僕の王子様

くるむ

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第五章

加山さんという女の子

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人見知りだって言っていた礼人さんだけど、和やかに加山さんと話をしている。"ふの付く女子"の意味が未だに分からない僕だけが頭をグルグルとさせていた。

「さて、歩。そろそろ送ってく。きみも送るよ。どっち?」
「あ、私はこっから5分もかからないところのおばあちゃんちに行くんで、大丈夫です」
「おばあちゃんち?」
「はい。……え~と、あれ。あの先にあるクリーム色の2階建てのお家です」
「……ああ、あれか。じゃあ、気を付けてな」
「はいっ。あの、邪魔しちゃってごめんなさいっ」

なんとも言えないうれしそーな笑顔で言われて、僕と礼人さんは微妙な笑顔を返した。

手を振り去っていく加山さんを見送って、僕らも帰路に就いた。


「僕……、加山さんは礼人さんのことが好きなんだとばかり思ってましたけど、なんか違うんですね。憧れてる……ってだけだったのかな?」

「さあ……、どうかな」
礼人さんは苦笑して僕を見て、そして言葉を続けた。

「どっちにしても、歩の味方になってくれるみたいだから構わないよ」
「あ、それ!」
「え?」
「"ふの付く女子"って何ですか? 僕さっぱり意味が分からないんですけど」

「あー……」

ん?

困ってるような可笑しさをかみ殺しているような、なんとも微妙な表情だ。

「あの子はな……、んー、ようするに男同士がこうやって付き合ってたりいちゃついてたりするのを見たり妄想するのが好きな子なんだよ」

はあっ!?
ええっ!?

「な……、何ですかそれ」

「ま、そういう趣味なんだろ。……あんまり考えすぎなくていいよ。どういう趣味であれ、加山がいい子だってことは確かな事だろ?」

あ……。

「はい! 僕らのことも受け入れてくれましたし、それに加山さんは、普段から明るくてとても感じのいい人です」
「そうか、それは良かった」
「はい」

僕が笑って頷くと、礼人さんが頭をぽふんとひと撫でして微笑み返した。


だんだんと薄暗くなり風も少し冷えて来た。
ただ僕の頬だけが、ほんのりと温かかった。
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