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第六章
僕の王子様 2
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「礼人……さん」
「よう、災難だったな。……少しは落ち着いたか?」
そう言って礼人さんがニッコリと微笑んだ。
……どうしよう、泣きそうっ……!
「礼人―! 礼人―! こっち見て―――!!」
「礼人―!!」
「なにやってんだ紫藤! お前1年じゃないだろー!!」
……あっ!
思いがけない礼人さんの登場にホッとして、それよりも感動してしまって体から力が抜けそうになっていたけれど、周りの歓声の間に聞こえてくる怒声でハッとした。
「れ……礼人さん、あの、ありがとうございます。でも……、大丈夫ですから……あのっ」
そうだよ。
礼人さんの迷惑にはなりたくない。そんな種は作りたくない。
そうじゃなくてもカッコよすぎるってそれだけの理由で、妬みやら嫉妬やらいっぱい浴びて嫌な思いをしているのに。
僕を助けようと思ってくれている優しい礼人さんの気持ちを、勝手な嫌悪の対象にさせてしまうのは絶対だめだ。
「生意気ー」
パスンと軽く礼人さんが僕の頭を叩いた。
……な、生意気?
どうして?
「同好会の大事な後輩が困ってるんだ。先輩として手助けしようと思うのは普通だろ。……あーっと、すまない担当、曲かけてくれ」
「オッケ……」
「ちょーっと、待ったー!」
……え?
「キャー、千佳だ! 千佳―!」
「うわっ、工藤まで出て来た! なんなんだこの1年!」
「読書同好会の後輩のピンチとして、俺も加勢する!」
「おう、千佳。なんだお前、可愛いな」
「千佳先輩……」
千佳先輩は女子から借りたのか、大きなリボンのヘアバンドを付けている。
……それだけでぐんと可愛くなるからさすがだ。
千佳先輩が現れたことでさっきよりも周りが騒がしくなっている。
だけどそれよりも凄いと思ったのは、さっきまで礼人さんに文句を言っていた男の先輩たちの声のトーンが変わり、「なんだあの千佳の可愛さは」だの「工藤だ、工藤だ」と地味にはしゃぐ声まで聞こえてくる。
いつのまにかブーイングの声は鳴りを潜め、歓迎のムードまで漂い始めていた。
――千佳の扇動効果。
……そういうことか。
愛らしい千佳先輩は、女子からだけでなく男子からも好かれてるってことなんだな。
確かにこの可愛さは、男子の嫉妬の対象にはなりようがないか。
「じゃ、行くぞ。曲かけてくれ」
「了解」
♪♪
♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
曲に合わせて三人で踊り始めた。
礼人さんが僕に笑いかけながら手を取って、くるくると僕を回して軽やかにステップを踏む。近づいたり遠のいたりしながら、じゃれ合うように踊るんだけど。
さらさらと靡く髪や、綺麗でかっこいい礼人さんを映えさせている華麗な衣装が素敵すぎて、まるで本物の王子様だ。
そんな王子様に優しくリードされて、僕はお姫様になってしまったような錯覚に陥りそうになる。
目が合う度に『大丈夫』と言わんばかりに優しく微笑まれて、僕は今嘘みたいに舞い上がっている。
千佳先輩も、きっと礼人さんを助けようと思って出てきてくれたんだろう。
優しい礼人さんを、妬みや嫉妬で嫌がらせをする人たちをあまりよく思っていないみたいだったから。
千佳先輩はたまに僕らに絡みながら、楽しそうに周りをひらひらと歩き回って可愛らしいオリジナルなダンスを披露してくれた。
おかげで、さっきまでのテンパりはどこへやら。
礼人さんと千佳先輩に挟まれて、僕は何とかこのステージをやり過ごすことが出来たんだ。
「よう、災難だったな。……少しは落ち着いたか?」
そう言って礼人さんがニッコリと微笑んだ。
……どうしよう、泣きそうっ……!
「礼人―! 礼人―! こっち見て―――!!」
「礼人―!!」
「なにやってんだ紫藤! お前1年じゃないだろー!!」
……あっ!
思いがけない礼人さんの登場にホッとして、それよりも感動してしまって体から力が抜けそうになっていたけれど、周りの歓声の間に聞こえてくる怒声でハッとした。
「れ……礼人さん、あの、ありがとうございます。でも……、大丈夫ですから……あのっ」
そうだよ。
礼人さんの迷惑にはなりたくない。そんな種は作りたくない。
そうじゃなくてもカッコよすぎるってそれだけの理由で、妬みやら嫉妬やらいっぱい浴びて嫌な思いをしているのに。
僕を助けようと思ってくれている優しい礼人さんの気持ちを、勝手な嫌悪の対象にさせてしまうのは絶対だめだ。
「生意気ー」
パスンと軽く礼人さんが僕の頭を叩いた。
……な、生意気?
どうして?
「同好会の大事な後輩が困ってるんだ。先輩として手助けしようと思うのは普通だろ。……あーっと、すまない担当、曲かけてくれ」
「オッケ……」
「ちょーっと、待ったー!」
……え?
「キャー、千佳だ! 千佳―!」
「うわっ、工藤まで出て来た! なんなんだこの1年!」
「読書同好会の後輩のピンチとして、俺も加勢する!」
「おう、千佳。なんだお前、可愛いな」
「千佳先輩……」
千佳先輩は女子から借りたのか、大きなリボンのヘアバンドを付けている。
……それだけでぐんと可愛くなるからさすがだ。
千佳先輩が現れたことでさっきよりも周りが騒がしくなっている。
だけどそれよりも凄いと思ったのは、さっきまで礼人さんに文句を言っていた男の先輩たちの声のトーンが変わり、「なんだあの千佳の可愛さは」だの「工藤だ、工藤だ」と地味にはしゃぐ声まで聞こえてくる。
いつのまにかブーイングの声は鳴りを潜め、歓迎のムードまで漂い始めていた。
――千佳の扇動効果。
……そういうことか。
愛らしい千佳先輩は、女子からだけでなく男子からも好かれてるってことなんだな。
確かにこの可愛さは、男子の嫉妬の対象にはなりようがないか。
「じゃ、行くぞ。曲かけてくれ」
「了解」
♪♪
♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
♪♪もっふ、もっふ、もふもふワンダー♪♪
曲に合わせて三人で踊り始めた。
礼人さんが僕に笑いかけながら手を取って、くるくると僕を回して軽やかにステップを踏む。近づいたり遠のいたりしながら、じゃれ合うように踊るんだけど。
さらさらと靡く髪や、綺麗でかっこいい礼人さんを映えさせている華麗な衣装が素敵すぎて、まるで本物の王子様だ。
そんな王子様に優しくリードされて、僕はお姫様になってしまったような錯覚に陥りそうになる。
目が合う度に『大丈夫』と言わんばかりに優しく微笑まれて、僕は今嘘みたいに舞い上がっている。
千佳先輩も、きっと礼人さんを助けようと思って出てきてくれたんだろう。
優しい礼人さんを、妬みや嫉妬で嫌がらせをする人たちをあまりよく思っていないみたいだったから。
千佳先輩はたまに僕らに絡みながら、楽しそうに周りをひらひらと歩き回って可愛らしいオリジナルなダンスを披露してくれた。
おかげで、さっきまでのテンパりはどこへやら。
礼人さんと千佳先輩に挟まれて、僕は何とかこのステージをやり過ごすことが出来たんだ。
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