お前以外には触らせてないんだよ!

くるむ

文字の大きさ
上 下
18 / 18

後日談

しおりを挟む
多分、傍から見ても俺の和基への態度は変わっているんだろう。
なんとなーくだけど、周りの俺らへの態度が少し違ってきている気がする。

特に鬱陶しくなったのは、岡田だ。
時々思い出したように、「考え直せ、何を血迷ってあんなウザい奴。あんな年下よりは、俺の方が良いぞ。俺の方がずっとずっと頼りになるぞ」とあからさまに自分のことまでアピールし始めた。
……ウザいのはお前だ。

そして、結果俺らの仲を進展させる切っ掛けを作ったあの一年坊主……、小早川は、相変わらず和基に懐いていい後輩ぶりを演じているようだけど、俺と和基を見かけるたびにこっそり俺を睨んでいくのは相変わらずだ。
ただ、あいつと遭遇するときだけ俺も和基の腕を掴んだり引っ付いたりして牽制(俺は嫌がらせのつもり)してるんだから、性格的にはきっとどっこいどっこいなんだろう。


「青葉、何ニヤついてる」
「……は? なに? 笑ってたか、俺?」
「ああ。人の悪そ―な笑顔を作ってた」
「――羽瀬川じゃ、あるまいし」
「なんだと―?」
「うわっ!」

ベッドの上で教科書片手に受験勉強のつもりが、ついつい和基とのことを考えてしまっていた。そこを見ていた羽瀬川に、揶揄われたわけなんだけど。
切り返した俺に怒ったふりをした羽瀬川が、ふざけて俺の所にダイブしてきてプロレスみたいに俺に乗っかった。

「ちょっと! 待て待て、ギブ!!」
「ギブ、早ぇ―!」「何してんですか! 羽瀬川先輩!!」
「え?」
「は?」

ドーン!
ゴロゴロッ。
「……っ、て―っ! 何すんだ……、て、え? 和基……」

ベッドの上でポケッと目を丸くする俺と羽瀬川の頭上には、嫉妬に塗れた怒り顔の和基がいる。

……あ。
これ、完璧勘違いのパターン?

「和基、誤解だ、誤解。ふざけてプロレスごっこになっちゃっただけで……」
「羽瀬川先輩! 青葉さんは、絶対譲りませんからね!」
「バカ、和基何言って……」

本気で嫉妬しているのか、なんなのか。和基がムギュッと俺を抱きしめた。

……だから、俺はお前にこうされると力が抜けるんだってば……。
クタンと和基に縋りつくように体を預ける俺に気づいたんだろう。和基が俺をグイッと引き寄せて安定するように抱きしめなおした。

「おい、おい。他人様の前で、イチャイチャを見せびらかすなよ」

呆れて諭す羽瀬川に対しても、和基はグルグルと唸る犬のように俺を抱きしめ、羽瀬川を睨んでいる。それには流石の羽瀬川も、参ったなーという表情だ。

「……ヤレヤレ、だな。でも、まあてられた。俺もシノの顔見に行ってくるわ」

ちょっぴり呆れた表情を残して、羽瀬川は手を振って部屋を出て行った。
残されたのは2人。
なぜかちょっぴり沈黙が下りる。

「…………」
「…………」

「ハア……」
う。
何、ため息吐いてんだ?

「気づいてませんでした、俺」
「……何を?」
「羽瀬川先輩がライバルだってこと」
「!? ハア? なに言ってんだ、お前」

とんでもない言葉に、抜けた力がオンになった。
和基の体を押して、その顔を見つめる。

「だって、青葉さん、俺以外の奴に触られる気は無いって言ってたのに……」
「あー、だから! あれは、ふざけてたわけだし突然だったからで。しかもあいつは俺の親友だぞ? 羽瀬川だってそう思ってるし、あいつの夕月への溺愛っぷりはお前だって分かってるだろ?」

「……そうですけど―」
「だいたい、本当に羽瀬川がお前のことをライバルだって思っていたとしたら、この間の芝居だって持ち出したりしないだろ? あいつ、俺によくお前にもっと素直になれって説教してたくらいだぞ?」

「え? 本当ですか?」
「そうだよ」

「……そう、なんですか。……う~」
「まったく、見当違いの嫉妬なんてしてるなよ」

こんだけ否定してるのに、和基はまだまだ納得してない表情だ。
本当にこいつは、ヤキモチ焼きすぎだぞ。

でも、まあ。

心のどこかで、それを嬉しいと思っている自分も自分だが。


「和基……」

ベッドに仰向けに寝転んで、和基を手招きして名前を呼んでみた。

呼ばれて顔をこちらに向け一、瞬目を丸くした和基だったけど、すぐに嬉しそうな顔に変わりいそいそと俺に近づいてくる。

まったく、手の掛かるヤキモチ焼きだ。



だけど、俺にとっては誰よりも特別で、愛しい愛しい俺だけのワンコだ。


お・わ・り♡
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

噂(うわさ)―誰よりも近くにいるのは私だと思ってたのに―

日室千種・ちぐ
ファンタジー
身に覚えのない噂で、知らぬ間に婚約者を失いそうになった男が挽回するお話。男主人公です。

このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。 嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。 イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。 娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...