40 / 62
第五章
もっと一緒にいたい
しおりを挟む
「おー、ヤッター」
シュートが決まってすぐ、礼人さんが僕の傍に寄ってきてスッと片手を上げた。
あ、ハイタッチ!
憧れてたんだ、これ。
グラウンドで黒田先輩とハイタッチしているところを見た時から。
僕はドキドキしながら右手を上げて、パシンと礼人さんと掌を合わせた。
「綺麗なシュートだったな―。歩はもうちょっと自分に自信持つといいかもな」
「はい」
「いいフォームだったよな。名残惜しいけどもうそろそろ引き上げるか。少し暗くなってきたし」
「そうだな……。もう陽も落ちかけてるか。クロたちはこれからどうするんだ?」
「ん? 明日は学校だからな、そのまま家に帰るよ。紫藤らも帰るんだろ?」
「……ああ、その方が良いかもな。歩、送ってくよ」
「……はい」
先輩達とバスケをしたのは楽しかったけど、礼人さんとのハイタッチも嬉しかったけど……。
礼人さんのお家、やっぱり行ってみたかったかな……。
名残惜しい気持ちでいっぱいだったけど、ここでわがままを言うわけにはいかないから、僕もおとなしく白石先輩たちに挨拶をして礼人さんの後に続いた。
「なあ、歩―?」
「はい」
「アイスクリームでも食べてくか?」
「え?」
もしかしたら僕がすぐに帰りたくないって思ってる気持ちに気が付いたんだろうか?
ニッと笑って、『行くよな?』といった表情で僕を見ている。
「はい、行きます!」
「よーし、じゃあついてこい。ちょっと遠回りするぞ」
「はいっ」
礼人さんはさっき通った道とは別の方へと進んでいき、ちょっとした商店街へと入って行った。
その一角に、見慣れた某大手チェーンのアイスクリームショップが見えて来た。
店内は日曜だけあって、結構な人だ。
僕らが入ると、振り返った客がびっくりしたように礼人さんの顔を二度見していく。
そして女の子たちは嬉しそうに頬を赤くして、コソコソと内緒話をした後キャーキャーとはしゃいでいた。
気持ちはわかるんだけどね……。
礼人さん騒がれるのってあんまり好きじゃないんだよね。
嫌な気持ちになってなきゃいいけど……。
「どうした、歩?」
「あ、いえっ、何でもないです。えっと……、礼人さんはどれにします?」
「うん? 俺か? 俺はシンプルにチョコとか好きなんだよな。あと、クッキークリームとか……、でもなあ。ダブルにするにしても似た感じだから一つは柑橘系も欲しいよな……」
「クッキークリーム! 僕も好きです。……んー、決めました! 僕、クッキークリームにラズベリーチーズにします」
「じゃあ俺はチョコにバニラレモンにするわ」
2人でダブルのコーンを注文して、そのままお店を出た。
その時礼人さんの後ろ姿を、お店にいるほとんどの女の人たちが目で追っていた。
どこにいても目立つ人。
きっとひいき目なんかじゃなく、トップアイドルと言われる人達よりもずっとずっと綺麗でかっこよくて凄いオーラを放っている人だ。
そんなすごい人とこうやって当たり前のように一緒にいられることが嬉しいと同時に、やっぱり今でもすごく不思議に思えてならない。
礼人さんはアイスを食べながら元来た道を戻って行く。
そして公園の入り口傍にあるベンチに座った。
「これ、食べたら送ってくな」
「……はい」
贅沢な時間をもらえてるってことは分かってるんだ。
元々約束していたとはいえ、僕の都合でそれは反故にされているはずだった。それなのに礼人さんがひょっこり現れてくれたおかげて、こうやって少ない時間とはいえ2人っきりの時間を与えてもらっている。
だけど……。
礼人さんの特別な存在になれてるかもって思えるようになってから、僕の中で、『もっと、もっと』って思いが膨らんでしまっていた。
「……参ったなぁ」
礼人さんが空いている手で僕の肩を引き寄せた。
トン、と礼人さんの腕の中に引き寄せられて心臓がトクンと大きく響いた。
……み、密着!
密着しているよ、僕……!
どっ、どうしよう……!!
アイスをほぼ食べ終わり、コーンがあと少しになっているので溶けて零れてくる心配はもうないんだけど、もちろんそんなことが問題なんじゃない!
礼人さんの温かい腕の中が嬉しくて恥ずかしくて、僕の顔に熱が集まって顔が熱い!!
「そんな顔されてると、帰したくなくなるんだけど」
「……礼人さん」
困ったように優しく微笑まれて、僕の心臓がどんどん激しい音を放った。
「……鹿倉君?」
……え?
不思議そうに窺う小さな声が斜め背後から聞こえて来た。
びっくりして振り向くと、僕らをおずおずと窺う加山さんがいた。
シュートが決まってすぐ、礼人さんが僕の傍に寄ってきてスッと片手を上げた。
あ、ハイタッチ!
憧れてたんだ、これ。
グラウンドで黒田先輩とハイタッチしているところを見た時から。
僕はドキドキしながら右手を上げて、パシンと礼人さんと掌を合わせた。
「綺麗なシュートだったな―。歩はもうちょっと自分に自信持つといいかもな」
「はい」
「いいフォームだったよな。名残惜しいけどもうそろそろ引き上げるか。少し暗くなってきたし」
「そうだな……。もう陽も落ちかけてるか。クロたちはこれからどうするんだ?」
「ん? 明日は学校だからな、そのまま家に帰るよ。紫藤らも帰るんだろ?」
「……ああ、その方が良いかもな。歩、送ってくよ」
「……はい」
先輩達とバスケをしたのは楽しかったけど、礼人さんとのハイタッチも嬉しかったけど……。
礼人さんのお家、やっぱり行ってみたかったかな……。
名残惜しい気持ちでいっぱいだったけど、ここでわがままを言うわけにはいかないから、僕もおとなしく白石先輩たちに挨拶をして礼人さんの後に続いた。
「なあ、歩―?」
「はい」
「アイスクリームでも食べてくか?」
「え?」
もしかしたら僕がすぐに帰りたくないって思ってる気持ちに気が付いたんだろうか?
ニッと笑って、『行くよな?』といった表情で僕を見ている。
「はい、行きます!」
「よーし、じゃあついてこい。ちょっと遠回りするぞ」
「はいっ」
礼人さんはさっき通った道とは別の方へと進んでいき、ちょっとした商店街へと入って行った。
その一角に、見慣れた某大手チェーンのアイスクリームショップが見えて来た。
店内は日曜だけあって、結構な人だ。
僕らが入ると、振り返った客がびっくりしたように礼人さんの顔を二度見していく。
そして女の子たちは嬉しそうに頬を赤くして、コソコソと内緒話をした後キャーキャーとはしゃいでいた。
気持ちはわかるんだけどね……。
礼人さん騒がれるのってあんまり好きじゃないんだよね。
嫌な気持ちになってなきゃいいけど……。
「どうした、歩?」
「あ、いえっ、何でもないです。えっと……、礼人さんはどれにします?」
「うん? 俺か? 俺はシンプルにチョコとか好きなんだよな。あと、クッキークリームとか……、でもなあ。ダブルにするにしても似た感じだから一つは柑橘系も欲しいよな……」
「クッキークリーム! 僕も好きです。……んー、決めました! 僕、クッキークリームにラズベリーチーズにします」
「じゃあ俺はチョコにバニラレモンにするわ」
2人でダブルのコーンを注文して、そのままお店を出た。
その時礼人さんの後ろ姿を、お店にいるほとんどの女の人たちが目で追っていた。
どこにいても目立つ人。
きっとひいき目なんかじゃなく、トップアイドルと言われる人達よりもずっとずっと綺麗でかっこよくて凄いオーラを放っている人だ。
そんなすごい人とこうやって当たり前のように一緒にいられることが嬉しいと同時に、やっぱり今でもすごく不思議に思えてならない。
礼人さんはアイスを食べながら元来た道を戻って行く。
そして公園の入り口傍にあるベンチに座った。
「これ、食べたら送ってくな」
「……はい」
贅沢な時間をもらえてるってことは分かってるんだ。
元々約束していたとはいえ、僕の都合でそれは反故にされているはずだった。それなのに礼人さんがひょっこり現れてくれたおかげて、こうやって少ない時間とはいえ2人っきりの時間を与えてもらっている。
だけど……。
礼人さんの特別な存在になれてるかもって思えるようになってから、僕の中で、『もっと、もっと』って思いが膨らんでしまっていた。
「……参ったなぁ」
礼人さんが空いている手で僕の肩を引き寄せた。
トン、と礼人さんの腕の中に引き寄せられて心臓がトクンと大きく響いた。
……み、密着!
密着しているよ、僕……!
どっ、どうしよう……!!
アイスをほぼ食べ終わり、コーンがあと少しになっているので溶けて零れてくる心配はもうないんだけど、もちろんそんなことが問題なんじゃない!
礼人さんの温かい腕の中が嬉しくて恥ずかしくて、僕の顔に熱が集まって顔が熱い!!
「そんな顔されてると、帰したくなくなるんだけど」
「……礼人さん」
困ったように優しく微笑まれて、僕の心臓がどんどん激しい音を放った。
「……鹿倉君?」
……え?
不思議そうに窺う小さな声が斜め背後から聞こえて来た。
びっくりして振り向くと、僕らをおずおずと窺う加山さんがいた。
2
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説

王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

いつも優しい幼馴染との距離が最近ちょっとだけ遠い
たけむら
BL
「いつも優しい幼馴染との距離が最近ちょっとだけ遠い」
真面目な幼馴染・三輪 遥と『そそっかしすぎる鉄砲玉』という何とも不名誉な称号を持つ倉田 湊は、保育園の頃からの友達だった。高校生になっても変わらず、ずっと友達として付き合い続けていたが、最近遥が『友達』と言い聞かせるように呟くことがなぜか心に引っ掛かる。そんなときに、高校でできたふたりの悪友・戸田と新見がとんでもないことを言い始めて…?
*本編:7話、番外編:4話でお届けします。
*別タイトルでpixivにも掲載しております。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。

ガラス玉のように
イケのタコ
BL
クール美形×平凡
成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。
親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。
とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。
圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。
スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。
ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。
三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。
しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。
三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。

幸せになりたかった話
幡谷ナツキ
BL
このまま幸せでいたかった。
このまま幸せになりたかった。
このまま幸せにしたかった。
けれど、まあ、それと全部置いておいて。
「苦労もいつかは笑い話になるかもね」
そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

その日君は笑った
mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。
それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。
最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。
※完結いたしました。
閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。
拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる