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第三章
愛らしいんですよ
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ホクホクしながら店を出たところで、御影さんが俺の持っているショップの袋を覗き込んだ。
「何買ったんだ?」
げっ!
気付かれてないと思ってたのに……!
「え……。あー、いやー」
視線を彷徨わせモゴモゴとはっきりしない俺に、御影さんの眉間にしわが寄った。
「……俺には言えない内緒の買い物か」
「や、や、や、違いますよ! そうじゃなくてですねっ」
うわ~、参った。これは誤魔化せそうにないぞ。
俺の恥ずかしいちっちゃな野望がバレちまうだろー!
疑念のこもったきつい視線を俺によこし続ける御影さんに冷や汗が出る。
「…………」
「…………」
ううううう……、降参です。
「これです」
御影さんの前に袋を差し出して、テープで閉じた隙間からさっきのTシャツを見せる。
見覚えのあるピンク色に、御影さんが不思議そうに俺の顔を見た。
「……呆れないでくださいよ? 今すぐってわけじゃないですからね!」
最初にとりあえず念を入れておく。衝撃を少しでも和らげようと言う俺の魂胆だ。
「? 何がだ?」
「これを買ったのは、御影さんに着てもらいたかったからです」
「……え?」
きっと御影さんの中では想像もしていなかった答だったのだろう。キョトンとして目をぱちくりさせている。
「これ着た御影さんすげー可愛くて、普段よりもずっとずっと愛らしさが倍増で。他の奴らに見せるのは嫌だけど、俺と2人きりの所では着てもらいたいとか思っちゃって……。だからですね……、その、いつか俺んちにお泊りしてもらって、その時の着替えに使ってもらえたらいいなーって……」
だんだん語尾を小さくさせながら言う俺に、目を真ん丸にして驚いた顔で俺を見つめた。
「俺用に……?」
「はい」
「…………」
「あ、ははっ。呆れてますよね、分かってます。どこかのおっさんみたいですみません」
「……呆れてはいないけど」
「え! ホントですか? じゃあ、じゃあ是非今度俺んちに泊りに来てください!」
「……それはその内な。だけど愛らしいって……。お前昨日もそんなようなこと言ってたけど……」
ああ、そうか。俺の愛らしいって言葉に戸惑ってるんだ。
本当は強いのに、見た目の愛らしさから強い御影さんを否定したがる人たちが多かったから、それが却って御影さんを意固地にさせているのかもしれないけど……。
「御影さんは見た目も仕草も愛らしいです。可愛いし……。でも、誤解しないでくださいよ。俺は愛らしい見た目に反した、すごく強くてかっこいい御影さんが好きなんです。両方セットで好きなんですからね!」
「……そういえば、剣道の試合中の獰猛な俺に興奮したって言ってたよな?」
「はい」
「それなのに、……こんな見た目で、普段の……、そう言う仕草の俺が好きなのか?」
「はい! ギャップに萌えます! ……てか、ドキドキします」
「…………」
「だって、どっちも同じ御影さんでしょう? 俺は、ありのままの……全部ひっくるめたあなたが好きなんだけどな……」
「…………」
総てしっかりと御影さんの目を見ながら話した。
話を聞くうちにじわじわと御影さんの頬が赤くなっていたから、きっと俺の思いは届いたはずだ。
ホッとして笑いかけると、御影さんも照れたように笑い返してくれた。
「何買ったんだ?」
げっ!
気付かれてないと思ってたのに……!
「え……。あー、いやー」
視線を彷徨わせモゴモゴとはっきりしない俺に、御影さんの眉間にしわが寄った。
「……俺には言えない内緒の買い物か」
「や、や、や、違いますよ! そうじゃなくてですねっ」
うわ~、参った。これは誤魔化せそうにないぞ。
俺の恥ずかしいちっちゃな野望がバレちまうだろー!
疑念のこもったきつい視線を俺によこし続ける御影さんに冷や汗が出る。
「…………」
「…………」
ううううう……、降参です。
「これです」
御影さんの前に袋を差し出して、テープで閉じた隙間からさっきのTシャツを見せる。
見覚えのあるピンク色に、御影さんが不思議そうに俺の顔を見た。
「……呆れないでくださいよ? 今すぐってわけじゃないですからね!」
最初にとりあえず念を入れておく。衝撃を少しでも和らげようと言う俺の魂胆だ。
「? 何がだ?」
「これを買ったのは、御影さんに着てもらいたかったからです」
「……え?」
きっと御影さんの中では想像もしていなかった答だったのだろう。キョトンとして目をぱちくりさせている。
「これ着た御影さんすげー可愛くて、普段よりもずっとずっと愛らしさが倍増で。他の奴らに見せるのは嫌だけど、俺と2人きりの所では着てもらいたいとか思っちゃって……。だからですね……、その、いつか俺んちにお泊りしてもらって、その時の着替えに使ってもらえたらいいなーって……」
だんだん語尾を小さくさせながら言う俺に、目を真ん丸にして驚いた顔で俺を見つめた。
「俺用に……?」
「はい」
「…………」
「あ、ははっ。呆れてますよね、分かってます。どこかのおっさんみたいですみません」
「……呆れてはいないけど」
「え! ホントですか? じゃあ、じゃあ是非今度俺んちに泊りに来てください!」
「……それはその内な。だけど愛らしいって……。お前昨日もそんなようなこと言ってたけど……」
ああ、そうか。俺の愛らしいって言葉に戸惑ってるんだ。
本当は強いのに、見た目の愛らしさから強い御影さんを否定したがる人たちが多かったから、それが却って御影さんを意固地にさせているのかもしれないけど……。
「御影さんは見た目も仕草も愛らしいです。可愛いし……。でも、誤解しないでくださいよ。俺は愛らしい見た目に反した、すごく強くてかっこいい御影さんが好きなんです。両方セットで好きなんですからね!」
「……そういえば、剣道の試合中の獰猛な俺に興奮したって言ってたよな?」
「はい」
「それなのに、……こんな見た目で、普段の……、そう言う仕草の俺が好きなのか?」
「はい! ギャップに萌えます! ……てか、ドキドキします」
「…………」
「だって、どっちも同じ御影さんでしょう? 俺は、ありのままの……全部ひっくるめたあなたが好きなんだけどな……」
「…………」
総てしっかりと御影さんの目を見ながら話した。
話を聞くうちにじわじわと御影さんの頬が赤くなっていたから、きっと俺の思いは届いたはずだ。
ホッとして笑いかけると、御影さんも照れたように笑い返してくれた。
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