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無自覚美少年の男子校ライフ♪

木村先輩の正体

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全ての授業が終わった後、僕ら外部生7人はそろって補講を済ませた。候はバスケ部に入っているので、荷物を大急ぎでまとめている。

「ねえ、候。ちょっとだけいいかな」
「何? 急いでるんだけど」

急いでいる様子は僕にもちゃんと分かっているので、人に聞かれないように気を付けながら、小声で単刀直入に質問した。

「何で学食で、香月先輩と僕が付き合ってるって嘘に乗っかったの?」

僕の問いかけに候は一瞬、片付けの手を止めた。そしてきょろきょろと辺りを見回し、誰もこちらを気にかけてない事を確かめて、僕よりも更に小声でささやいた。

「ヤバいんだよ。木村先輩って」
「ヤバい…?」
「ヤバいって何が」

先ほどまで傍で黙って聞いていた浩太まで、身を乗り出してきた。

「木村先輩ってさ、去年の暮れごろに、トイレで強姦未遂起こしたらしいんだよ」
「ご…っ!?」
「しぃー!」

僕は慌てて自分の口を塞いだ。隣では浩太もびっくりして顔を強ばらせている。

「だからさ、あの木村先輩には、伸之助が会長と付き合ってるって思わせておいた方が、お前の為になると思ったんだよ。会長ってちょっとなんていうか、アレだけど、でも絶対に変な事だけはしない人だって保障できるし、色んな意味で頼りになるからさ」

「でも変じゃないか。いくら未遂でも強姦しようとしたんだろ? それなのになんで木村先輩は退学処分になってないんだよ」

浩太が疑問に思ったことは、僕も感じた疑問だった。女じゃないから問題にならなかったって事なのか? だとしたらかなり問題だと思う。
(今度伯父さんに抗議しなくちゃだよ!)

「いや、それがさ。被害を受けた本人が、当時助けに入った人たちに誰にも言わないでくれって頼んだらしいんだよ。親や周りの友人たちに、自分が犯されそうになっただなんて絶対に知られたくないって言ってさ」

「それは…」

その気持ちは確かに分からなくもない。未遂って言ったってどこまでが未遂なのかも分からないし…。

「で、その被害を受けた人はどうなったの?」

「うん。結局は新学期前に転校して行ったらしい。やっぱ、木村先輩と顔を合わせ続ける事に耐えられなかったんだろうな」

「そっか。でもなんかモヤモヤする結末だな。だって加害者はこうして、のうのうとココに通い続けてるんだろ?」
「まあな」

あらかた話を終えたところで、候は荷物を肩にかける。僕らもスクバを手に持ち廊下に出る。

「ねえ、でもなんで候がそのコト知ってんの? 被害を受けた人は自分の事知られたくなかったんだよね? もう学校にも知られてるって事?」

「いや。知られてないよ。俺もその人の名前は聞いてないし」
「じゃあなんで知ってるんだ?」

「…木村先輩ってさ、見た目は良いじゃん」
「そうだね」

学食で声をかけられた時の印象を思い出してみた。確かに木村先輩を、僕もカッコいいと思った。男らしい精悍な感じがしたんだよな。

「俺たちと同じ外部生の鈴木って奴がさ、木村先輩の事をカッコイイと思ってて憧れてるって話してたんだよ。それを聞いた部の先輩がさ、こういうやつだからうかつに近寄るなって忠告したんだ。ま、俺はたまたま傍にいて聞いたってわけ」
「ふうん…。木村先輩に憧れて…かぁ」

「ま、そいつはゲイらしいから」

「え!?」
「まあ、いろんな奴がいるさ」

「あ、うん。そうだね」

そうだよね。確かに色んな人がいるよね。
僕は男同士っていうのに、免疫が無かったからいろいろびっくりしすぎちゃったけど。

ふと、学食での香月先輩を思い出してしまった。
ぞわぞわするほどの恐ろしい色気。そして僕の唇を親指で……。

うわっ!
顔が一気に熱くなった!それと同時にぞくぞく、ぞわぞわ。
暑いのか寒いのかさっぱりわからない。
気持ち悪いと思うと同時に、変に居た堪れなくて焦れるような気持ち…。

「帰るぞ。送る」
「え!?」

顔を上げると冷たく無表情な顔で浩太が見ていた。

「えっ、あっ」
きょろきょろと辺りを見回すが、既に候の姿はなかった。

「候なら部活だ。ホラ、帰るぞ」
「あ、うん」

大股で歩きはじめる浩太に駆け足で近寄る。

「赤い顔して何考えてたんだか……」
「え?」

小さな声でボソボソと呟かれ、はっきりとは聞こえなかった。

「何でも無い」

足を止めずに答える浩太に、僕も大股で近寄って歩を並べた。
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