きみと運命の糸で繋がっている

くるむ

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形見を探しに

シンヨウデキルヒト

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雄大にしがみ付いて離そうとしない藤に、颯太が持っていた手拭いをかけてやった。冷えていた体にふわりとあたる温かさに藤が顔を上げる。

「大丈夫か、藤」
「う…ん」

「さて、と。どうする、藤? 俺らは風呂に入りに来たんだけど、一緒に入っていくか?」

論門に聞かれて藤はどうしようかと考えた。
適当にお湯をひとかぶりして出て行っても良かったのだが、正直言って今は一人になりたくないというのが本音だった。部屋に戻るまでのわずかな時間でさえ、柏木たちがまた現れるのではないかと思えてしまい怖かった。

「…一緒に入る」
雄大の袖をギュッと握りしめて、藤はポツリと呟いた。

「そっか。じゃあ、雄大を離してやれ」

パシンと勢いよく颯太に叩かれ、「え?」と顔を上げる。
颯太も論門もすでに着物を脱いでおり、まだそのままなのは雄大だけだった。
藤が雄大の着物を握っているせいで、まだあれから脱衣所に行っていないのだ。

「わっ。ごめん、雄大!」

それに気づいた藤が、真っ赤な顔で手を離した。雄大は笑って「大丈夫」と言って脱衣所へと歩いて行った。

「藤!背中洗ってくれないかな」

呼ばれて振り向くと、論門がすでに背中以外を泡塗れにしていた。いつの間にか体を洗い始めていたようで、論門の前には颯太がいて、その颯太の背中を論門が洗っていた。
2人なので輪になって背中を洗いっこするには足りていない。藤と雄大が入ると、きっと全員の背中を洗ってあげることが出来るだろう。
なんだか楽しそうに見える状況に、藤も迷わず椅子を引き寄せ論門の背中を洗い始めた。

着物を脱いでやって来た雄大も、その光景を見て藤の後ろについた。小さな円を作り皆の背中を洗いあう。
藤は素直に楽しいと思った。いつもは朔也と二人でこっそり入っているので、皆でワイワイとすることは出来ない。もちろん朔也から"気"を貰い、甘やかせてもらうあの時間も楽しいことは楽しいのだけど、たまにはこういう事も出来ると良いのにと思った。

石鹸を流して湯船に浸かりながらのんびりする。風呂の縁にしがみ付いて、藤がぷくぷくと浮いたり沈んだりして遊んでいると、パチッと論門と目が合った。
目を細めて優しい目で藤を見つめている論門。目が合ったとたん、ニコリと優しく微笑まれた。

ずっと論門にそんな目で見られていたのかと思うと、藤の頬がじわじわと熱くなってくる。
(やっぱり何だか論門って苦手…。じっと見られるとそわそわする)

論門に対する自分の感情が分からなくて、藤は小首を傾げる。嫌いとかそういうのとは違うんだけど、初めて会った時からなぜか苦手意識があった。それはいったいなんなのだろう。

「逆上せた?」

ぼーっとしながら、論門の事を考えていたら雄大に心配そうに声をかけられた。

「あ、ううん。大丈夫」
「そっか、ならいいけど」

「おい、そろそろ出ようぜ。熱くなって来た」
ザブンと勢いよく颯太が立ち上がる。ちょうど脱衣所がざわざわし出したので、皆が風呂に押し寄せる時間になって来たらしい。颯太につられて、みんな湯船から出て脱衣所へと向かった。

着物を着て脱衣所を出、廊下を歩いている時に論門がそばに寄って来た。

「大丈夫か、藤」
「え?」
「怖く、ないか?」

論門の言葉で、一太や柏木にされた時の恐怖を思い出した。怖くないと言えば嘘になる。
嘘になるけど…。

「大丈夫。こうやってみんなが傍にいてくれるから。それに雄大も颯太も同じ部屋だから安心だもの」

そう言って藤は、ニコリと論門に微笑んだ。

「そうか」

論門は薄く笑い、そっと雄大に視線を移す。



「…あの調子じゃそう長くは続かないだろうな」

誰にも聞き取れないような小さな声で論門が呟く。
もちろん、聞いている者は誰もいなかった。
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