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第三章
戸惑うほどの幸せ
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部屋に入って足を伸ばして座ると、礼人さんはコロンと横になって頭を乗っけた。
かと思うとすぐに寝息を立てて眠り始めた。
よっぽど眠かったんだな……。
誰かがいると眠れないっていうのに、僕の膝が恋しいだなんて……。
どうしたらいいんだろう。こんな幸せ。
僕自身がこんな幸福を今まで味わったことが無かったから、自分の身に起こってくれた奇跡のような幸せに、正直うれしい以上に戸惑っている。
だって、一度こんな幸せをかみしめてしまうと、失った時の悲しみはきっと半端無いと思うから。
ピンクバイオレットの艶やかな髪。
そっと触れて、起こさないように注意しながら撫でてみた。
開いている窓からそよそよと涼しい風が流れてきて、礼人さんの髪をさらさらと靡かせていた。
「……かわいい」
「微笑ましいな」
「本当だね。でも、もう起こさないと」
ボソボソと聞こえてくる声にぼんやりと意識が浮上してきた。
ハッと前を向くと、先輩方がずらっと勢揃いしていた。
うわっ!
もしかしなくても僕まで寝ちゃってた!
「んんっ……、良く寝た。もうそんな時間か」
礼人さんも人の気配で目が覚めたようだ。僕の太腿から頭を起こして、胡坐をかいている。
そしてパンパンと両頬を叩いて、シャキッとした表情になった。
「さて、帰るか」
「おう。急がないと面倒だぞ」
「歩……、なんだ、もしかしてお前も一緒に寝てたのか?」
「……はい。すみません」
「別に謝ることねーよ」
わしゃわしゃと僕の頭を撫でながら、廊下を歩く。そしてみんながいた部屋に置いてあった二人分の荷物をひょいと持って、僕にも渡してくれた。
「足、痺れたりはしてないんだな?」
「はい。そこまではいってません。大丈夫です」
「ねー、礼人。今度はさ、お返しに歩君に腕枕してあげなよ。さらに密着出来て、膝枕よりもずっといいよ」
ええっ!?
千佳先輩ったらなんてこと言ってんの!
てか、千佳先輩って可愛い顔してるのに発言が遠慮なさすぎるよ!
思わずその絵を想像しちゃった僕も僕だけど……。
心臓がキュウッてなって、ドキドキが止まらなくなってきちゃったじゃないかっ。
「それいいかもなー。……ま、でも俺らは俺らのペースでやってくわ。歩とのんびり進んでいくのも楽しみの一つだろ?」
「…………」
「…………」
「あ~、もう! 礼人ったらなんてカッコイイの!? 男前!」
『く~っ』て顔して、千佳先輩が礼人さんをバシバシ叩いた。
「いてーよ」
文句を言いながらも、礼人さんは明るく笑い飛ばしていた。
かと思うとすぐに寝息を立てて眠り始めた。
よっぽど眠かったんだな……。
誰かがいると眠れないっていうのに、僕の膝が恋しいだなんて……。
どうしたらいいんだろう。こんな幸せ。
僕自身がこんな幸福を今まで味わったことが無かったから、自分の身に起こってくれた奇跡のような幸せに、正直うれしい以上に戸惑っている。
だって、一度こんな幸せをかみしめてしまうと、失った時の悲しみはきっと半端無いと思うから。
ピンクバイオレットの艶やかな髪。
そっと触れて、起こさないように注意しながら撫でてみた。
開いている窓からそよそよと涼しい風が流れてきて、礼人さんの髪をさらさらと靡かせていた。
「……かわいい」
「微笑ましいな」
「本当だね。でも、もう起こさないと」
ボソボソと聞こえてくる声にぼんやりと意識が浮上してきた。
ハッと前を向くと、先輩方がずらっと勢揃いしていた。
うわっ!
もしかしなくても僕まで寝ちゃってた!
「んんっ……、良く寝た。もうそんな時間か」
礼人さんも人の気配で目が覚めたようだ。僕の太腿から頭を起こして、胡坐をかいている。
そしてパンパンと両頬を叩いて、シャキッとした表情になった。
「さて、帰るか」
「おう。急がないと面倒だぞ」
「歩……、なんだ、もしかしてお前も一緒に寝てたのか?」
「……はい。すみません」
「別に謝ることねーよ」
わしゃわしゃと僕の頭を撫でながら、廊下を歩く。そしてみんながいた部屋に置いてあった二人分の荷物をひょいと持って、僕にも渡してくれた。
「足、痺れたりはしてないんだな?」
「はい。そこまではいってません。大丈夫です」
「ねー、礼人。今度はさ、お返しに歩君に腕枕してあげなよ。さらに密着出来て、膝枕よりもずっといいよ」
ええっ!?
千佳先輩ったらなんてこと言ってんの!
てか、千佳先輩って可愛い顔してるのに発言が遠慮なさすぎるよ!
思わずその絵を想像しちゃった僕も僕だけど……。
心臓がキュウッてなって、ドキドキが止まらなくなってきちゃったじゃないかっ。
「それいいかもなー。……ま、でも俺らは俺らのペースでやってくわ。歩とのんびり進んでいくのも楽しみの一つだろ?」
「…………」
「…………」
「あ~、もう! 礼人ったらなんてカッコイイの!? 男前!」
『く~っ』て顔して、千佳先輩が礼人さんをバシバシ叩いた。
「いてーよ」
文句を言いながらも、礼人さんは明るく笑い飛ばしていた。
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