ポッキーゲーム!

くるむ

文字の大きさ
上 下
1 / 3

礼人と歩

しおりを挟む
日曜日の今日、礼人さんと公園で待ち合わせ中。少し早く来てしまったので、ベンチに座って足をブラブラとさせていた。

「すまん、待たせたか?」
「いいえ、僕が早く来すぎちゃって」

振り返って仰ぎ見ると、礼人さんは小さな買い物袋を持って立っていた。少し息を切らせて。
まだ全然早いのに、走って来てくれたんだろうか?

礼人さんは、きょろきょろとあたりを見回した。

「都合よく誰もいないな」
「えっ?」

都合よくという言葉に首をひねりながら僕もきょろきょろと辺りを見回した。少し肌寒くなりはじめたからなのだろうか。朝の9時というこの時間には、誰かが来る気配すらなかった。
礼人さんも、僕の隣に腰を下ろした。そして、袋から小さな箱を取り出す。

「おやつだ、一緒に食べようぜ」
「あっ、ポッキーだ!」
「好きか?」
「はい!」
「そうか、それはよかった」
礼人さんの口角が上がった。なんとなーく、人の悪そうな感じだ。

礼人さんの綺麗な指が、ポッキーの箱を丁寧に開けて一本取り出し口にくわえた。そしてその顔ごと、「ん」と僕に向かって顔を寄せる。
えっ?

戸惑っていると、礼人さんはさらに近づいてきてポッキーの先端で僕の唇をつついた。

ええ~? もしかして、ポッキーゲームをしようってこと?
だってこれって、 2人でもぐもぐして行って、誰かが降参しない限り最後には唇がくっついちゃうんでしょ?
かといって礼人さん相手に逸らしたり折ったりするなんて失礼極まりないし~。(というか、したくないし!)

もたもたしちゃうけど、もたもたしすぎたらきっと礼人さんを嫌な気持ちにさせちゃう。そんなの僕としては、絶対にしちゃいけないことだ。

えいっ、と勢いでポッキーの端っこをくわえた。
礼人さんがいつものような猫の目になって、妖艶に微笑んだ。

うううわっ。
ポッキーゲームなんて初めてするから気がつかなかったけど、顔がめっちゃ近いよ。目のやり場に困る。

視線をさまよわせながら、ちびちびと噛んでいく。礼人さんはもぐもぐむしゃむしゃと遠慮ない勢いだ。

どどど、どうしよう。礼人さんのきれいな顔が近付いてくる。睫毛長い、鼻筋きれい。肌もめっちゃきれい!

ドキドキドキドキ。
あ~、緊張しすぎて目の焦点が合わなくなってきた。ぼやけて見えてる。せっかくの綺麗な礼人さんの顔なのに。

ふにっ。

へっ?

あっ……。

柔らかい唇が押し当てられている。ビクッと震えた僕の腕を、礼人さんの手が優しく引き寄せた。
唇は何度も何度も柔らかく押し当てられ、それから離れた。

「礼人さん……」
「可愛いよなあ」

うっとりとした感じで言われて、ますます恥ずかしくなってきた。
顔が熱いよ。

「なあ、歩」
「は、はい」
「まだ、誰も来ないな」
「そう……ですね」

「続き、してもいい?」
「えっ?」

ポッキーゲーム、まだやるの? 恥ずかしいんですけど。

戸惑う僕の心の声が聞こえたのか、礼人さんは色っぽく微笑んで僕の顎に手をかけた。

「今度はポッキーなしだ」

そういって今度は、さっきとは比にならない、深くてめちゃくゃドキドキするキスをされてしまった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

裏の権力者達は表の権力者達の性奴隷にされ調教されてます

匿名希望ショタ
BL
ある日裏世界の主要人物が集まる会議をしていた時、王宮の衛兵が入ってきて捕らえられた。話を聞くと国王がうちの者に一目惚れしたからだった。そこで全員が表世界の主要人物に各々気に入られ脅されて無理矢理、性奴隷の契約をすることになる。 他の作品と並行してやるため文字数少なめ&投稿頻度不定期です。あらすじ書くの苦手です

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

君が好き過ぎてレイプした

眠りん
BL
 ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。  放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。  これはチャンスです。  目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。  どうせ恋人同士になんてなれません。  この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。  それで君への恋心は忘れます。  でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?  不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。 「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」  ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。  その時、湊也君が衝撃発言をしました。 「柚月の事……本当はずっと好きだったから」  なんと告白されたのです。  ぼくと湊也君は両思いだったのです。  このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。 ※誤字脱字があったらすみません

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

処理中です...