最強美人が可愛い過ぎて困る

くるむ

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第二章

不機嫌な御影さん 

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「ごちそーさま」

お弁当を食べ終わってふと顔を上げると、この机の周りにいる人だけじゃなく教室にいるみんなが俺を胡散臭そうに見ていることに気が付いた。

……まあ、そうだよな。
校内一の美人と評判の(校内一の美少年は陽翔だけど)御影さんを、こんな冴えない下級生に持っていかれたのかと思ったら誰でも嫌な気分になるだろう。

……でも。
恋人は俺だし!

「あの、御影さん」

俺に呼ばれて御影さんが顔を向けた。

……う。
表情がほぼ死んでますよ。

誰かと付き合うなんて初めてだから比べように無いけど、付き合い始めって普通ドキドキして楽しくてしょうがないものなんじゃないのか?
今の俺みたいに……。

だけど悲しいことに、今の御影さんはとてもじゃないけどうれしそうな表情には見えない。
今朝の、田上先輩に向き合っていた時のあのにこやかな表情とは全くの真逆だ。
鈴木さんは照れているって言ってくれてたけど……。

「――なんだ」

不機嫌な表情が残っている御影さんのことをあれこれ考えている内に、余計に不機嫌にさせてしまっていたらしい。これはまずい。

「あ、その。昼休み、まだ時間があるから廊下でおしゃべりでも……と思ったんですけど」

俺が思い切ってそう言うと、なぜだか御影さんは一瞬表情を止めた。そして軽く息を吐いた後、「いいよ」と返事をして自分から席を立った。
俺も慌てて席を立ち、鈴木さんらにぺこりとお辞儀をして御影さんの後に続いた。

御影さんが廊下に出て手すりに凭れかかっていたので、俺も隣に並ぶ。


「…………」

なんとなーく話しかけにくい雰囲気をまとい続けている御影さんにどぎまぎしながら、何気にここから見えるグラウンドに目を落とした。

「あっ」

目に入ったグラウンドでは、大杉先輩がみんなと一緒に楽しそうにサッカーをしていた。
思わず零れた声に、御影さんも俺の視線の先に顔を向けた。

さすが大杉先輩だ。あの体格だから遠くからでもよく目立つ。
先輩はもの凄い勢いでボールを奪い、力強くドドドと音でも立てていそうな迫力で走っていた。

「うわ、さすが大杉先輩。スッゲ―迫力」

バスケがサッカーに変わっただけでいつもとちっとも変わらない先輩がなんだか嬉しくて、俺は声を立てて笑った。

「……大杉は後輩想いか?」
「はい! 先輩、気さくで面倒見がよくって、俺らついつい頼っちゃいます」
「ふうん……」

御影さんに話しかけられてホッとして、嬉々として返事をしたのになぜだか御影さんの表情は退屈そうだ。


もしかして、俺と付き合うことを了承したことを今頃後悔しているんだろうか……。

一緒に過ごす昼休みの間退屈そうにしている御影さんに、俺は手のひらから嫌な汗が滲み出ていた。
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