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手折ってはいけない花
朔也の怒り2
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朔也の周りを取り巻く熱い空気と、異様なまでに冷たい目つきに庄太の体がブルリと震える。
「お前…なのか?」
「なにが」
「茂吉たちを…、あんなっ!化け…モガッ」
恐怖で後ずさりながら喚く庄太の口を、煩いとばかりに朔也の掌が上から抑えるように塞ぐ。ギリギリと強い力で圧されて、庄太が痛みに顔を歪めた。
「先に藤を酷い目に合わせたのは誰だ」
「っ…ぐうっ」
顎が外れるのではないかと思うくらい強い圧を掛けられて、庄太の目に生理的な涙が滲んだ。
「遊んでる暇は無い。食事の時間だ」
朔也がそう言ったとたん、庄太の"気"が一気に朔也の掌へと吸い上げられて行く。すごい勢いで流れ込んでくる庄太の"気"は、朔也の細胞を歓喜に震わせた。
だがその反面、庄太は気が狂うくらいの気持ち悪さを感じていた。突然自分の中の血液が逆流し、顔面へとなだれ込んで朔也に吸い上げられていくような錯覚。恐怖と絶望と、生命の危機に、庄太は必死で朔也の手を引きはがそうと抵抗した。
「うあっ…!ぎゃあっ、はな…、離せ…あ゛あ゛あああぁぁぁぁぁぁ」
苦悶の表情でのた打ち回る庄太の横で、朔也は恍惚の表情だ。
「これは…病みつきになったら…、困る、よな……」
――ドサッ
"気"を半分以上抜き取られた庄太は自分を支えることも出来なくなり、その場に崩れ落ちた。それでもなお表情さえ変えずに朔也は"気"を吸い続ける。庄太の体は、時折小さくビクビクと跳ねていた。
庄太の"気"を全て吸い尽くした後、朔也は前方に転がっている茂吉と信吾を見てため息を吐いた。
庄太の場合は何も外傷がないので心の臓の病とかで片付けられるだろう。だが、焼かれて骨と化している遺骨が道端に転がっているとなると話は別だ。朔也は、二人分の骨を「よいしょ」とかついで、店の裏の雑木林へと入って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「朔也ぁ…」
すぐに戻ると言っていたのに、朔也は一向に戻ってくる気配がない。
置いて行ったりしないと朔也はちゃんと言ってくれたけれど、ほとんどお荷物のような自分を、朔也が鬱陶しいとたとえ思ったとしてもおかしくは無いのだ。
藤は不安で不安で、居ても立っても居られない気持ちだった。
俯いて、祈る気持ちで朔也を待ち続ける。
「待ってろ」と言われたのだから、自分に出来ることは只待ち続ける事だけだ。
『早く、早く戻って来て』心の中で何度も呟いては体を丸める。
「いい子でいたか?」
待ちわびていた朔也の声に、藤はパッと顔をあげる。
走って来たのか、大粒の汗を掻いて肩で息をする朔也が立っていた。
「朔也っ…!」
逸れていた親に迎えに来てもらった幼子のように、藤は泣きながら朔也に抱き着いた。
「お前…なのか?」
「なにが」
「茂吉たちを…、あんなっ!化け…モガッ」
恐怖で後ずさりながら喚く庄太の口を、煩いとばかりに朔也の掌が上から抑えるように塞ぐ。ギリギリと強い力で圧されて、庄太が痛みに顔を歪めた。
「先に藤を酷い目に合わせたのは誰だ」
「っ…ぐうっ」
顎が外れるのではないかと思うくらい強い圧を掛けられて、庄太の目に生理的な涙が滲んだ。
「遊んでる暇は無い。食事の時間だ」
朔也がそう言ったとたん、庄太の"気"が一気に朔也の掌へと吸い上げられて行く。すごい勢いで流れ込んでくる庄太の"気"は、朔也の細胞を歓喜に震わせた。
だがその反面、庄太は気が狂うくらいの気持ち悪さを感じていた。突然自分の中の血液が逆流し、顔面へとなだれ込んで朔也に吸い上げられていくような錯覚。恐怖と絶望と、生命の危機に、庄太は必死で朔也の手を引きはがそうと抵抗した。
「うあっ…!ぎゃあっ、はな…、離せ…あ゛あ゛あああぁぁぁぁぁぁ」
苦悶の表情でのた打ち回る庄太の横で、朔也は恍惚の表情だ。
「これは…病みつきになったら…、困る、よな……」
――ドサッ
"気"を半分以上抜き取られた庄太は自分を支えることも出来なくなり、その場に崩れ落ちた。それでもなお表情さえ変えずに朔也は"気"を吸い続ける。庄太の体は、時折小さくビクビクと跳ねていた。
庄太の"気"を全て吸い尽くした後、朔也は前方に転がっている茂吉と信吾を見てため息を吐いた。
庄太の場合は何も外傷がないので心の臓の病とかで片付けられるだろう。だが、焼かれて骨と化している遺骨が道端に転がっているとなると話は別だ。朔也は、二人分の骨を「よいしょ」とかついで、店の裏の雑木林へと入って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「朔也ぁ…」
すぐに戻ると言っていたのに、朔也は一向に戻ってくる気配がない。
置いて行ったりしないと朔也はちゃんと言ってくれたけれど、ほとんどお荷物のような自分を、朔也が鬱陶しいとたとえ思ったとしてもおかしくは無いのだ。
藤は不安で不安で、居ても立っても居られない気持ちだった。
俯いて、祈る気持ちで朔也を待ち続ける。
「待ってろ」と言われたのだから、自分に出来ることは只待ち続ける事だけだ。
『早く、早く戻って来て』心の中で何度も呟いては体を丸める。
「いい子でいたか?」
待ちわびていた朔也の声に、藤はパッと顔をあげる。
走って来たのか、大粒の汗を掻いて肩で息をする朔也が立っていた。
「朔也っ…!」
逸れていた親に迎えに来てもらった幼子のように、藤は泣きながら朔也に抱き着いた。
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