悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

いいの?

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 死に戻ってからの僕のモットーは、慎重に生きるということだ。
 諍いを避ける、不快な思いをさせない、執着しない。そして君子危うきに近づかずだ。
 平穏な未来を築くための僕なりの努力だ。

 だから友達になりたいと思ったエリックにも、できるだけ慎重に近づいた。人はよく知りもしない相手からグイグイ来られると多分引くだろう。僕もそうだ。
 なので嫌がられない程度に距離を詰めながら、時間をかけて親しくなるのだ。


 だからランチも、3日に一度ぐらいの頻度で誘っている。
 今日はひとりの日だな。昨日誘ったし、毎回毎回で嫌がられても困るし。

 ため息をついて席を立った。本当は一人は嫌いだから。

「ショーン様!」
 呼ばれて振り返ると、エリックが立っていた。

「あの、ずうずうしいかもしれませんけど、これからもランチをご一緒させてもらえませんか?」
「えっ? いいの?」
 思わず食い気味に言ってしまって慌てて口をふさいだ。

「もちろんです。一人で食べるよりも、ショーン様と食べる方がずっとずっと楽しいです」
「本当? よかった。迷惑なんじゃないかって、ずっとそれが気になってたんだ」
「そんなことないですよ」
「……ならよかった。僕のそばに居ると鬱陶しい視線が飛んでくるだろう?」

「そんなものは気にしませんよ。何も悪いことをしているわけではないので、人の視線なんて気にする必要ないですし。それに僕は他人の意見に左右されない方なんで」

 エリックはサバサバとした笑顔だ。線の細さとは対称な、男らしい発言に感服した。
 
 
 学生専用のカフェはたいそう混んでいた。カフェ自体は広くて席もたくさんあるのだけど、さすがに全校生徒が入れるほどの規模ではない。あぶれたものたちはボックスに入れてもらって、各々校庭や教室でお昼を楽しむことになる。
 
「あっ、あの奥の席空いてますよ」
「えっ? ああ、あそこか。誰かに先を越されたら困るな。僕が2人分取りに行ってくるから、エリックはあそこの席で待っていてよ」

「えっ? 取りに行くんなら僕が行きますよ」
「いいからいいから、頼んだよ」
 僕は有無を言わせず、さっさとランチを取りに向かった。
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