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第五章
凄い人たちと一緒
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公園は日曜のせいもあってか、この時間でも結構な人出だ。黒田先輩はサッカーボールを下に置いて、何やら考えている。
「バスケのゴールが空いてる。2×2でもするか?」
「えっ!?」
どう見ても1人だけ運動音痴なこの状況で、スポーツ万能なこの人たちと一緒にプレーするのはかなり気が引ける。
引き気味な僕に、礼人さんが僕の頭に掌を乗っけてグラグラと揺らす。
「遊びだ、遊び。この狭い枠内でシュート目指してわちゃわちゃすればいいんだから。ドジしたって誰も怒んねーよ」
「そうだよ鹿倉君。俺もそれほどスポーツは得意じゃないけど、この2人とのゲームは結構楽しいと思うよ」
「は……、はい。分かりました、頑張りますっ」
「だーから、頑張らなくていいんだってばよ」
僕の頭から手を離して、礼人さんがスッと背筋を伸ばした。
「いこーぜ」
トクン。
夕陽を背に浴びて、ピンクバイオレットの髪がキラキラ光る。
影を帯びた端正な顔が、一際かっこよく僕の目に飛び込んできた。
この、どう見ても僕と不釣り合いにカッコいいこの人が、僕の彼……、彼氏なんだよな。
改めてそう思って顔を真っ赤にさせていると、礼人さんがじんわりと微笑んだ。
ああ、恥ずかしい。
いろんな意味でドキドキしながら僕も参加だ。
コイントスで攻撃権を決めて、最初は黒田先輩がボールを取った。
白石先輩にパスを回して、ゴール近くに走っていく。ボールを受け取った白石先輩はドリブルしながら進んでいき、黒田先輩にパスをしたところを横から礼人さんが素早くカットしボールを奪った。
「くそ―っ、礼人、お前お遊びじゃなかったのかよ」
「遊びだよ。けどクロの顔見てたら、ついついな―」
そう笑いながら礼人さんがアーク外へと歩いていく。
「行くぞ。ホラ、歩!」
「うわっ、はっはい!」
ポーンと弧を描くように軽く、僕でも簡単に受け止められそうなボールを礼人さんが放ってくれた。
一瞬わたわたしたけれど、「近くまで行ってシュートしてみろ!」と礼人さんが言ったので、ボールを突きながらもたもたとバスケットゴールへと近づいた。
ゴール下には黒田先輩がいたけど、思い切ってエイッ!とシュート。
……したんだけど、すんなり入ってくれずにリングにガツンとぶつかって弾かれてしまった。礼人さんがそれをすかさずフォローしようとしてくれたのだけど、一瞬早く黒田先輩に奪われてしまった。
「テメー、クロ。せっかくいいとこ見せれるところだったのに、少しは遠慮しろよ」
「それはこっちのセリフだろ。さっきは人の見せ場奪ったくせに」
「いいじゃんお前は。シロは十分クロのかっこよさ知り尽くしてるだろ」
「あー、始まった」
「え?」
「なんだかんだ言ってあの2人、気が合うというかムキになるというか。楽しんでるんだよね、ああやって」
ああ、うん。
2人とも言い合ってるように見えるけど、表情は2人ともとても楽しそうだ。
黒田先輩は否定しそうだけど、何となく言葉でじゃれ合ってるってのがあってるかもしれない。
「それにしても……、たいていは礼人の方がもっと余裕で陸のことを揶揄うのが常なんだけど……。今日は歩君がいるから、礼人までムキになっちゃってるみたいだね」
「え?」
トクン。
白石先輩の言葉に、礼人さんの言葉を思い出して顔が熱くなった。
目立つのは嫌だけど、僕がいるから本気になりたいってそう言っていた礼人さんの言葉……。
「うぉーい、歩、シロ。続き行くぞー」
「はーい」
「わかった」
白石先輩と戻って、また四人でわちゃわちゃとボールを奪い合う。
でも黒田先輩はすごく上手いにも関わらず、僕にはかなり手を抜いていて楽しませようと思ってくれているようだった。
ただ礼人さんがボールを持つと豹変して、凄く執拗にボールを奪いに行っていた。もちろん逆も然りだけど。
礼人さんがピポッドをしながら上手く黒田先輩をかわして、僕にパスをくれた。
「イケ、シュートだ!」
「はい!」
かなりの近くからシュートを放った。
パスン。
間が良かったのかフォームが良かったのか、僕の放ったボールが綺麗にゴールへと入って行った。
「バスケのゴールが空いてる。2×2でもするか?」
「えっ!?」
どう見ても1人だけ運動音痴なこの状況で、スポーツ万能なこの人たちと一緒にプレーするのはかなり気が引ける。
引き気味な僕に、礼人さんが僕の頭に掌を乗っけてグラグラと揺らす。
「遊びだ、遊び。この狭い枠内でシュート目指してわちゃわちゃすればいいんだから。ドジしたって誰も怒んねーよ」
「そうだよ鹿倉君。俺もそれほどスポーツは得意じゃないけど、この2人とのゲームは結構楽しいと思うよ」
「は……、はい。分かりました、頑張りますっ」
「だーから、頑張らなくていいんだってばよ」
僕の頭から手を離して、礼人さんがスッと背筋を伸ばした。
「いこーぜ」
トクン。
夕陽を背に浴びて、ピンクバイオレットの髪がキラキラ光る。
影を帯びた端正な顔が、一際かっこよく僕の目に飛び込んできた。
この、どう見ても僕と不釣り合いにカッコいいこの人が、僕の彼……、彼氏なんだよな。
改めてそう思って顔を真っ赤にさせていると、礼人さんがじんわりと微笑んだ。
ああ、恥ずかしい。
いろんな意味でドキドキしながら僕も参加だ。
コイントスで攻撃権を決めて、最初は黒田先輩がボールを取った。
白石先輩にパスを回して、ゴール近くに走っていく。ボールを受け取った白石先輩はドリブルしながら進んでいき、黒田先輩にパスをしたところを横から礼人さんが素早くカットしボールを奪った。
「くそ―っ、礼人、お前お遊びじゃなかったのかよ」
「遊びだよ。けどクロの顔見てたら、ついついな―」
そう笑いながら礼人さんがアーク外へと歩いていく。
「行くぞ。ホラ、歩!」
「うわっ、はっはい!」
ポーンと弧を描くように軽く、僕でも簡単に受け止められそうなボールを礼人さんが放ってくれた。
一瞬わたわたしたけれど、「近くまで行ってシュートしてみろ!」と礼人さんが言ったので、ボールを突きながらもたもたとバスケットゴールへと近づいた。
ゴール下には黒田先輩がいたけど、思い切ってエイッ!とシュート。
……したんだけど、すんなり入ってくれずにリングにガツンとぶつかって弾かれてしまった。礼人さんがそれをすかさずフォローしようとしてくれたのだけど、一瞬早く黒田先輩に奪われてしまった。
「テメー、クロ。せっかくいいとこ見せれるところだったのに、少しは遠慮しろよ」
「それはこっちのセリフだろ。さっきは人の見せ場奪ったくせに」
「いいじゃんお前は。シロは十分クロのかっこよさ知り尽くしてるだろ」
「あー、始まった」
「え?」
「なんだかんだ言ってあの2人、気が合うというかムキになるというか。楽しんでるんだよね、ああやって」
ああ、うん。
2人とも言い合ってるように見えるけど、表情は2人ともとても楽しそうだ。
黒田先輩は否定しそうだけど、何となく言葉でじゃれ合ってるってのがあってるかもしれない。
「それにしても……、たいていは礼人の方がもっと余裕で陸のことを揶揄うのが常なんだけど……。今日は歩君がいるから、礼人までムキになっちゃってるみたいだね」
「え?」
トクン。
白石先輩の言葉に、礼人さんの言葉を思い出して顔が熱くなった。
目立つのは嫌だけど、僕がいるから本気になりたいってそう言っていた礼人さんの言葉……。
「うぉーい、歩、シロ。続き行くぞー」
「はーい」
「わかった」
白石先輩と戻って、また四人でわちゃわちゃとボールを奪い合う。
でも黒田先輩はすごく上手いにも関わらず、僕にはかなり手を抜いていて楽しませようと思ってくれているようだった。
ただ礼人さんがボールを持つと豹変して、凄く執拗にボールを奪いに行っていた。もちろん逆も然りだけど。
礼人さんがピポッドをしながら上手く黒田先輩をかわして、僕にパスをくれた。
「イケ、シュートだ!」
「はい!」
かなりの近くからシュートを放った。
パスン。
間が良かったのかフォームが良かったのか、僕の放ったボールが綺麗にゴールへと入って行った。
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