きみと運命の糸で繋がっている

くるむ

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君と運命の糸で繋がっている

他人から与えられる温もり3

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「朔也ー、悪い。川越さんまで至急みたらし団子を届けてくれないかな」
「はい、わかりました」

めったに出前とかは無いのだが、たまにこうやって配達を受けることもある。そういう時は手の空いている者が出前を受け持つことになっていた。

川越はお茶の教室を開いていて、一年に二、三度お弟子さんたちと労いの会をするようだった。そしてその際は大抵『甘味処つばき』に注文してくれるのだ。

朔也は十人分のみたらし団子を手に、川越へと急いだ。包みに入ったそれは出来立てで熱々だ。出来ればなるべくその美味しい状態で届けたい。それは真摯に真心こめて商品を作っている職人たちへの、朔也の思いでもあった。

「ちはー。つばきです。みたらし団子をお持ちしました」
「はーい」

奥から若い女性がいそいそと出てきた。視線は朔也の手元の包みへと注がれている。

「これ、お代ね。前回のツケの分も一緒になっているから」
そう言われて渡された金額を朔也は素早く計算し、合っている事を確認した。

「確かに。ありがとうございました。またよろしくお願いします」

朔也はぺこりと挨拶をして川越を後にした。


行きは急いでいたので川越に行く事だけを考えていたが、帰りはのんびりと歩きながら、いつもの癖で辺りを見回しながらゆっくり歩く。
遠くを歩く子供の顔や、すれ違っていく子供の後姿を、朔也はぼんやりと眺めていた。

徐に視線を遠くへと向けた朔也の顔が、ピクリと動く。母親に抱きかかえられているその子供の表情が、藤のソレとダブったのだ。
意識を集中して藤なのかと確認をするが、その子を見ても、魂が揺さぶられるものは何もなかった。


初めて藤を見た時、彼は何者かに襲われた直後で、血にまみれて虫の息で青白い顔をしていた。そんな状態だったから、藤が可愛いかどうかなんて分からなかったし、顔を覗き込んだわけじゃない。
それなのに、朔也は助けなければと思ったのだ。あれほど複雑な感情を人間に持っていたのに。

これはどう考えても理屈ではない。朔也にとっての藤は、まるで魂が欲するように、只々惹かれる存在だと言えるだろう。

だから逆に気づいてしまう。
どんなに可愛い表情でも、どんなに仕草が似通っていても…。

朔也は店への帰り道、気が抜けたようにトボトボと歩いていた。
ときどき、冷えた心に突きつけられる現実。
それは藤を探したいと思えば思う程、嫌になるくらいに突き付けられる。

藤の生まれ変わり…。
そんなものはどこにも居ないのだと。


空は青く澄み渡っている。


それが余計に悲しかった。



朔也はそっと瞳を閉じた。自嘲した笑みが、朔也の口元に浮かぶ。


いつまで僕はそんな夢を見ているんだろう。



「朔也ー!」

離れた所から朔也を呼ぶ明日蘭の声が聞こえた。
目を開けて振り返った先には、元気よく手を振る明日蘭の姿。

「休憩、一緒に取っても良いって! みたらし一緒に食べよう!」


明るく手を振る明日蘭の姿に、朔也は彼に癒されている事をつくづく痛感していた。
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