きみと運命の糸で繋がっている

くるむ

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形見を探しに

朔也のいない間に

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朔也が帰る予定のその日、藤はお昼を過ぎた辺りからそわそわし始める。それは誰の目にも明らかで、雄大の気持ちを複雑なものにしていた。

「落ち着かないなあ、藤。ほんっと朔也の事が大好きなんだな」

颯太に呆れたように揶揄われ、藤が唇を尖らす。

「だって…。朔也とは付き合い長いし…」

朔也の事を好きなのは確かなことだけど、そうやって揶揄われるように言われるとなんだか恥ずかしい。藤はもごもごと口ごもり、顔を赤くした。


「ふうん。じゃあ俺も、長く付き合ったら好きになってくれる?」

いつの間にそばに来たのか、横から論門が口を挟んで来た。びっくりして藤が見上げると、論門にニッコリ微笑まれた。
「え、ええと…、あの…」
パシパシと瞬いて論門を見る藤の頬は、さっきよりも少し色づいている。

「かーわいいなあ、藤」
言いながら、ぎゅうっと論門が藤を抱きしめる。論門の腕の中で藤がびっくりして固まった。雄大の眉間にしわが寄る。

「あ、あの…っ。論門…?」
「ん~?」

戸惑う藤を気にせずに、論門は藤を抱きしめる腕の力を強める。

「朔也が帰ってきたら、こんなこと出来ないだろ? あいつ、ホントに過保護というか独占欲が強いというか…」
「あっ、あの、ろ、論門…」

「論門、そろそろ離してやれよ。藤、困ってるぞ」
ポンと、論門の肩に手を置いて、颯太が促す。

「なんだ、颯太も邪魔するのか?」

ムッとした顔を作って、さらに論門は藤の頭まで撫で始めた。

「そうじゃなくて、藤が困ってるから」
「…そうなのか?」

抱きしめた腕を弱めることなく聞く論門に、藤は腕の中でコクコクと頷いて意思表示をした。

「そうか。じゃあ、しょうがないか」

論門は一旦ぎゅうっと抱きしめる腕の力をさらに強めて、それからゆっくり藤を離した。離しながら藤の顔を覗き込む論門の顔が、嬉しそうに綻ぶ。自分の顔が赤くなっていることに自覚のある藤は、論門の嬉しそうな顔に、より恥ずかしさが増していた。


「さてと。藤、自習室に行こうか」

真っ赤になっている藤の気を蹴散らすように、筆記用具を手にした雄大が立ち上がり声をかける。颯太は、先に立って歩き出していた。

「うん、ちょっと待って」

ガタガタと筆記用具を探し慌てる藤に、雄大が笑いながら手伝った。

「大丈夫、慌てないでいいよ。ちゃんと待ってるから」

ニッコリと笑うその優しい雄大の表情に、藤も安心して頷く。



朔也のいない間に、雄大や颯太と少し距離が縮まっていた。そして論門も…。

論門に関しては、微妙にまだ苦手意識は無くなってはいないのだけど、それでも藤の中では不思議な、それでいて安心できる味方なのだという認識に染まりつつあった。
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