お前以外には触らせてないんだよ!

くるむ

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急に冷静になるわんこ

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ゆっくりと、優しく和基の唇が俺の唇を覆う。
ふわりと乗っかったそれはすぐに離れて、今度は何度も何度も可愛い小鳥のように俺の唇を啄んだ。

……そんな可愛いキスじゃなくて。

もどかしい思いで和基の腕をキュッと掴むと、和基は少し体を離した。
そして俺の両頬を掌で挟んで、しっかりと俺に目を合わせる。

「ごめん、青葉さん。……うれしいお強請りだったけど、おかげでちょっと冷静になりました」
「…………」

なんだよ、冷静って。俺の方は、ちょっと不満だ。

メシ、食べに行かないと」
「飯……? だからって、……あっ! 羽瀬川!」

飯の一言で急に現実に引き戻された。

そうだよ! 
あいつ、どうした?
同じ部屋だから、荷物を置きに来るはずなのに!

「あ、それは大丈夫です。羽瀬川さんとは協定結んでいますから」
「……協定?」
「はい。もしもこの部屋に鍵がかかっている時は、青葉さんといい事している最中なのでそっとしておいて下さいってことで」
「……は、はあっ!?」

ちょっと、こいつ!
なんてこっぱずかしい約束を羽瀬川としてるんだよ?

「ああ~、可愛いなあ。青葉さん!」
「ちょっと、お前……!」

俺は怒ってるんだぞと言いたいのに、和基の奴、何を勘違いしたのか嬉しそうに俺を引き寄せ抱きしめた。
ギュウギュウと凄い力で抱きしめられて、俺は潰れてしまいそうだ。モゴモゴ暴れる俺に、ようやく和基は腕を緩めて解放した。

「青葉さん!」
「な、なんだ?」

どうした、急に。
さっきまであんなにふにゃけた顔をしていたのに、和基は急に真面目な凛々しい顔つきになっている。

「お願いですから、その可愛い表情。俺以外の野郎の前で見せちゃダメですよ! 喰われちゃいますからね!」
「へ……、変な心配するな! 俺なんかよりお前の方が……っ」
 
つい勢いで、普段から溜まっている和基の誰彼構わないスキンシップの多さへの不満を言いそうになった。

「え? 俺?」

案の定、和基は何のことだか分からないと言った顔をする。
鈍感すぎるし、我儘だぞお前は!

「……いい。学食、行くぞ」
「はい」

ドアを開けて廊下に出たが、羽瀬川はいなかった。

そのまま学食に向かったんだろうか?
だとしたら、悪いことをしたな。


「……混んでるな」
「ですねー」

のんびりしていたのが祟って、食堂内は満席に近い。
キョロキョロと辺りを見回して、空いている席を見つけた。

「和基、悪いが席取っておくから俺の分も持ってきてくれるか?」
「はい、いいですよ。日替わり定食でいいですか?」
「ああ、頼む」
「はい」

和基が列に並びに行ったので、俺は空いている席に向かった。
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