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無自覚美少年の男子校ライフ♪

生徒会長の恋人

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すると浩太がズイッと前に出てきて、僕から木村先輩と香月先輩を遮るように前に立ちはだかった。
その行動に、先輩たちは浩太に視線を向ける。

「先輩方。悪いんすけど、俺ら目立ちたくないんで、伸之助にちょっかい出すの止めてもらえませんか?」

浩太……!

意外な浩太の助太刀に、僕は感動してしまって思わずうるうるしてしまった。だって、今日会ったばかりの奴にこんな風に助けてもらえるなんて、思ってもいなかったんだ。
香月先輩は、目をぱちぱちさせて驚いた顔をしていたが、木村先輩は明らかにムッとしているようだった。
木村先輩の表情を横目でちらりと見た香月先輩が、ニコリと笑って、僕の肩を引き寄せた。

そしてわけの分からない爆弾を投下する。

「悪いけど、俺、伸之助と付き合ってるから」
「え!?」

周りのみんなが驚いて、一斉に僕を見た。
僕は皆の視線を痛いほど浴びて、只々固まる。

いやいやいや。それ嘘だから!

余りの驚きに、僕はプルプルと小刻みに顔を振って、嘘だと精一杯のアピールをしているのに、香月先輩はにこやかに僕に顔を近づける。

「良いんだよ。バレても。ここのみんなは偏見とか無いから。…ねえ、田端君」

香月先輩は、なぜか意味深に候を見て、同意を求める。
そんな先輩に一瞬候は瞬きをして、頭を掻いた。

「そうですね。伸之助、隠さないでも良いよ。こそこそしない方が楽だぞ。さっき言ってたじゃん。会長とお互い一目ぼれしたって」

えええええぇぇ!?

いつ僕がそんな事言ったんだよ?

「そういうわけだから木村。伸之助に手を出したら…許さないよ」

綺麗で柔らかな顔の表情を無くして、香月先輩が低い声で木村先輩に釘を刺す。
しばらく睨み合うようにしていたが、木村先輩が「分かったよ」と息を吐いた。そして去り際に、僕の方を見て口角をゆっくりと引き上げる。

その表情が何だか気味悪くて、ビクリと体を震わせると、香月先輩が"大丈夫"と言うように、肩を抱くその手に力を込めた。


「蓮さま、本当なんですか?」

戸惑うような声がしてハッと我に返った。香月先輩の後を付いてきていた、恐らく僕と同じ1年生が、何人も困惑したような顔をしている。

「あ、あの。香月先輩…」

香月先輩は、僕を木村先輩から助けるために仕方なく嘘を吐いたのだと思うけど、やっぱり僕は嘘は苦手だ。
しかもここにいるみんなは、香月先輩の事を大好きな人たちだ。そんなみんなにこんな嘘、吐いていいわけがない。

そう思って、本当の事をみんなには言った方が良いですよね? と、言おうとしたのに、香月先輩の口から出たのはとんでもない言葉だった。

「悪いな、みんな。ちゃんと言うべきかとは思ったんだけど、常から恋人なんて作らないって言っていた手前、どう切り出していいか分からなかったんだ」

香月先輩のその言葉にみんな息を呑む。取り巻きも浩太も。
もちろん僕もだ!!(なぜか候は平然としている!)


「せ、せせせ先輩っっ」

ドモリながら抗議をすると、先輩が振り返り、意味深に目を眇めた。その異様なまでの先輩の色気に、ぞくりと変なものが僕の体を走り抜ける。

な、ななななんだコレ!

硬直して変な汗が流れる僕の姿に、先輩は満足そうに頬を緩め、そして僕の唇を親指でなぞる。
途端にビクリと反応する身体。もうこの行為が気持ち悪いのか恥ずかしいのか判別つかない。ビックリして真っ赤になると、向かいにいた浩太が不機嫌そうな顔をした。

そうやって、僕をどぎまぎさせて言葉を完璧に失わせた先輩は、真面目な表情で、取り巻きのファンの子たちに謝った。

「ごめんな」

彼らに真摯に謝る姿に、あちこちからため息がこぼれる。

「…わかりました。でも、これからも蓮さまをお慕いしても構いませんよね?」

1人が意を決したように聞くと、他のみんなも香月先輩を必死な面持ちで見つめている。
それに対して香月先輩は、神妙な面持ちでゆっくりと頷いた。

「伸之助が一番だから今までと同じとは言えないけど、君たちは俺にとってとても大切な後輩だって事は変わりないよ」
「蓮さま……」
「ありがとうございます。蓮さま」


……なんかちょっとよく分かんないけど、奇妙な光景だよね、これって。
皆に嘘を吐いているという罪悪感はもちろん今も感じているのだけど、余りにも真剣な彼らのやり取りに、だんだん我に返ってきた。

ええ~っと、今どんな状況なんだっけ。

「そろそろ飯食いましょう。時間なくなりますよ? 会長はどうします? 一緒、しますか?」

浩太が無表情に告げたお蔭で、みんな我に返った。
そんな浩太に、にっこりと笑いながら香月先輩が了承したものだから、僕らはものすごい大人数で一緒に食事をする羽目になってしまった。

「……」

視線がかなりイタイです。

香月先輩のファンの視線にさらされて、僕は心の中で何度もため息を吐いていた。
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