悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

父との会話

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 目下の僕の目標は、自分が以前とは変わり何事にも真面目に取り組んでいることをみんなに周知してもらうことだ。だってそうでなければエイドリアンとのことを認めてはもらえない。

 巻き戻った時はただおとなしく過ごし、平穏な人生を送れればそれでいいと思っていた。だけどエイドリアンに好きになってもらって僕もエイドリアンのことを好きだと分かったからには、彼との未来を考えたくなった。
 いま手っ取り早くできることは、今度の試験でいい成績を取ることだ。


 夕食時、いつも忙しく同じテーブルにつくことが稀な父上が、今日は一緒に食事を取っていた。厳格で口数の少ない父上だが、母上が担っている社交上の話や兄上の学園での出来事などを聞いている。

 こういう時、前の僕なら相手にされないのを苛立って何かと騒がしくしていた。今から考えたら恐ろしい。あの時の僕は本当にとんでもない馬鹿だった。
 バカからちょっと卒業した僕は、おとなしくスープを口にする。

「――ショーンは、最近は真面目に勉学に取り組んでいるようだな」

 …………。
 
 ? ……え?
 
 顔を上げると、父上が僕を見ていた。
 
 今、やっぱり僕の名前を呼んだ?

「アランから、自ら自習室に行き勉学に励んでいると聞いたのだが、違ったか?」
「……あっ、ち、違いません。エリックと一緒に勉強しています」
「エリック……」
「友人です。頭が良くて親切です」

 あああ、父上と話なんてあんまりしたことなかったから、焦ってうまく説明できない。もうちょっとエリックの人となりをしっかり説明したいのに。

「そうか、友人というものは一生の宝になる。大事にしなさい」
「は、はいっ」

 僕がしっかりと返事をした後、父上はまだ何かいいたげに僕の顔をじっと見ていたけれど、「まあ頑張りなさい」と言ってここで僕との会話は終了した。

 あああ、ドキドキした。手汗がひどいよ。

 でも、こんなふうに父上が僕に目をむけてくれたのは初めてかもしれない。

 兄上に視線を向けるとパチッと目が合った。兄上は僕を見ながら口角を少し上げ、それからまたナイフを動かし始めた。
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