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形見を探しに
寮一番の美少年2
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藤たちが思っていたよりも、自習室には結構人がいた。どこに座れるかときょろきょろして、適当に空いているところに各々別れた。
一つの長机に四人が腰かけられるように配置されていたので、二つ並んで空いている所に、朔也と藤は腰かけた。とりあえず、今日習ったところの復習をと朔也は藤を促す。
本来、ここへの入学は事前に小学校を卒業していないといけなかったのだが、藤も朔也も小学校になど行ったことは無かった。それでもここに入学できたのは、ひとえに作蔵の持っている伝手のおかげだった。
ただ、朔也は見た目と違い長いこと生きている事と、保世にいたころにその村の著名人や博識高い人たちとの交流もあったことから、読み書きはもちろんのこと、知識も意外と豊富だった。
藤も甘木屋で習ったことが、今になって少しだけど役には立っていた。
「う~」
しばらく大人しく机に向かっていたが、とうとう根を上げたのか藤が唸りだした。
甘木屋で拗ねていた時の、あの辛抱強さはどこに行ったのかと朔也は呆れる。あれはあれで厄介ではあったけど、もう少し根気良い性格になればいいのにと、朔也は密かに思っていた。
「藤、ほら、もう少し頑張れ」
「……」
恨めし気に口を尖らせて、上目遣いに朔也を見上げる藤の表情は…、呆れるほど可愛い顔だった。それと同時に、あちこちから息を呑むような声が聞こえてきたのを朔也は聞き逃さない。
「あのな、藤…」
藤は、羽柴に襲われた後も基本何にも変わってはいなかった。確かにこの世の中に自分を狙う怖い人間がいるということは理解したようでも、根本的に警戒心の弱い藤は、自分の容姿にも無頓着だし朔也から見て本当に危なっかしいのだ。
今も頭を抱える朔也とは対照的に、キョトンとした目で朔也を見つめている。
続けて藤に説教をしようと思って口を開こうとしたところで、自習室の扉が開けられる音がした。
「わっ、天月だ!」
「ひゃー、運がよかったな!目の保養が二人に増えたぞ」
途端に騒がしくなった室内だったが、その騒めきの原因になっている天月は慣れた物で、にこりと笑って皆を一蹴する。そしてパチリと朔也と目が合った瞬間、迷わず一直線に朔也のもとへとやってきた。
「いいなぁ、藤は。朔也に本当にべったりなんだね」
「……」
相変わらず藤に対して嫌味な言い方をする天月に、藤は眉根を寄せる。
「ねえ、朔也。僕にも教えてくれる? これなんだけど」
そういって朔也に見せたのは、藤が見てもさっぱり分からない計算式だった。
一瞬、朔也は戸惑ったようだったが、筆を執って計算式をサラサラと横に書いていく。それを見て天月はわざとらしく目を丸くした。
「うわー、朔也ってカッコイイだけじゃなく頭もいいんだ!凄ーい」
天月は紙を覗き込むようにして、朔也に顔を寄せぴったりとくっ付いた。その様子にムッとする藤を、天月は横目でチラリと見て口角を上げる。
まるで自分の方が朔也に似合っているのだと言わんばかりの表情に、藤の蟀谷がピクピクと動いた。
一つの長机に四人が腰かけられるように配置されていたので、二つ並んで空いている所に、朔也と藤は腰かけた。とりあえず、今日習ったところの復習をと朔也は藤を促す。
本来、ここへの入学は事前に小学校を卒業していないといけなかったのだが、藤も朔也も小学校になど行ったことは無かった。それでもここに入学できたのは、ひとえに作蔵の持っている伝手のおかげだった。
ただ、朔也は見た目と違い長いこと生きている事と、保世にいたころにその村の著名人や博識高い人たちとの交流もあったことから、読み書きはもちろんのこと、知識も意外と豊富だった。
藤も甘木屋で習ったことが、今になって少しだけど役には立っていた。
「う~」
しばらく大人しく机に向かっていたが、とうとう根を上げたのか藤が唸りだした。
甘木屋で拗ねていた時の、あの辛抱強さはどこに行ったのかと朔也は呆れる。あれはあれで厄介ではあったけど、もう少し根気良い性格になればいいのにと、朔也は密かに思っていた。
「藤、ほら、もう少し頑張れ」
「……」
恨めし気に口を尖らせて、上目遣いに朔也を見上げる藤の表情は…、呆れるほど可愛い顔だった。それと同時に、あちこちから息を呑むような声が聞こえてきたのを朔也は聞き逃さない。
「あのな、藤…」
藤は、羽柴に襲われた後も基本何にも変わってはいなかった。確かにこの世の中に自分を狙う怖い人間がいるということは理解したようでも、根本的に警戒心の弱い藤は、自分の容姿にも無頓着だし朔也から見て本当に危なっかしいのだ。
今も頭を抱える朔也とは対照的に、キョトンとした目で朔也を見つめている。
続けて藤に説教をしようと思って口を開こうとしたところで、自習室の扉が開けられる音がした。
「わっ、天月だ!」
「ひゃー、運がよかったな!目の保養が二人に増えたぞ」
途端に騒がしくなった室内だったが、その騒めきの原因になっている天月は慣れた物で、にこりと笑って皆を一蹴する。そしてパチリと朔也と目が合った瞬間、迷わず一直線に朔也のもとへとやってきた。
「いいなぁ、藤は。朔也に本当にべったりなんだね」
「……」
相変わらず藤に対して嫌味な言い方をする天月に、藤は眉根を寄せる。
「ねえ、朔也。僕にも教えてくれる? これなんだけど」
そういって朔也に見せたのは、藤が見てもさっぱり分からない計算式だった。
一瞬、朔也は戸惑ったようだったが、筆を執って計算式をサラサラと横に書いていく。それを見て天月はわざとらしく目を丸くした。
「うわー、朔也ってカッコイイだけじゃなく頭もいいんだ!凄ーい」
天月は紙を覗き込むようにして、朔也に顔を寄せぴったりとくっ付いた。その様子にムッとする藤を、天月は横目でチラリと見て口角を上げる。
まるで自分の方が朔也に似合っているのだと言わんばかりの表情に、藤の蟀谷がピクピクと動いた。
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