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第一章
交流会始まる
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会場内に入ると、すぐにフローラ嬢を伴ったエリックがやってきた。
「皆さん素敵ですね、圧巻です」
「それを言うならエリックだって、すごく恰好いいよ! フローラ嬢もすごくかわいいね」
彼女のドレスは淡いピンクに小花の刺繍が施されたシンプルでかわいらしいものだ。だけどそれがフローラ嬢にすごく似合っていて、彼女の愛らしさを引き立てている。
「ありがとうございます」
照れて頬を染めるフローラ嬢がかわいい。
「おっ、そろそろ始まるみたいだぞ」
生徒会長のマクシミリアン殿下が壇上に向かうのを見て、会場内が静かになった。
殿下は壇上に立ち、簡単なあいさつを述べる。それからみんな楽しむようにと言い、片手をあげると曲が流れ始めた。
最初のダンスは上級生が主だ。僕らは食事を楽しもうと移動した。
「何か飲むかい?」
「僕はまず食事がしたいです」
「そうかじゃあ、まずは牛と魚のパテをどうぞ」
「あ、ありがとうございます。ていうか、そういうことは僕がします」
慌てて手を出すが、エイドリアンはさっとその手を避けるようにすっと皿を上にあげた。
「俺がやりたくてしてるんだ気にするな。それにほら、見てみろよ。みんな同じようなものだ。無礼講な今日は、無粋なことを気にする人は誰もいないぞ」
エイドリアンに言われて辺りを見回してみたら、なるほど、奥の方で公爵家の嫡男が伯爵家の次男に給仕してやっている。みんな好き勝手に楽しそうだ。
ついでに視界にブライアンとジェイミーまで入ってきて、少し微妙な気持ちになった。彼らの隣には相変わらずトーマスやキースがいる。いつもと違うのは、彼らの横にパートナーがいるということくらいだ。
そう言えばトーマスはジェイミーよりも苦手だった。彼はジェイミーとブライアンに心酔しているようで、直接関係ないくせに僕を敵視していた。
「よそ見しないで食べなよ。うまいぞ」
「は、はい」
エイドリアンに促されてパクッと口に入れる。
おお、うまい。
自然と顔がほころんだんだろう。僕の顔を見て、エイドリアンが微笑んだ。
「そういえばショーンは引き込もらされてたって言っていたけれど、ダンスは習っていたのかい?」
「はい、いずれ必要になった時のためにと言われて、リードする側とされる側の両方を習いました。でも僕は次男だから、7割方される側の方を習いましたけどね」
「そうか。嫡男以外の男性は、こういうところも苦労するんだな」
嫡男は跡取りなので娶る側にしかならないけれど、次男以降は違う。娶られる側のほうが多いのが現実だろう。運が悪いと一生独身もあり得るんだ。
エイドリアンは話をしながらも、手際よくひょいひょいとお皿にサラダと肉団子を乗せて僕に渡した。
なんだか餌付けをされている気分だ。僕は笑って遠慮なく、いただくことにした。
あ~、美味しい。
ん?
何げなく振り返ると、ブライアンがこちらを見ていて目があった。
僕と目が合うとブライアンは一瞬固まって。だけどすぐに微笑んで軽く会釈をしたようなそぶりを見せ視線を外した。
「こら、よそ見禁止」
「し、してませんよ」
なんとなくブライアンと目があったことを後ろめたく思ってしまい、ちょうど運ばれてきたプリンを2人分取り、エイドリアンの皿にもポンとのっけた。
「いい具合にごまかしたな」
「ごまかしてなんかいませんよ」
ブライアンは僕の変化に戸惑って気になるだけだろうし。僕はもう吹っ切っている。
だからエイドリアンが気にすることなんて何もないのは事実だ。
会場内に流れていた曲が終わった。また次の曲に移り変わるのかと思ったら、そのままだ。
「あ、上級生が引けて行く。どうやら今度は下級生の番のようだな」
「そのようですね」
ちょうどプリンを食べ終わった僕を横目で見たエイドリアンが手を差し伸べた。
「それではショーン、俺と踊ってくれますか?」
僕の目をじっと見てエイドリアンが柔らかく微笑む。ちょっぴり大人っぽくて色っぽいその微笑みに、心臓がとくんと跳ねた。
「よ、よろしくお願いします」
僕の顔はきっと、赤くなっているはずだ。
「皆さん素敵ですね、圧巻です」
「それを言うならエリックだって、すごく恰好いいよ! フローラ嬢もすごくかわいいね」
彼女のドレスは淡いピンクに小花の刺繍が施されたシンプルでかわいらしいものだ。だけどそれがフローラ嬢にすごく似合っていて、彼女の愛らしさを引き立てている。
「ありがとうございます」
照れて頬を染めるフローラ嬢がかわいい。
「おっ、そろそろ始まるみたいだぞ」
生徒会長のマクシミリアン殿下が壇上に向かうのを見て、会場内が静かになった。
殿下は壇上に立ち、簡単なあいさつを述べる。それからみんな楽しむようにと言い、片手をあげると曲が流れ始めた。
最初のダンスは上級生が主だ。僕らは食事を楽しもうと移動した。
「何か飲むかい?」
「僕はまず食事がしたいです」
「そうかじゃあ、まずは牛と魚のパテをどうぞ」
「あ、ありがとうございます。ていうか、そういうことは僕がします」
慌てて手を出すが、エイドリアンはさっとその手を避けるようにすっと皿を上にあげた。
「俺がやりたくてしてるんだ気にするな。それにほら、見てみろよ。みんな同じようなものだ。無礼講な今日は、無粋なことを気にする人は誰もいないぞ」
エイドリアンに言われて辺りを見回してみたら、なるほど、奥の方で公爵家の嫡男が伯爵家の次男に給仕してやっている。みんな好き勝手に楽しそうだ。
ついでに視界にブライアンとジェイミーまで入ってきて、少し微妙な気持ちになった。彼らの隣には相変わらずトーマスやキースがいる。いつもと違うのは、彼らの横にパートナーがいるということくらいだ。
そう言えばトーマスはジェイミーよりも苦手だった。彼はジェイミーとブライアンに心酔しているようで、直接関係ないくせに僕を敵視していた。
「よそ見しないで食べなよ。うまいぞ」
「は、はい」
エイドリアンに促されてパクッと口に入れる。
おお、うまい。
自然と顔がほころんだんだろう。僕の顔を見て、エイドリアンが微笑んだ。
「そういえばショーンは引き込もらされてたって言っていたけれど、ダンスは習っていたのかい?」
「はい、いずれ必要になった時のためにと言われて、リードする側とされる側の両方を習いました。でも僕は次男だから、7割方される側の方を習いましたけどね」
「そうか。嫡男以外の男性は、こういうところも苦労するんだな」
嫡男は跡取りなので娶る側にしかならないけれど、次男以降は違う。娶られる側のほうが多いのが現実だろう。運が悪いと一生独身もあり得るんだ。
エイドリアンは話をしながらも、手際よくひょいひょいとお皿にサラダと肉団子を乗せて僕に渡した。
なんだか餌付けをされている気分だ。僕は笑って遠慮なく、いただくことにした。
あ~、美味しい。
ん?
何げなく振り返ると、ブライアンがこちらを見ていて目があった。
僕と目が合うとブライアンは一瞬固まって。だけどすぐに微笑んで軽く会釈をしたようなそぶりを見せ視線を外した。
「こら、よそ見禁止」
「し、してませんよ」
なんとなくブライアンと目があったことを後ろめたく思ってしまい、ちょうど運ばれてきたプリンを2人分取り、エイドリアンの皿にもポンとのっけた。
「いい具合にごまかしたな」
「ごまかしてなんかいませんよ」
ブライアンは僕の変化に戸惑って気になるだけだろうし。僕はもう吹っ切っている。
だからエイドリアンが気にすることなんて何もないのは事実だ。
会場内に流れていた曲が終わった。また次の曲に移り変わるのかと思ったら、そのままだ。
「あ、上級生が引けて行く。どうやら今度は下級生の番のようだな」
「そのようですね」
ちょうどプリンを食べ終わった僕を横目で見たエイドリアンが手を差し伸べた。
「それではショーン、俺と踊ってくれますか?」
僕の目をじっと見てエイドリアンが柔らかく微笑む。ちょっぴり大人っぽくて色っぽいその微笑みに、心臓がとくんと跳ねた。
「よ、よろしくお願いします」
僕の顔はきっと、赤くなっているはずだ。
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