上 下
9 / 18

変な罰ゲーム

しおりを挟む
結局その時間は、羽瀬川がほぼ知崎らの相手をして、俺は自分の勉強をしつつ補佐的に教えるような形になっていた。

「あ~、そうかあ。やっと分かったよ。ありがとう羽瀬川」
「どーいたしまして」
「な? 羽瀬川の教え方って丁寧だろ?」
「んー。だけど、教えてもらって楽しいのは青葉だよなー?」
「なあ」

知崎と江中が顔を見合わせてニヤッとする。

「ええ? なにそれ」
「だーってさ、青葉美人だから、傍に居るだけで気分いいし」
「おい、おい」

羽瀬川が2人の前に立ちはだかり、ふざけた感じで頭にグリグリと拳を押し当てた。

「いてて、痛いよ羽瀬川!」
「青葉に変なちょっかい出したらだめだぞー。売約済みなんだからな」
「ちょっ……、羽瀬川!」

売約済みってなんだよ!
それってまるで、俺が和基のモノみたいじゃないか!

……いかん。
変な事考えたら顔が熱くなってきた。

火照った顔を冷やそうとノートを押し当ててみる。

「何やってんだ、青葉」
「……! べ、別に?」

キョトンとした顔で知崎に聞かれて、慌ててノートを顔から離して、今度はパタパタと扇いでみた。

「さ、お前ら行った、行った」
「なんだよ~、俺ら邪魔者扱いか―?」
「青葉と話があるんだよ、ホラ」
「わぁったよ。じゃ、ありがとな」
「おう」

羽瀬川に追い立てられて知崎らが自分の席に戻ったのを見届けて、羽瀬川がくるんとこちらを向いた。

「昨日の話な、あれ、段取り付けておいたからな」
「え?」
「和基のお灸の話」
「……段取りって、何」

ちょっぴり警戒心を込めて聞くと、羽瀬川がニヤリと笑った。

「知ってる? 演劇部部長の八神。あいつにお前に絡むよう頼んでおいた」
「え? ちょっと、それどういう……?」

絡む?
絡むって何。俺が人とベタベタ引っ付くのが嫌いって知っているくせに!

「大丈夫だよ。あいつ舞台慣れしてることもあって、そんなに近くに寄らなくても近くに見せる技を持っているから」
「……それで?」
「うん。青葉と仲良さそーに振る舞ってくれって頼んでおいたんだ。そこに俺が上手く和基を誘導してやるから」

何の問題も無いぞ、というような余裕しゃくしゃくな感じがなんだか胡散臭い。羽瀬川に限って下手を打つとは考えにくいが。
それはそうと、

「……お前、なんて言って頼んだんだ? そんなこと」

「うん? 青葉とシノ絡みで喧嘩したから、罰ゲームで許すことにしたって言っておいた。青葉の了承も得てるから、和基に誤解させて怒らせてやってくれってさ」

「……それを、八神は普通に受け入れたのか?」

「ああ。青葉と話したことないから楽しみだって言ってたぞ。まあ、でもあいつが受けたのはそれだけじゃなくて、今度の文化祭に俺ら通行人AとBで出演するってことでOKになった」

「え!? おい!」
「大丈夫、大丈夫。稽古も何にもいらないから。ただ、本番に一回だけステージの上を横断するだけでいいからさ」
「……。お前なぁ……」
「いいじゃん、いいじゃん。たまには人寄せパンダになったってさ。まあ、これもきっと和基が聞いたら歯噛みして悔しがるぞ?」

「……それは夕月も一緒だろ」
「いーや。あいつ、ちょっと変わってるからな」
「変わってる?」
「そ。俺と青葉が並ぶと美男美女度が際立って、目の保養になるんだってさ」
「でも、お前がみんなに騒がれるの、嫌だと思わないのか?」

「んん? ……そりゃ、少しはムッとはするかもしれないけど、大したことは無いだろ。だって俺、シノ以外の奴に気を持たせるようなことはしないから」

「…………」

なんとなーく、含みがあるよな、今の発言。

分かったよ、分かりましたよ。
羽瀬川が、いろんな意味で和基を恋人としてはダメな奴だと思っているという事が。

「……分かった。任せるよ。通行人Bも引き受けるさ」
「Aじゃないのか?」
「それは羽瀬川に譲る」

ため息交じりに答えると、羽瀬川は楽しそうに笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

美醜逆転の世界で推し似のイケメンを幸せにする話

BL
異世界転生してしまった主人公が推し似のイケメンと出会い、何だかんだにと幸せになる話です。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

処理中です...