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プロローグ(前編)

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 雪のひどい夜、僕は一人で歩いていた。誰も僕を愛してくれる者は居ない。父上も母上も侍従たちも、みんな兄上に夢中で僕に注意を向ける者など誰もいなかった。

 だからほんの気まぐれだった。
 前から歩いてくるみすぼらしい老人をみんなが避けて通る。ふらふらと倒れてもみんな素知らぬふりだ。
 ウケる。僕よりも嫌われてるじゃないか。

 ポケットに手を突っ込むと、銀貨が一枚入っていた。これがあれば温かい宿に泊まって、体力を回復することができるだろう。そうすれば、運が良ければ仕事も探すことができるかもしれない。

 僕が近寄ると、老人は驚きに目を見開いた。

「やる」
 ぞんざいにそう言って、老人の手に銀貨を握らせた。

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