36 / 57
第四章
キスの催促
しおりを挟む
御影さんのいろんな表情を知れば知るほど、俺は自分の溺れ具合を自覚する。
今の御影さんは、照れたように笑った後も俺のことをじっと見つめている。
ほんの少し細めた目には優しさと愛おしさが満ち溢れていて、俺の気持ちを簡単に煽ってくれる。
……ああ、触りたいなあ。
あの愛らしい頬に触れて髪の毛を梳いて、あの柔らかい唇に……。
ヤバいヤバいヤバいヤバい。
思わず御影さんの唇に目が引き寄せられていた。
ここは図書館だ。
俺らは勉強しに来てるんだ、うん。
俺は吸い付いて離れようとしない御影さんの唇に向けていた視線をグイ―ッと力業で引き剥がした。
……ふーっ。
勉強、勉強。
俺は無理やり引き剥がした視線を下へと持っていき、数学の問題を解こうと姿勢を正した。
「…………」
「…………」
……チラッ。
え?
見ちゃいけない見ちゃいけないと思えば思うほど御影さんが気になって、チラッと視線を上に向けると御影さんはまだ俺のことを見ていた。しかもなぜか不機嫌さを隠さない剥れた表情だ。
「……み、影さん?」
「……なんで外すんだ」
「え?」
「視線……。俺のこと無視して外しただろ、今」
ええ~っ!?
なに、それで怒ってんの?
「や、違いますよ」
「何が違うんだ、外したくせに」
「……え~っと、だからですね……」
うわー、なんて言えばいいんだよ!
まさかキスしたくなったから拙いと思って外したって言わなきゃなんないの?
「…………」
「…………」
……分かりました。降参ですよ、はい。
「……ヤバイと思ったんです……」
「――何が」
ふーっと俺は大きく息を吐いた。
呆れられるのがおちだけど、言わなきゃ言わないでずっと不機嫌でいられそうだ。
それはヤだし。
「……御影さんを見てたら、……キス、したいなって思っちゃったんですよ。拙いでしょ? ここ、図書館なのに」
俺も御影さんも一応ここが図書館だっていう意識はあるので、いろいろ責められてはいるが2人とも小声だ。
御影さんに今している説明も、小声でボソボソと話した。
俺の本音を聞いた御影さんは一瞬『え?』という顔をした後、表情をいったん止めて、そして手を口元に持って行った。
……ですよね。困りますよね。
だから外したんですよ。
なんとも言えない微妙な空気感に、俺はポリポリと頭を掻いた。
「すみません。じゃあそろそろ……」
勉強しましょうか。と言おうとしたところを、御影さんの爆弾投下に遮られた。
「それの何が悪いんだ?」
……て、
え……?
「騒ぐわけじゃないんだから、構わないだろう?」
えっ、ええっ?
「い、いや。だってここ図書館ですし」
「だからなんだ。席だって皆から離れてるし、誰も気にしたりしない。ここでのマナーは、携帯、スマホの電源を切ること。大声で話をしない。走り回らない。そのくらいだろ?」
ええええーーーーっ!?
そりゃそうかもしれませんけど……!
知ってますよね!
御影さんの憧れてる田上先輩もここにいたりするんですよ!
それに、誰かに見られたらどうすんですかーっ!
……もしかしたら御影さんって、度胸も度量も人一倍ある人なのかもしれない。
催促するかのように俺をじっと見つめ続ける御影さんを見ながら、俺はそんなことを考えていた。
今の御影さんは、照れたように笑った後も俺のことをじっと見つめている。
ほんの少し細めた目には優しさと愛おしさが満ち溢れていて、俺の気持ちを簡単に煽ってくれる。
……ああ、触りたいなあ。
あの愛らしい頬に触れて髪の毛を梳いて、あの柔らかい唇に……。
ヤバいヤバいヤバいヤバい。
思わず御影さんの唇に目が引き寄せられていた。
ここは図書館だ。
俺らは勉強しに来てるんだ、うん。
俺は吸い付いて離れようとしない御影さんの唇に向けていた視線をグイ―ッと力業で引き剥がした。
……ふーっ。
勉強、勉強。
俺は無理やり引き剥がした視線を下へと持っていき、数学の問題を解こうと姿勢を正した。
「…………」
「…………」
……チラッ。
え?
見ちゃいけない見ちゃいけないと思えば思うほど御影さんが気になって、チラッと視線を上に向けると御影さんはまだ俺のことを見ていた。しかもなぜか不機嫌さを隠さない剥れた表情だ。
「……み、影さん?」
「……なんで外すんだ」
「え?」
「視線……。俺のこと無視して外しただろ、今」
ええ~っ!?
なに、それで怒ってんの?
「や、違いますよ」
「何が違うんだ、外したくせに」
「……え~っと、だからですね……」
うわー、なんて言えばいいんだよ!
まさかキスしたくなったから拙いと思って外したって言わなきゃなんないの?
「…………」
「…………」
……分かりました。降参ですよ、はい。
「……ヤバイと思ったんです……」
「――何が」
ふーっと俺は大きく息を吐いた。
呆れられるのがおちだけど、言わなきゃ言わないでずっと不機嫌でいられそうだ。
それはヤだし。
「……御影さんを見てたら、……キス、したいなって思っちゃったんですよ。拙いでしょ? ここ、図書館なのに」
俺も御影さんも一応ここが図書館だっていう意識はあるので、いろいろ責められてはいるが2人とも小声だ。
御影さんに今している説明も、小声でボソボソと話した。
俺の本音を聞いた御影さんは一瞬『え?』という顔をした後、表情をいったん止めて、そして手を口元に持って行った。
……ですよね。困りますよね。
だから外したんですよ。
なんとも言えない微妙な空気感に、俺はポリポリと頭を掻いた。
「すみません。じゃあそろそろ……」
勉強しましょうか。と言おうとしたところを、御影さんの爆弾投下に遮られた。
「それの何が悪いんだ?」
……て、
え……?
「騒ぐわけじゃないんだから、構わないだろう?」
えっ、ええっ?
「い、いや。だってここ図書館ですし」
「だからなんだ。席だって皆から離れてるし、誰も気にしたりしない。ここでのマナーは、携帯、スマホの電源を切ること。大声で話をしない。走り回らない。そのくらいだろ?」
ええええーーーーっ!?
そりゃそうかもしれませんけど……!
知ってますよね!
御影さんの憧れてる田上先輩もここにいたりするんですよ!
それに、誰かに見られたらどうすんですかーっ!
……もしかしたら御影さんって、度胸も度量も人一倍ある人なのかもしれない。
催促するかのように俺をじっと見つめ続ける御影さんを見ながら、俺はそんなことを考えていた。
3
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる