きみと運命の糸で繋がっている

くるむ

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君と運命の糸で繋がっている

君が幸せなら3

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「…あなたは、朔也は僕の話をちゃんと聞いてました?」

攻める口調の鈴海に、朔也は戸惑った。鈴海は一体何を怒っているのか。

「僕は今まで、人にも物にも何の興味も抱いたことは無いんです。朔也だけなんですよ! ずっと気になって追い求めて、出会えてこんなに嬉しかったのは…!」


攻める口調で言い募る鈴海の瞳には涙が滲んでいる。


「連れて行ってください、僕も。朔也がたった一人で旅を続けるだなんて、僕は嫌です。だからと言って、僕以外の誰かを連れて旅をするのも嫌だ」

言葉使いは藤のそれと違ってだいぶ丁寧だが、鈴海の表情も、言っていることそのものも、拗ねて独占欲を滲ませていた藤そのものだ。

朔也の中に、もうどうしようもないほどの嬉しさが沸き上がる。
藤に対する抗いようの無い独占欲と執着が、朔也の中を満たしていった。


「藤……」

朔也が手を伸ばして鈴海の頬を撫でる。


「…いいのか? 僕が君に"気"を流したら、もう2度と人間には戻れないんだぞ」
「いい、です。…きっと、僕も知らないうちに、それを求めていたと思うから」


普通に、平凡な家庭で育った鈴海。
取り立てて苦労をせずに幸せな生活を送っているはずなのに、不思議と何にも興味を持てなくて、現実の時間をただ虚ろに過ごしていた。
そんな鈴海が唯一気にかけていたもの。それが朔也の夢だったのだ。

まるで朔也と出会うことを予知していたかのように。



「僕を、連れて行ってください」

鈴海は、朔也の目をしっかりと見て、もう一度口にした。


「藤……!」

朔也は鈴海をグイッと引き寄せて、力一杯抱きしめる。鈴海の背中を強く撫で擦り髪をかき混ぜて、その髪に顔をうずめた。
朔也の吐息が鈴海のうなじにもかかる。鈴海の肩がビクンと震えた。

「ああ、まずいな……」

鈴海をきつく抱きしめたまま、朔也がぽつりと呟く。しばらく逡巡していたようだったが、ゆっくりと鈴海の体を離した。

「藤、…今夜、僕の部屋に来れるか?」
「あの、それは…?」
「寝る前にだ。ここで君に"気"を与えることは出来ないから」
「…はい」

少し緊張した面持ちで、鈴海が静かに返事を返す。その様子に朔也が微笑んだ。


「気が変わったら来なくてもいい。それでも僕は…」
「気なんか変わりません! でも緊張はしています。僕にとっては未知の世界だし、それに……!」

「それに?」

勢いで口走りかけて慌てて口を噤んだ鈴海の言葉に、朔也が反応した。小首を傾げて返事を促す朔也に、鈴海の頬が赤く染まる。
その表情に目を瞬いていると、鈴海の口からとんでもない言葉が飛び出した。


「夜這いみたいだなって思って、ドキドキしたんですっ!」


真っ赤な顔で叫ぶように言った後、鈴海は踵を返して宿の方へと歩き出した。

思いもよらないその言葉に、一瞬ポカンと鈴海の背中を見つめる。


そして我に返った朔也は、鈴海のもとへと走り寄った。
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