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第一章

余計なことは考えなくていいよ

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「ブライアンは、君のことを避けていたような気がしたんだが」
 ポスター貼りを手伝うと言いながら、僕の代わりにさっさと貼り終えたエイドリアンが、解せないという表情で僕に尋ねた。

「そうなんですよね。正直今までの僕のブライアンに対する態度は褒められたことではなかったから、こないだ謝ったんですよ。それでもう接点なんて持たないと思ったのに声をかけられて、僕も正直戸惑いました」
「そうか……」

「性格の良いブライアンの事だから、僕が謝ったことで、今までのことは水に流して関係を良くしなきゃとか思っちゃったんでしょうかね」
「さあなー」

 自習室の前に来たところで、エイドリアンが足を止めた。

「ともあれ、ショーン。ブライアンの事はもう吹っ切れたんだろ? だったら余計なことは考えなくていいさ」
「……あっ、そうですよね」
 エイドリアンに指摘されて、なんだか肩の荷が下りた気がした。それにブライアンのそばに居るジェイミーとは、特に関わり合いにならない方がいいに決まっている。

「エイドリアンの言う通り、もう気にしないことにします」
「それがいい」

 自習室の扉を開けて中に入った。僕らに気がついたエリックが、パッと席を立った。

「遅かったですね。やっぱり僕も手伝った方が良かったでしょうか?」
「ああ、いや違うんだ。ちょっとブライアンとジェイミーと……」
「えっ? 絡まれたんですか? すみません。僕もやっぱり行くべきでした」
「いや、そんなひどいことじゃなかったんだよ。どういうわけかブライアンが手伝ってくれて、ジェイミーに食って掛かられて。まあ、大したことではなかったよ」

「ブライアン様が手伝ってくださったんですか?」
「うん」
 エリックが目を瞬いた。
 驚いている。まあ気持ちはわかるよ。

「さっ、そんなことより勉強するんだろう? わからないとこあるやついるか?」

 エイドリアンの問いかけに、エリックとフローラ嬢は「大丈夫です」と言った。僕はすぐに引っかかったので、恐る恐る手を上げてエイドリアンに教えてもらうことにした。


 うん、おかげで僕の頭は、きっと以前より良くなっている。
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