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第三章
好きだよ
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「ちょっと歩、おいで」
「はい」
礼人さんが立ち上がって僕を促した。
どこ行くんだろ?
「奥、ちょっと借りるぞ」
「どうぞ、どうぞ―」
礼人さんの言葉に、千佳先輩がニッコリ笑いながら手を振った。
奥?
そういえばドアが見えたな。
促されて入るとそこは普通の畳の部屋で、座布団が隅の方に積み上げられていた。
「ホラ、座れよ」
「あ、すみません」
礼人さんが積み上げられていた座布団を二枚取って、一枚を僕に手渡した。
そして一枚を床に置いて胡坐をかいたので、僕も倣ってその近くに正座した。
「おいおい、楽にしろよ。畏まらなくていい」
「はい。えっと、じゃあ失礼します」
ゴソゴソと足を崩して礼人さんを見ると、何とも言えない面映ゆい表情で僕のことを見ていた。
「…………」
……あ、今頃になって緊張してきた。
今、礼人さんと2人っきりなんだよな。しかもわざわざここに呼ばれて……。
ドキドキしながらジッと礼人さんを見ていると、その表情は段々と、いつも僕に見せるあの何とも言えない苦笑した表情へと変わって行った。
「……不思議だな」
ぽつりと呟いて、静かに礼人さんが目を伏せた。
そんな礼人さんをぼ~っと見ていたら、徐に顔を上げた礼人さんと目が合ってドキンとする。
「歩……、あのさ」
「……はい」
少し緊張したような礼人さんの声に、僕の心臓もドキドキとうるさくなる。
礼人さんの緊張が僕に伝染したようだ。
「……こんな気持ち初めてで、気の利いたことも言えないんだけど……。お前といると癒されるし、素直になれる。それにお前可愛いし、傍に置いておきたくなるんだ」
「……礼人さん」
可愛いだなんてそんな風に思ってもらってるだなんて信じられない。
ううん、それよりも。
癒されて素直になれるって……!
うれしくて、うれしすぎて僕の目から熱いものが溢れて来そうになって慌てた。
「歩」
「……はい」
「好きだ。俺と付き合ってくれないか?」
「礼人……さん」
やっぱり我慢なんて出来なかった。
膜を張って零れそうになっていた熱いものが、後から溢れだしたものに押し出されて僕の頬を伝っていく。
「もしかしたら外野が煩くて、少し煩わしい思いをするかもしれないけど」
「だ……いじょうぶです。そんなこと……、僕も……僕、ずっと……初めて会ったあの日から……礼人さんのことが好きだったんです」
涙でぐちゃぐちゃになった顔でしゃくりあげながら伝えた。
嬉しくて嬉しくて、もう涙は止まりそうにない。
そんな僕を、礼人さんは呆れるでもなく優しい表情で見ていた。
「はい」
礼人さんが立ち上がって僕を促した。
どこ行くんだろ?
「奥、ちょっと借りるぞ」
「どうぞ、どうぞ―」
礼人さんの言葉に、千佳先輩がニッコリ笑いながら手を振った。
奥?
そういえばドアが見えたな。
促されて入るとそこは普通の畳の部屋で、座布団が隅の方に積み上げられていた。
「ホラ、座れよ」
「あ、すみません」
礼人さんが積み上げられていた座布団を二枚取って、一枚を僕に手渡した。
そして一枚を床に置いて胡坐をかいたので、僕も倣ってその近くに正座した。
「おいおい、楽にしろよ。畏まらなくていい」
「はい。えっと、じゃあ失礼します」
ゴソゴソと足を崩して礼人さんを見ると、何とも言えない面映ゆい表情で僕のことを見ていた。
「…………」
……あ、今頃になって緊張してきた。
今、礼人さんと2人っきりなんだよな。しかもわざわざここに呼ばれて……。
ドキドキしながらジッと礼人さんを見ていると、その表情は段々と、いつも僕に見せるあの何とも言えない苦笑した表情へと変わって行った。
「……不思議だな」
ぽつりと呟いて、静かに礼人さんが目を伏せた。
そんな礼人さんをぼ~っと見ていたら、徐に顔を上げた礼人さんと目が合ってドキンとする。
「歩……、あのさ」
「……はい」
少し緊張したような礼人さんの声に、僕の心臓もドキドキとうるさくなる。
礼人さんの緊張が僕に伝染したようだ。
「……こんな気持ち初めてで、気の利いたことも言えないんだけど……。お前といると癒されるし、素直になれる。それにお前可愛いし、傍に置いておきたくなるんだ」
「……礼人さん」
可愛いだなんてそんな風に思ってもらってるだなんて信じられない。
ううん、それよりも。
癒されて素直になれるって……!
うれしくて、うれしすぎて僕の目から熱いものが溢れて来そうになって慌てた。
「歩」
「……はい」
「好きだ。俺と付き合ってくれないか?」
「礼人……さん」
やっぱり我慢なんて出来なかった。
膜を張って零れそうになっていた熱いものが、後から溢れだしたものに押し出されて僕の頬を伝っていく。
「もしかしたら外野が煩くて、少し煩わしい思いをするかもしれないけど」
「だ……いじょうぶです。そんなこと……、僕も……僕、ずっと……初めて会ったあの日から……礼人さんのことが好きだったんです」
涙でぐちゃぐちゃになった顔でしゃくりあげながら伝えた。
嬉しくて嬉しくて、もう涙は止まりそうにない。
そんな僕を、礼人さんは呆れるでもなく優しい表情で見ていた。
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