58 / 62
第六章
僕の王子様 2
しおりを挟む「礼人……さん」
「よう、災難だったな。……少しは落ち着いたか?」
そう言って礼人さんがニッコリと微笑んだ。
……どうしよう、泣きそうっ……!
「礼人―! 礼人―! こっち見て―――!!」
「礼人―!!」
「なにやってんだ紫藤! お前1年じゃないだろー!!」
……あっ!
思いがけない礼人さんの登場にホッとして、それよりも感動してしまって体から力が抜けそうになっていたけれど、周りの歓声の間に聞こえてくる怒声でハッとした。
「れ……礼人さん、あの、ありがとうございます。でも……、大丈夫ですから……あのっ」
そうだよ。
礼人さんの迷惑にはなりたくない。そんな種は作りたくない。
そうじゃなくてもカッコよすぎるってそれだけの理由で、妬みやら嫉妬やらいっぱい浴びて嫌な思いをしているのに。
僕を助けようと思ってくれている優しい礼人さんの気持ちを、勝手な嫌悪の対象にさせてしまうのは絶対だめだ。
「生意気ー」
パスンと軽く礼人さんが僕の頭を叩いた。
……な、生意気?
どうして?
「同好会の大事な後輩が困ってるんだ。先輩として手助けしようと思うのは普通だろ。……あーっと、すまない担当、曲かけてくれ」
「オッケ……」
「ちょーっと、待ったー!」
……え?
「キャー、千佳だ! 千佳―!」
「うわっ、工藤まで出て来た! なんなんだこの1年!」
「読書同好会の後輩のピンチとして、俺も加勢する!」
「おう、千佳。なんだお前、可愛いな」
「千佳先輩……」
千佳先輩は女子から借りたのか、大きなリボンのヘアバンドを付けている。
……それだけでぐんと可愛くなるからさすがだ。
千佳先輩が現れたことでさっきよりも周りが騒がしくなっている。
だけどそれよりも凄いと思ったのは、さっきまで礼人さんに文句を言っていた男の先輩たちの声のトーンが変わり、「なんだあの千佳の可愛さは」だの「工藤だ、工藤だ」と地味にはしゃぐ声まで聞こえてくる。
いつのまにかブーイングの声は鳴りを潜め、歓迎のムードまで漂い始めていた。
――千佳の扇動効果。
……そういうことか。
愛らしい千佳先輩は、女子からだけでなく男子からも好かれてるってことなんだな。
確かにこの可愛さは、男子の嫉妬の対象にはなりようがないか。
「じゃ、行くぞ。曲かけてくれ」
「了解」
♪♪
♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
曲に合わせて三人で踊り始めた。
礼人さんが僕に笑いかけながら手を取って、くるくると僕を回して軽やかにステップを踏む。近づいたり遠のいたりしながら、じゃれ合うように踊るんだけど。
さらさらと靡く髪や、綺麗でかっこいい礼人さんを映えさせている華麗な衣装が素敵すぎて、まるで本物の王子様だ。
そんな王子様に優しくリードされて、僕はお姫様になってしまったような錯覚に陥りそうになる。
目が合う度に『大丈夫』と言わんばかりに優しく微笑まれて、僕は今嘘みたいに舞い上がっている。
千佳先輩も、きっと礼人さんを助けようと思って出てきてくれたんだろう。
優しい礼人さんを、妬みや嫉妬で嫌がらせをする人たちをあまりよく思っていないみたいだったから。
千佳先輩はたまに僕らに絡みながら、楽しそうに周りをひらひらと歩き回って可愛らしいオリジナルなダンスを披露してくれた。
おかげで、さっきまでのテンパりはどこへやら。
礼人さんと千佳先輩に挟まれて、僕は何とかこのステージをやり過ごすことが出来たんだ。
「よう、災難だったな。……少しは落ち着いたか?」
そう言って礼人さんがニッコリと微笑んだ。
……どうしよう、泣きそうっ……!
「礼人―! 礼人―! こっち見て―――!!」
「礼人―!!」
「なにやってんだ紫藤! お前1年じゃないだろー!!」
……あっ!
思いがけない礼人さんの登場にホッとして、それよりも感動してしまって体から力が抜けそうになっていたけれど、周りの歓声の間に聞こえてくる怒声でハッとした。
「れ……礼人さん、あの、ありがとうございます。でも……、大丈夫ですから……あのっ」
そうだよ。
礼人さんの迷惑にはなりたくない。そんな種は作りたくない。
そうじゃなくてもカッコよすぎるってそれだけの理由で、妬みやら嫉妬やらいっぱい浴びて嫌な思いをしているのに。
僕を助けようと思ってくれている優しい礼人さんの気持ちを、勝手な嫌悪の対象にさせてしまうのは絶対だめだ。
「生意気ー」
パスンと軽く礼人さんが僕の頭を叩いた。
……な、生意気?
どうして?
「同好会の大事な後輩が困ってるんだ。先輩として手助けしようと思うのは普通だろ。……あーっと、すまない担当、曲かけてくれ」
「オッケ……」
「ちょーっと、待ったー!」
……え?
「キャー、千佳だ! 千佳―!」
「うわっ、工藤まで出て来た! なんなんだこの1年!」
「読書同好会の後輩のピンチとして、俺も加勢する!」
「おう、千佳。なんだお前、可愛いな」
「千佳先輩……」
千佳先輩は女子から借りたのか、大きなリボンのヘアバンドを付けている。
……それだけでぐんと可愛くなるからさすがだ。
千佳先輩が現れたことでさっきよりも周りが騒がしくなっている。
だけどそれよりも凄いと思ったのは、さっきまで礼人さんに文句を言っていた男の先輩たちの声のトーンが変わり、「なんだあの千佳の可愛さは」だの「工藤だ、工藤だ」と地味にはしゃぐ声まで聞こえてくる。
いつのまにかブーイングの声は鳴りを潜め、歓迎のムードまで漂い始めていた。
――千佳の扇動効果。
……そういうことか。
愛らしい千佳先輩は、女子からだけでなく男子からも好かれてるってことなんだな。
確かにこの可愛さは、男子の嫉妬の対象にはなりようがないか。
「じゃ、行くぞ。曲かけてくれ」
「了解」
♪♪
♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
曲に合わせて三人で踊り始めた。
礼人さんが僕に笑いかけながら手を取って、くるくると僕を回して軽やかにステップを踏む。近づいたり遠のいたりしながら、じゃれ合うように踊るんだけど。
さらさらと靡く髪や、綺麗でかっこいい礼人さんを映えさせている華麗な衣装が素敵すぎて、まるで本物の王子様だ。
そんな王子様に優しくリードされて、僕はお姫様になってしまったような錯覚に陥りそうになる。
目が合う度に『大丈夫』と言わんばかりに優しく微笑まれて、僕は今嘘みたいに舞い上がっている。
千佳先輩も、きっと礼人さんを助けようと思って出てきてくれたんだろう。
優しい礼人さんを、妬みや嫉妬で嫌がらせをする人たちをあまりよく思っていないみたいだったから。
千佳先輩はたまに僕らに絡みながら、楽しそうに周りをひらひらと歩き回って可愛らしいオリジナルなダンスを披露してくれた。
おかげで、さっきまでのテンパりはどこへやら。
礼人さんと千佳先輩に挟まれて、僕は何とかこのステージをやり過ごすことが出来たんだ。
12
お気に入りに追加
278
あなたにおすすめの小説

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます


小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール
雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け
《あらすじ》
4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。
そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。
平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる