最強美人が可愛い過ぎて困る

第二章

今はひっそりと♡

御影さんとはそのまま一緒に校内に入って、教室にいく手前で別れた。

御影さんは相変わらず静かな表情ではあったけど、それでも警戒心たっぷりの雰囲気とは明らかに違う俺への対応に、すれ違うみんなが『え？』という顔をして俺を振り返っていった。

まあね、ほぼガン見でしたよ。

『何でお前がそこにいる―――！！！』てな感じで睨む人もいれば、変な物を見たと言わんばかりに呆然とした表情で俺を見続ける人までいた。

もしかして、御影さんに言い寄る人はみんなボコられるとでも思ってるんだろうか。
それはそれで、なんだか複雑な気分だ……。


「蒼空―！　やっと来たな。なあ、どうだった？　うまくいったか？」

教室に入って来た俺を見るなり、陽翔と由羽人が駆け寄って来た。
由羽人はちょっぴり心配そうな顔つきだ。

それに俺は笑って応えた後、思いっきり大きな輪を作って見せた。

「ええっ！？　マジで！？　マジ、オッケーって！？」
「うわっ！　嘘！　やったね、蒼空！！」
「へへっ。ありがと。ほーんと、嘘みたいだよな。夢でも見てる気分だよ」
「夢なわけないじゃん！　あーーー！　良かった！　やっぱそれでこそ蒼空だよ」

３人であまりにも騒いでいるので、みんながどうしたんだと近づいてきた。

「あ、だからさ……、っととと、待って蒼空。言っても大丈夫なのか？」
「あー、うん。大丈夫だとは思うけど。別に特に隠そうっては思ってないみたいだったから」

そうだよな？
だって、あの田上先輩にまで俺のことちゃんと紹介してくれたんだもの。

「止めとくか」
「え？」
「なんだよ陽翔―。蒼空は言ってもいいって思ってるんだろ？　なあ？」

クラスの相田が俺に同意を求めた。
別に隠すことでは無いかもしれないけど、俺から進んで言いふらすのはやっぱりアウトかな。

「んー、やっぱ止めとく。成り行きに任せよう」

「ええ～？　何もったいぶってんだよー」

相田を筆頭に何人かがブーイングを浴びせて来たけれど、ここで言いふらすのはやめようと思った。
多分御影さんに聞いたら普通に認めてくれるんだろうけど、しばらくはひっそりとこの幸せをかみしめるのもきっと悪くない。

緩む頬を掌でさすりながら、皆のブーイングを背に、１人幸せをかみしめていた。