってる。実際学校の時は、たとえ一緒に帰っても家まで送っていくことなんて出来そうにないし。

「……デートの時くらいは最後まで嫌な気持ちになってほしくないなって思うんです。そりゃ、毎日痴漢に遭うわけじゃないだろうけど。それに……、出来るだけ長く一緒にいたいから」

「蒼空……」
「だめ……、ですか?」

頷いて欲しいっていう思いから、ジッと御影さんを見つめる。
ここが往来なんかじゃなかったら、その手をギュッと両手で握りしめて訴えたいくらいだ。

「御影さん?」
「……お前、ずるいっ」

「? へ?」

「俺だって長くお前と一緒にいたいし……。上手に甘やかそうとしやがって」
「そりゃ……、大好きな人のことですから。甘えてくれますか?」

「…………」
「御影さん?」

しばらく唇を尖らせて下を向いていた御影さんは、俺の再度の呼びかけにちょっぴり頬を膨らませた。
そして拗ねたようにそっぽを向いて、ボソボソと呟いた。

「……お前になら許してやる」

「~~~~~~~~!!!!」


こ、この人は……っ!
やっぱり俺をキュン死させる気だ……!

無自覚にもほどがある御影さんの可愛さに、俺はさらに御影さんに溺れていくのを自覚していた。
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