5 / 48
無自覚美少年の男子校ライフ♪
木村先輩の正体
しおりを挟む
全ての授業が終わった後、僕ら外部生7人はそろって補講を済ませた。候はバスケ部に入っているので、荷物を大急ぎでまとめている。
「ねえ、候。ちょっとだけいいかな」
「何? 急いでるんだけど」
急いでいる様子は僕にもちゃんと分かっているので、人に聞かれないように気を付けながら、小声で単刀直入に質問した。
「何で学食で、香月先輩と僕が付き合ってるって嘘に乗っかったの?」
僕の問いかけに候は一瞬、片付けの手を止めた。そしてきょろきょろと辺りを見回し、誰もこちらを気にかけてない事を確かめて、僕よりも更に小声でささやいた。
「ヤバいんだよ。木村先輩って」
「ヤバい…?」
「ヤバいって何が」
先ほどまで傍で黙って聞いていた浩太まで、身を乗り出してきた。
「木村先輩ってさ、去年の暮れごろに、トイレで強姦未遂起こしたらしいんだよ」
「ご…っ!?」
「しぃー!」
僕は慌てて自分の口を塞いだ。隣では浩太もびっくりして顔を強ばらせている。
「だからさ、あの木村先輩には、伸之助が会長と付き合ってるって思わせておいた方が、お前の為になると思ったんだよ。会長ってちょっとなんていうか、アレだけど、でも絶対に変な事だけはしない人だって保障できるし、色んな意味で頼りになるからさ」
「でも変じゃないか。いくら未遂でも強姦しようとしたんだろ? それなのになんで木村先輩は退学処分になってないんだよ」
浩太が疑問に思ったことは、僕も感じた疑問だった。女じゃないから問題にならなかったって事なのか? だとしたらかなり問題だと思う。
(今度伯父さんに抗議しなくちゃだよ!)
「いや、それがさ。被害を受けた本人が、当時助けに入った人たちに誰にも言わないでくれって頼んだらしいんだよ。親や周りの友人たちに、自分が犯されそうになっただなんて絶対に知られたくないって言ってさ」
「それは…」
その気持ちは確かに分からなくもない。未遂って言ったってどこまでが未遂なのかも分からないし…。
「で、その被害を受けた人はどうなったの?」
「うん。結局は新学期前に転校して行ったらしい。やっぱ、木村先輩と顔を合わせ続ける事に耐えられなかったんだろうな」
「そっか。でもなんかモヤモヤする結末だな。だって加害者はこうして、のうのうとココに通い続けてるんだろ?」
「まあな」
あらかた話を終えたところで、候は荷物を肩にかける。僕らもスクバを手に持ち廊下に出る。
「ねえ、でもなんで候がそのコト知ってんの? 被害を受けた人は自分の事知られたくなかったんだよね? もう学校にも知られてるって事?」
「いや。知られてないよ。俺もその人の名前は聞いてないし」
「じゃあなんで知ってるんだ?」
「…木村先輩ってさ、見た目は良いじゃん」
「そうだね」
学食で声をかけられた時の印象を思い出してみた。確かに木村先輩を、僕もカッコいいと思った。男らしい精悍な感じがしたんだよな。
「俺たちと同じ外部生の鈴木って奴がさ、木村先輩の事をカッコイイと思ってて憧れてるって話してたんだよ。それを聞いた部の先輩がさ、こういうやつだからうかつに近寄るなって忠告したんだ。ま、俺はたまたま傍にいて聞いたってわけ」
「ふうん…。木村先輩に憧れて…かぁ」
「ま、そいつはゲイらしいから」
「え!?」
「まあ、いろんな奴がいるさ」
「あ、うん。そうだね」
そうだよね。確かに色んな人がいるよね。
僕は男同士っていうのに、免疫が無かったからいろいろびっくりしすぎちゃったけど。
ふと、学食での香月先輩を思い出してしまった。
ぞわぞわするほどの恐ろしい色気。そして僕の唇を親指で……。
うわっ!
顔が一気に熱くなった!それと同時にぞくぞく、ぞわぞわ。
暑いのか寒いのかさっぱりわからない。
気持ち悪いと思うと同時に、変に居た堪れなくて焦れるような気持ち…。
「帰るぞ。送る」
「え!?」
顔を上げると冷たく無表情な顔で浩太が見ていた。
「えっ、あっ」
きょろきょろと辺りを見回すが、既に候の姿はなかった。
「候なら部活だ。ホラ、帰るぞ」
「あ、うん」
大股で歩きはじめる浩太に駆け足で近寄る。
「赤い顔して何考えてたんだか……」
「え?」
小さな声でボソボソと呟かれ、はっきりとは聞こえなかった。
「何でも無い」
足を止めずに答える浩太に、僕も大股で近寄って歩を並べた。
「ねえ、候。ちょっとだけいいかな」
「何? 急いでるんだけど」
急いでいる様子は僕にもちゃんと分かっているので、人に聞かれないように気を付けながら、小声で単刀直入に質問した。
「何で学食で、香月先輩と僕が付き合ってるって嘘に乗っかったの?」
僕の問いかけに候は一瞬、片付けの手を止めた。そしてきょろきょろと辺りを見回し、誰もこちらを気にかけてない事を確かめて、僕よりも更に小声でささやいた。
「ヤバいんだよ。木村先輩って」
「ヤバい…?」
「ヤバいって何が」
先ほどまで傍で黙って聞いていた浩太まで、身を乗り出してきた。
「木村先輩ってさ、去年の暮れごろに、トイレで強姦未遂起こしたらしいんだよ」
「ご…っ!?」
「しぃー!」
僕は慌てて自分の口を塞いだ。隣では浩太もびっくりして顔を強ばらせている。
「だからさ、あの木村先輩には、伸之助が会長と付き合ってるって思わせておいた方が、お前の為になると思ったんだよ。会長ってちょっとなんていうか、アレだけど、でも絶対に変な事だけはしない人だって保障できるし、色んな意味で頼りになるからさ」
「でも変じゃないか。いくら未遂でも強姦しようとしたんだろ? それなのになんで木村先輩は退学処分になってないんだよ」
浩太が疑問に思ったことは、僕も感じた疑問だった。女じゃないから問題にならなかったって事なのか? だとしたらかなり問題だと思う。
(今度伯父さんに抗議しなくちゃだよ!)
「いや、それがさ。被害を受けた本人が、当時助けに入った人たちに誰にも言わないでくれって頼んだらしいんだよ。親や周りの友人たちに、自分が犯されそうになっただなんて絶対に知られたくないって言ってさ」
「それは…」
その気持ちは確かに分からなくもない。未遂って言ったってどこまでが未遂なのかも分からないし…。
「で、その被害を受けた人はどうなったの?」
「うん。結局は新学期前に転校して行ったらしい。やっぱ、木村先輩と顔を合わせ続ける事に耐えられなかったんだろうな」
「そっか。でもなんかモヤモヤする結末だな。だって加害者はこうして、のうのうとココに通い続けてるんだろ?」
「まあな」
あらかた話を終えたところで、候は荷物を肩にかける。僕らもスクバを手に持ち廊下に出る。
「ねえ、でもなんで候がそのコト知ってんの? 被害を受けた人は自分の事知られたくなかったんだよね? もう学校にも知られてるって事?」
「いや。知られてないよ。俺もその人の名前は聞いてないし」
「じゃあなんで知ってるんだ?」
「…木村先輩ってさ、見た目は良いじゃん」
「そうだね」
学食で声をかけられた時の印象を思い出してみた。確かに木村先輩を、僕もカッコいいと思った。男らしい精悍な感じがしたんだよな。
「俺たちと同じ外部生の鈴木って奴がさ、木村先輩の事をカッコイイと思ってて憧れてるって話してたんだよ。それを聞いた部の先輩がさ、こういうやつだからうかつに近寄るなって忠告したんだ。ま、俺はたまたま傍にいて聞いたってわけ」
「ふうん…。木村先輩に憧れて…かぁ」
「ま、そいつはゲイらしいから」
「え!?」
「まあ、いろんな奴がいるさ」
「あ、うん。そうだね」
そうだよね。確かに色んな人がいるよね。
僕は男同士っていうのに、免疫が無かったからいろいろびっくりしすぎちゃったけど。
ふと、学食での香月先輩を思い出してしまった。
ぞわぞわするほどの恐ろしい色気。そして僕の唇を親指で……。
うわっ!
顔が一気に熱くなった!それと同時にぞくぞく、ぞわぞわ。
暑いのか寒いのかさっぱりわからない。
気持ち悪いと思うと同時に、変に居た堪れなくて焦れるような気持ち…。
「帰るぞ。送る」
「え!?」
顔を上げると冷たく無表情な顔で浩太が見ていた。
「えっ、あっ」
きょろきょろと辺りを見回すが、既に候の姿はなかった。
「候なら部活だ。ホラ、帰るぞ」
「あ、うん」
大股で歩きはじめる浩太に駆け足で近寄る。
「赤い顔して何考えてたんだか……」
「え?」
小さな声でボソボソと呟かれ、はっきりとは聞こえなかった。
「何でも無い」
足を止めずに答える浩太に、僕も大股で近寄って歩を並べた。
17
お気に入りに追加
694
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる