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第一章

兄さんを思って。

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そして今日、僕は再び兄さんが宿泊したホテルに大翔さんたちと一緒に泊まることになった。
日程がどうなるかが分からないので、とりあえず4人部屋を一泊だけという事で。

それぞれみんな都合があったので、チェックインした時はもう夜の8時を回っていた。
こんな遅い時間では無駄な捜索になりそうなので、とりあえずこの日は夕飯を食べた後、今までみんなが集めていた兄さんに関する情報を改めて確認して、そして一番最初にどこから探すことにしようかと話し合った。

「兄さんの手がかり、今度こそちゃんと見つかるといいな……」
「そうだな。……ホント、あいつ今頃何やってんだか。大事な弟をほっぽり出して」

「兄さん……」

兄さんのことを思い起こすと、ボロボロとまた涙が溢れだしてきてしまった。
兄さんは、僕にとって誰よりも大切な人だったから。

強くてかっこよくて、そして誰よりも僕に優しかった兄さん。
僕はそんな兄さんに憧れて、そして誰よりも兄さんの近くに居る存在であり続けたかった。
みんなには、壱琉に彼女が出来たらどうするんだ?って、いつもからかい気味に心配されていたけれど。

ポンと、肩を叩かれてハッと我に返った。

「とにかく、今日はゆっくり休もう。明日は早く出かけなきゃならないからな」
「そうだよ、志音。泣くのは壱琉を探し出してからだ。いっぱい甘えて、いっぱい怒ってやれ」

「……うん、うんそうだね。ごめんね、みんな……」

そうだ。僕だけじゃないんだ、兄さんがいなくなって淋しいと思っているのは。

「ありがとう、僕ちゃんと頑張るから」
「ああ。……じゃあもう寝ようか。ライト、消すぞ?」
「うん、お休み」
「お休み」

薄暗くなった室内に、ゴソゴソと布団をかぶる音が聞こえてくる。

明日から、頑張らないと。
きっと兄さんを探す、これが最後の旅だ。

悔いのないように。悔いのないように……。

僕はそう心に思いながら、眠りの淵へと入り込んでいった。

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