僕の王子様

くるむ

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第四章

礼人さんの過去 2

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「お疲れ様です! バレーの練習ですか?」
「そ。でも、もう済んだからこれから同好会に行くところだよ」
「え? ……じゃあ」

もしかしたら礼人さんたちも、そろそろ終わるんだろうか。

そう思って視線をグラウンドに向けると、つられるように白石先輩もグラウンドに視線を向けた。

「……やってるな」
「あー、ホントだ。クロったら、パワー全開だね」
「そうだな。……やっぱさすが礼人だな。しっかり陸について行ってる」

「いいなぁ……」
純粋に、運動神経がよくてスポーツの出来る人がうらやましい僕は、無意識に本心がポロッと零れ落ちた。
それに白石先輩と千佳先輩が、キョトンと2人で僕を見た。

「うん?」
「あ、いえあの。僕運動神経が皆無で、だから礼人さんや黒田先輩達みたいにかっこよく決められる人が純粋に羨ましいんです」

「そうだねー。そういや中学時代2人とも随分活躍してたよな」

「……もったいなかったよな、礼人。変な妬みで追い出されたようなものだろ、あれ」
「うん」

千佳先輩たちの会話で、僕は礼人さんが話していた"いろいろあった"という言葉を思い出していた。

礼人さんのように外見も良くて運動神経も抜群で、そんでもってあんなに優しい人だからモテるのは当たり前のことなのに。
羨ましいっていうそれだけで、嫌がらせをする人たちってなんなんだろう。

そんなに妬ましいんなら自分でももっと努力して、礼人さんに上回る何かを手に入れればよかったのに。

「……歩君?」

僕は知らず険しい顔つきになっていたみたいだ。
白石先輩が心配そうに僕を覗き込んだ。

「あっ、大丈夫です。すみません。……なんか理不尽だなって思っちゃって……。礼人さんが自分から燥いだり騒いだりしてみんなに迷惑をかけたわけじゃないだろうに、それなのに単に羨ましいからって嫌がらせをするとか……、男らしくないですよ」

「……うん、僕もそう思う」
「だねー。でも、そういう奴ってウジャウジャいるよー」
「……そう、ですよね」

「……まあ今もそうだけど、それ以上にあの頃の礼人のモテ方は半端なかったから、本人もうんざりしてたようなんだよね。だけどね、歩君。礼人は運動神経が人並み外れていいからテニスも上手かったけど、別に礼人はテニスに命を懸けてたわけじゃないよ。そうだよね? シロ」

「うん……、そうだね」

……え?
どういうこと?


「おー、どうした? みんな揃ってんな」

「あ、礼人さん!」

遠くから礼人さんの声が飛んできた。
振り返ると黒田先輩と一緒に、礼人さんがタオルで汗を拭きながらこちらの方に歩いてきていた。 

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