僕の王子様

くるむ

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第四章

活き活きとした2人

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放課後、加賀くんがヨッと荷物を抱えて席を立った。それとほぼ同時に、スポーツ大会で同じくバレーに出る事になっている木島君たちが加賀くんの下に集まって来た。

「加賀―、練習行こうぜー」
「おう。松山たちも、ビシバシ鍛えてやっからな」
「うげー、いいじゃん俺らは。足引っ張らないように頑張るけど、加賀と白井がいるんだからさー」
「なに言ってんだよ」
「それより、部活は遅れても大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫。クラスの練習があるなら、3、40分は遅れてもいいって言ってたから、な?」
「うん」

いいなあ、加賀くん。
運動音痴の僕から見ると、本当スポーツマンって憧れるよ。


「じゃあな、歩。お前も頑張れよ」
「ああ、鹿倉は仮装担当だったな。頑張れー」
「……アハハ。じゃあね」

ドヤドヤと出ていくみんなに手を振って見送って、僕も同好会に行こうと席を立った。



……そう言えば先輩たちはみんな、それぞれバレーに出たりサッカーに出たりするって言ってたよな。

僕はちょっと考えた後、いつものコースを変えてグラウンドの方に足を向けてみた。
だって、もしかしたら礼人さんも加賀くんたちみたいに練習してるかもしれないって思ったから。


グラウンドの脇の方に、それぞれクラスで練習をしているらしきグループが幾つかあった。

礼人さん、いないかなあ。

目を凝らして探していると、僕の位置よりも校門寄りの所で騒いでる女子がいた。
もしかしてと視線を向けると、彼女らの視線のほぼ直線上に、礼人さんのキラキラ輝くピンクバイオレットが目に飛び込んできた。

遠目でよく分からないけど、たぶん今すごいスピードでドリブルしているのは黒田先輩だ。礼人さんはその少し前を、同じようなスピードで走っている。
途端に、女子の黄色い声援もヒートアップする。

「キャアアーッ! 黒田くーん!!」
「行け礼人―ーっ!」

黒田先輩が礼人さんにパスをした。それを受けた礼人さんは、ゴールの手前まで持って行ったあと他の誰かにパスをしてその人にシュートを任せた。……んだけど、それは入らずキーパーに弾かれてしまった。
だけどそれをすかさず回り込んできた黒田先輩が思いっきり蹴って、ゴールを決めた。

凄いっ!

「キャアーー!! カッコイイ―黒田くーん!!」
「ヤバイ、ヤバイ、どうしよ、ヤバイよ!!」


……うん。
本当に……。


こんな遠くから見ていてもよくわかる。
ハイタッチをした礼人さんと黒田先輩は、凄く活き活きしているよ。


もしかして黒田先輩も何か訳ありなのかな?
だってあんなに活き活きしていて上手いのに、どうしてサッカー部に入らなくて読書同好会に入っているんだろう。

「アレー? 歩君だぁ」

「……え?」

振り向くと、Tシャツ姿の千佳先輩と白石先輩が立っていた。
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