無自覚美少年の男子校ライフ♪

くるむ

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無自覚美少年の男子校ライフ♪

ささやかな恋人の時間

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「蓮! 後半はお前が進行するんだろ」

先輩の腕の中ですっかり落ち着いていたら、頭上から声が降ってきてびっくりした。
慌てて飛びのこうとしたのだけど、先輩の腕がそれを許さなかった。
あわあわしている僕をよそに、蓮先輩は僕の髪を撫でながら、動揺するでもなくそれに応えている。

「ああ、そのつもりだ。世話かけたな、侑生」
「いや、別に。……随分懐いているな。どうやら噂は本当なんだな」
「なんだよ。疑ってたのか?」

ええと、何だろこの会話。この2人の関係って…。

「いや、そういうことじゃなくて。中田君が転入してきた当初、かなりお前に引いていただろ。偶然見かけて迷惑してるなあと思ってたからさ」

ふえっ?

「確かに。あの頃は伸之助、俺の事を変な奴だと思っていただろ」

そう言いながら先輩が腕の力を抜いて、僕の顔を覗き込んで来た。

「ええっと、あの…」

確かにそう思っていたけれど、まさか『はい、そうです』とは言えなくて、僕は微妙に視線をずらしてごまかした。そんな僕の態度に副会長は楽しそうに笑い出す。

「れーん、やっぱりお前のあの過剰なスキンシップは、常人には変態にしか映らないんだよ」

変態、変態と副会長は鼻歌混じりに歌いだす。
がっちりとした体格に真面目そうな風貌から想像もつかないラフな雰囲気に、僕は目を瞬かせる。

…なんか執行部の面々って、ちょっと変わってる?

そんな事を考えながらポケーッと副会長を見ていたら、ぱちりと目が合った。

「さて、そろそろ動かなきゃな。きみは動けるか?」
「あ、は、はいっ」

そうだった。もうそろそろみんなが来る時間だ。
こんな状態を皆に見られたら、やっかみやらなんやらで色々大変だ。

先輩から離れて立ち上がろうとしたのに、なぜか又引き寄せられてしまう。

「先輩?」

顔を上げて先輩を見ると、なんだか不服そうだ。又、ギュウッと抱きしめられて心臓がキュンとする。

「…しばらくの辛抱だな」
ぽつりと呟く先輩がなんだか苦しそうで、僕は先輩の背中に腕を回してそっと擦ってみる。
そんなたどたどしい僕の動作に先輩はちょっと笑って体を離した。

「侑生」
「なんだ」
「お前、先に行ってろ」
「…了解」

短い言葉を副会長と交わした先輩は、僕の頬に手を当てて、ゆっくりと顔を近づけてきた。

今度は一瞬だけの、触れるだけのキス。
目を瞬かせる僕に、にっこりと笑った。


「さあ、行こうか。そろそろ出場者は着替えに入る時間だ」


その顔は、既に生徒会長のそれに切り変わっていた。 
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