19 / 161
手折ってはいけない花
素直になれない
しおりを挟む
藤がいつものように店先を掃いていると、三吉が走って来た。
「旦那様が今、休みの日を決めてるんだけど、藤はどうする?」
「休みの日って、あの月一の?」
「そ。俺はもうちょっと後でいいかなと思ってるんだけど」
三吉に言われて朔也はどうするんだろうと、ぼんやり考えていると、店の奥で万理と梅の話し声が聞こえて来た。
格別元気な梅の声はここまで丸聞こえだった。
「で、で? 朔也はお休みをいつ取るんです? もちろんその時はお嬢様をどこかに誘ったりするでしょうから、その時はもちろん承諾なさるんでしょ?」
「いやだわ、梅ったら。でも、そうね。朔也とだったらどこに行っても、きっと楽しいと思うわ」
万理は満更でもなさそうに、嬉しそうに返事をしている。
藤の気持ちが、また嫌なものに侵食されていく。モヤモヤとしたものが広がって、梅の「もちろんその時はお嬢様をどこかに誘ったり」というフレーズが引っかかった。
(もちろんってなんだよ。もちろんって…。梅の見た目からも朔也と万理はそんなに仲が良いって事なのか?)
眉間にしわを寄せて俯いていると、三吉が藤の返事を促した。
「で、どうするんだ? 藤は」
「あ、えっと。いつでもいいや」
「そうなんだ。じゃあ、急だけど明日にするか? それ以降だと確か…」
三吉が手元の紙を広げて、他の休んでいい日の確認をしようとした。
「いいよ。明日で」
「他の日もあるよ? 確認しないでいいの?」
「うん」
万理や朔也を見て、モヤモヤイライラするよりは、気分転換にちゃっちゃと休んで気晴らしした方がいいと藤は思ったのだ。
「分かった。じゃあ旦那様に報告してくる」
三吉が店の中へと入って行ったあと、藤は竹ぼうきを持ち直して、店先の掃除を始めた。
自然と出るため息。
あのまま朔也とはろくに話をしていない。
それというのも藤が拗ねたままになっていて、朔也を変に避けるようになっていたからだ。
「何でこんなことになっちゃったんだろ」
自分の事は棚に上げ、藤は愚痴をこぼしながらごみを掃く。
「よう。お疲れさん」
顔を上げるといつもの三人が手を振って、藤に近づいて来た。
「旦那様が今、休みの日を決めてるんだけど、藤はどうする?」
「休みの日って、あの月一の?」
「そ。俺はもうちょっと後でいいかなと思ってるんだけど」
三吉に言われて朔也はどうするんだろうと、ぼんやり考えていると、店の奥で万理と梅の話し声が聞こえて来た。
格別元気な梅の声はここまで丸聞こえだった。
「で、で? 朔也はお休みをいつ取るんです? もちろんその時はお嬢様をどこかに誘ったりするでしょうから、その時はもちろん承諾なさるんでしょ?」
「いやだわ、梅ったら。でも、そうね。朔也とだったらどこに行っても、きっと楽しいと思うわ」
万理は満更でもなさそうに、嬉しそうに返事をしている。
藤の気持ちが、また嫌なものに侵食されていく。モヤモヤとしたものが広がって、梅の「もちろんその時はお嬢様をどこかに誘ったり」というフレーズが引っかかった。
(もちろんってなんだよ。もちろんって…。梅の見た目からも朔也と万理はそんなに仲が良いって事なのか?)
眉間にしわを寄せて俯いていると、三吉が藤の返事を促した。
「で、どうするんだ? 藤は」
「あ、えっと。いつでもいいや」
「そうなんだ。じゃあ、急だけど明日にするか? それ以降だと確か…」
三吉が手元の紙を広げて、他の休んでいい日の確認をしようとした。
「いいよ。明日で」
「他の日もあるよ? 確認しないでいいの?」
「うん」
万理や朔也を見て、モヤモヤイライラするよりは、気分転換にちゃっちゃと休んで気晴らしした方がいいと藤は思ったのだ。
「分かった。じゃあ旦那様に報告してくる」
三吉が店の中へと入って行ったあと、藤は竹ぼうきを持ち直して、店先の掃除を始めた。
自然と出るため息。
あのまま朔也とはろくに話をしていない。
それというのも藤が拗ねたままになっていて、朔也を変に避けるようになっていたからだ。
「何でこんなことになっちゃったんだろ」
自分の事は棚に上げ、藤は愚痴をこぼしながらごみを掃く。
「よう。お疲れさん」
顔を上げるといつもの三人が手を振って、藤に近づいて来た。
10
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる