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無自覚美少年の男子校ライフ♪
コンテスト前日
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帰り支度をしながら蓮先輩の姿を思い浮かべる。
…会いたいなーと思いながら、来てくれるかなーと窓の方を見ていると、願いが通じたのか先輩が顔を覘かせた。
「先輩!」
思わずガタッと立ち上がって、先輩の元へ駆け寄る。
先輩はそんな僕に、嬉しそうに笑ってくれた。
「明日の準備に切羽詰まってるから、あまり時間は取れないんだけど、伸之助の顔が見たくてさ」
「…僕も、僕も先輩の顔が見たいって思ってました」
「そうか、良かった。…ちょっと前に伸之助、様子が変だっただろ? 忙しくて聞きそびれてたけど、大丈夫なのかなって気になってもいたんだ」
「先輩…」
やっぱり気づかれてたよね。
僕の勝手な嫉妬や妬みで、先輩に心配させちゃってたんだな…。と改めて思って反省。
だけどこの気持ちをまだ治める事ができてない僕は、言葉に出来ない代わりに先輩のシャツをキュッとつかんだ。
…ああ、もう。まるで女の子みたいな思考じゃないか。
そんな自分にちょっと引くけど、でも好きだって気持ちは止められないから、受け入れるしか仕方無いよね。
「…明日が済んだら、しばらくはそれほど忙しくないから、もっと一緒の時間が取れるな」
「あ、はい…」
そんな僕の葛藤に気づいてくれたのか、あえてそれには触れずに優しく微笑んでくれた。
え、笑顔が眩しすぎる…。王子様スマイル全開で、直視できない…。
「んっ、んー」
わざとらしく咳払いをされてびっくりして顔を上げると、候がニヤニヤと浩太が半目で僕らを見ていた。
「さて、そろそろ行くかな。のんびりしてると侑生にどやされるし」
「侑生…?」
なんだか親しげな口調にちょっぴりモヤッとして、つい聞き直してしまった。
「副会長の高田侑生だ。俺なんかよりずっと真面目な堅物君だよ」
「そう、なんですか」
う~。どんな人なんだろ。なんだかんだ言って先輩が頼りにしてる存在とか…?
「あー、もう。かーわいいなあ、伸之助」
突然腕を引き寄せられたかと思ったら、きゅうっと抱きしめられた。
「あ!? え、ややや…っ」
僕の髪に顔をうずめて、静かに腕の力を強くする。呼吸がままならないほど心臓がバクバクするけど、振りほどこうなんて、そんな考えにはどうしてもなれない。
甘えるように蓮先輩の背中に腕を回し、しがみ付いた。
…一分くらいはそのままでいてくれただろうか。
蓮先輩の腕が緩まって、体の拘束が解かれていく。
「それじゃあ、また明日な」
「…はい」
名残惜しそうに腕をなぞり、指先まで伝って…。
そして先輩は手を上げて、行ってしまった。
「伸之助!」
呼ばれて顔を向けると、荷物がいきなり飛んできた。慌てて腕を出し、受け止める。
あ、僕の荷物。
「帰るぞ」
「あ、う、うん」
廊下に出てきた浩太たちの隣に並ぶ。いつもなら候の部室とは逆方向なのでその場で別れるのだが、今日は候も並んで歩き出した。
「あれ? 候は今日、部活は?」
「うん、俺らは今日は休み。部長が明日の美少女コンテストに無理やり出場させられたみたいで、テンションダダ下がりなんだよ。で、今日は休みだってさ」
「…気持ちは分からなくはないけど、そんなんで休みになるの?」
「うん。うちの部、結構緩いみたいだ」
「へえ…」
他愛のない話をしながら歩いていると、校門に向かう途中で木村先輩にばったり会った。
あ…。
一瞬、びっくりして僕ら三人は固まったけど、木村先輩の方は「おや」という顔をして、片手を上げてそのまま僕らを追い抜いて行った。
あ、あれ?
皆に危ない気を付けろと言われ続けたから、身構えてしまったけど、実際のところ木村先輩の方は僕の事なんて気にもなっていないようだった。
「なんだ…」
思わず言葉が漏れた。とんだ自意識過剰だったな。
やれやれと思いながら隣を見ると、二人とも安堵の表情をしていた。
とりあえず、これで面倒なことは明日のコンテストだけだ。
僕はため息を吐きながら…。
それでもこっそりと、蓮先輩の王子様姿を密かに楽しみにしていた。
…会いたいなーと思いながら、来てくれるかなーと窓の方を見ていると、願いが通じたのか先輩が顔を覘かせた。
「先輩!」
思わずガタッと立ち上がって、先輩の元へ駆け寄る。
先輩はそんな僕に、嬉しそうに笑ってくれた。
「明日の準備に切羽詰まってるから、あまり時間は取れないんだけど、伸之助の顔が見たくてさ」
「…僕も、僕も先輩の顔が見たいって思ってました」
「そうか、良かった。…ちょっと前に伸之助、様子が変だっただろ? 忙しくて聞きそびれてたけど、大丈夫なのかなって気になってもいたんだ」
「先輩…」
やっぱり気づかれてたよね。
僕の勝手な嫉妬や妬みで、先輩に心配させちゃってたんだな…。と改めて思って反省。
だけどこの気持ちをまだ治める事ができてない僕は、言葉に出来ない代わりに先輩のシャツをキュッとつかんだ。
…ああ、もう。まるで女の子みたいな思考じゃないか。
そんな自分にちょっと引くけど、でも好きだって気持ちは止められないから、受け入れるしか仕方無いよね。
「…明日が済んだら、しばらくはそれほど忙しくないから、もっと一緒の時間が取れるな」
「あ、はい…」
そんな僕の葛藤に気づいてくれたのか、あえてそれには触れずに優しく微笑んでくれた。
え、笑顔が眩しすぎる…。王子様スマイル全開で、直視できない…。
「んっ、んー」
わざとらしく咳払いをされてびっくりして顔を上げると、候がニヤニヤと浩太が半目で僕らを見ていた。
「さて、そろそろ行くかな。のんびりしてると侑生にどやされるし」
「侑生…?」
なんだか親しげな口調にちょっぴりモヤッとして、つい聞き直してしまった。
「副会長の高田侑生だ。俺なんかよりずっと真面目な堅物君だよ」
「そう、なんですか」
う~。どんな人なんだろ。なんだかんだ言って先輩が頼りにしてる存在とか…?
「あー、もう。かーわいいなあ、伸之助」
突然腕を引き寄せられたかと思ったら、きゅうっと抱きしめられた。
「あ!? え、ややや…っ」
僕の髪に顔をうずめて、静かに腕の力を強くする。呼吸がままならないほど心臓がバクバクするけど、振りほどこうなんて、そんな考えにはどうしてもなれない。
甘えるように蓮先輩の背中に腕を回し、しがみ付いた。
…一分くらいはそのままでいてくれただろうか。
蓮先輩の腕が緩まって、体の拘束が解かれていく。
「それじゃあ、また明日な」
「…はい」
名残惜しそうに腕をなぞり、指先まで伝って…。
そして先輩は手を上げて、行ってしまった。
「伸之助!」
呼ばれて顔を向けると、荷物がいきなり飛んできた。慌てて腕を出し、受け止める。
あ、僕の荷物。
「帰るぞ」
「あ、う、うん」
廊下に出てきた浩太たちの隣に並ぶ。いつもなら候の部室とは逆方向なのでその場で別れるのだが、今日は候も並んで歩き出した。
「あれ? 候は今日、部活は?」
「うん、俺らは今日は休み。部長が明日の美少女コンテストに無理やり出場させられたみたいで、テンションダダ下がりなんだよ。で、今日は休みだってさ」
「…気持ちは分からなくはないけど、そんなんで休みになるの?」
「うん。うちの部、結構緩いみたいだ」
「へえ…」
他愛のない話をしながら歩いていると、校門に向かう途中で木村先輩にばったり会った。
あ…。
一瞬、びっくりして僕ら三人は固まったけど、木村先輩の方は「おや」という顔をして、片手を上げてそのまま僕らを追い抜いて行った。
あ、あれ?
皆に危ない気を付けろと言われ続けたから、身構えてしまったけど、実際のところ木村先輩の方は僕の事なんて気にもなっていないようだった。
「なんだ…」
思わず言葉が漏れた。とんだ自意識過剰だったな。
やれやれと思いながら隣を見ると、二人とも安堵の表情をしていた。
とりあえず、これで面倒なことは明日のコンテストだけだ。
僕はため息を吐きながら…。
それでもこっそりと、蓮先輩の王子様姿を密かに楽しみにしていた。
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