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無自覚美少年の男子校ライフ♪

変態王子?

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「え~っと、どこだっけ職員室」

ゴールデンウイークもとっくに過ぎた5月の半ば。
僕は私立高校、矢萩学園の中で、迷子になっていた。

なんでこんな事になっているかと言うと…。


今まで僕は東京に住んでいた。だから高校進学も普通に都内を受験し、無事受かってもいた。なんだけど…。
とんでもない事に、父さんの勤めている会社が倒産してしまったのだ。

結局父さんの年齢ではなかなか次の就職先を探すことも出来なくて、僕らは父さんの生まれ故郷であるF県に引っ越してきたのだ。

で、なぜそんな逼迫した状況で私立高校なんかに通うのかと言うと、父さんのお兄さん、要するに僕の伯父さんがこの高校を経営しているからなんだ。
突然の転校騒ぎでどこに行けばいいのか分からない状態だったので、正直ありがたいとは思ったんだけど…。

残念なのは、ここ、男子校なんだよな。
男子校って事は女の子が1人もいないという事で…。


――ああ、こんな事考えてる場合じゃない!
職員室探さなくっちゃ。

僕はほんっとーに呆れるくらい方向音痴なんだ。
一応伯父の学園でも、編入のため、ちゃんと面接試験を受けに一度来てるのに、完璧に忘れてしまって迷子になっていた。

だってこの学校、すっごい敷地が広いんだよ。



「何してるんだ? そんなところで。そろそろ授業始まるぞ」

いい加減自分の方向音痴加減にうんざりし始めた時、背後から天使の声が降ってきた!
良かったー!これで職員室に行けるー。
僕は満面の笑みで勢いよく振り返った。


するとそこには、天使ならず、王子様のように凛とした、恐ろしく綺麗な男の人が立っていた。
僕はポカーンと、しばらく呆けて王子様然としたその人を見上げていた。

だって!
こんな綺麗な人、女でもお目にかかったこと無いんだよ。

その王子様…。じゃなかった、上級生らしき人は、とても端正な顔立ちをしていて、どちらかというと中性的な雰囲気を持っている。
でも女って感じでもなく、ちゃんとカッコイイあたり、凄く狡いと思う。

僕がまじまじと見つめていると、その人は目をぱちくりさせて小首を傾げた。
ふわりと通り過ぎた風が、彼のミルクティ色のサラサラとした髪を揺らめかせる。それは端正な顔に影を作り、彼の雰囲気を一層引き立たせた。


「君…?」

「あ、僕。あの…! 転校生なんですけど、職員室教えて下さい!」
――そうだよ。なに呑気に見惚れてたりしてるんだよ。
のんびりしてたら遅刻しちゃう。

「転校生? こんな季節外れに?」
「はい。あのっ」

「ああ。そうだな。急がないと遅刻だ。おいで」

そう言ってその王子様…。じゃなかった。上級生らしき人は、いきなり僕の手を取って歩き出した。

え!?

ちょっと待って!
高校生にもなった男同士が手なんか繋ぐのか!?
いくら綺麗な顔をしていても男は男だ。離してもらおうと口を開けかけた時、その上級生が歩きながら僕に質問してきた。

「名前聞いてなかったな。俺は香月蓮。二年生だ、お前は?」
「あ、中田伸之助です」
「伸之助……? へえ」

ちらりと振り返った彼が、意味深に目を眇めて口角を上げた。そしてするりと、繋いでいる手をずらして、指の位置を移動させ交差した。
――俗にいう恋人つなぎ…。

「ち、ちょっ、ちょっと待ってください。指、いや、手、離して下さい!」

焦るあまり、ドモリながら抗議する僕を無視して、ギュッと握りなおして更に歩いていく。

何なの? 何なのこの人!
カッコイイとか綺麗とか思って油断してたけど、実はただの変態!?

これからこの学校に通うしかないのに、こんなトコ誰かに見られたら、ホモだと勘違いされて何を言われるか分からないよ。
もうこれは思いっきり手を振りほどくしか手はないか。
そう思って僕が腕を振り上げようと思った時。

「蓮さん!」
「蓮様だ。誰あれ!? 僕の蓮様と手なんか繋いでる!」
「結構可愛いじゃねーか。ありゃ、蓮も気に入るな」


耳を疑うような声があちらこちらから聞こえてきた。
……この学校、どうなってんの?


まさかこれが男子校の実態だなんて、言わないよね?
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