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第二章
紫藤さんに膝枕
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……いないのかな?
やっぱ、見間違えだった?
戻ろうかなとも思ったけどやっぱりどうしても気になったので、とりあえずベンチの所までは確認してみようと思って足を進めた。
ゆっくりと慎重に進む僕の目の前に、ベンチに横たわる足の裏が見えた。頭が向こう側だから顔までは見えないけれど、あのピンクバイオレットが時々チラチラと見えるから紫藤さんに絶対間違いない。
やっぱりいた。
……眠ってるのかな?
そーっと起こさないようにさらに慎重に近づいてみた。
紫藤さんが、綺麗な瞳を閉じて気持ちよさそうに眠っている。
「紫藤さんのとこも自習なのかな……?」
覗き込む僕の瞳に、ベンチを歩くありんこが目についた。一匹だけだけど、そいつが紫藤さんの体に近づいて行っている。
僕は無意識に、アリから紫藤さんを守ろうと、そいつをペシッと叩き落とした。
「……えっ!?」
その僕の行為とほぼ同時に、反射的に紫藤さんが起き上がった。そしてびっくりしたような表情で僕を見て、だけどすぐに不思議そうな表情に変わった。
「……歩? お前、何でここにいるんだ……?」
まだ少し眠いのか、ちょっぴりぼんやりしながら額を手で擦っている。
「起こしちゃってすみません。……あの、僕ら今自習で、窓から紫藤さんが見えたから気になって……」
「ふうん……」
「あ、邪魔でしたよね! すみません。僕もう戻りますから」
「ちょっと待て!」
「っ、え?」
踵を返そうとしたところで呼び止められて、慌てて振り向いたので転びそうになった。
もちろん踏ん張ったけど。
「今、自習なんだな?」
「はい」
「てことは、教室に戻らなくても叱られないと」
「……はい」
多分。
「じゃあ、ちょっとこっち来い」
紫藤さんに手招きされて呼ばれた先は、芝生が青々と茂っているところだ。
紫藤さんはそこにポンポンと掌を当てて、何かを確認してそれから僕を見た。
「ここ、足投げ出して座れ。湿ってないし汚れないから」
「え? あ、はい」
何だろうと思いながら近づくと、紫藤さんは何やら考えた末その芝生の上に持っているハンカチを広げた。
「大丈夫だと思うけど万が一な」
え? 紫藤さんのハンカチの上に座れと?
「紫藤さん、あの。ハンカチなら僕持ってます」
「いいから、いいから。頼んでるのは俺なんだからそこに座れ」
「はい……」
何だか悪いなとは思ったけど、無理に僕の我を押し通すのもなんだか微妙な感じがしたので、僕は素直にそのハンカチの上に座った。
そしたらそこに、
その僕の太腿の上に、紫藤さんが頭を乗っけて寝転んだ。
やっぱ、見間違えだった?
戻ろうかなとも思ったけどやっぱりどうしても気になったので、とりあえずベンチの所までは確認してみようと思って足を進めた。
ゆっくりと慎重に進む僕の目の前に、ベンチに横たわる足の裏が見えた。頭が向こう側だから顔までは見えないけれど、あのピンクバイオレットが時々チラチラと見えるから紫藤さんに絶対間違いない。
やっぱりいた。
……眠ってるのかな?
そーっと起こさないようにさらに慎重に近づいてみた。
紫藤さんが、綺麗な瞳を閉じて気持ちよさそうに眠っている。
「紫藤さんのとこも自習なのかな……?」
覗き込む僕の瞳に、ベンチを歩くありんこが目についた。一匹だけだけど、そいつが紫藤さんの体に近づいて行っている。
僕は無意識に、アリから紫藤さんを守ろうと、そいつをペシッと叩き落とした。
「……えっ!?」
その僕の行為とほぼ同時に、反射的に紫藤さんが起き上がった。そしてびっくりしたような表情で僕を見て、だけどすぐに不思議そうな表情に変わった。
「……歩? お前、何でここにいるんだ……?」
まだ少し眠いのか、ちょっぴりぼんやりしながら額を手で擦っている。
「起こしちゃってすみません。……あの、僕ら今自習で、窓から紫藤さんが見えたから気になって……」
「ふうん……」
「あ、邪魔でしたよね! すみません。僕もう戻りますから」
「ちょっと待て!」
「っ、え?」
踵を返そうとしたところで呼び止められて、慌てて振り向いたので転びそうになった。
もちろん踏ん張ったけど。
「今、自習なんだな?」
「はい」
「てことは、教室に戻らなくても叱られないと」
「……はい」
多分。
「じゃあ、ちょっとこっち来い」
紫藤さんに手招きされて呼ばれた先は、芝生が青々と茂っているところだ。
紫藤さんはそこにポンポンと掌を当てて、何かを確認してそれから僕を見た。
「ここ、足投げ出して座れ。湿ってないし汚れないから」
「え? あ、はい」
何だろうと思いながら近づくと、紫藤さんは何やら考えた末その芝生の上に持っているハンカチを広げた。
「大丈夫だと思うけど万が一な」
え? 紫藤さんのハンカチの上に座れと?
「紫藤さん、あの。ハンカチなら僕持ってます」
「いいから、いいから。頼んでるのは俺なんだからそこに座れ」
「はい……」
何だか悪いなとは思ったけど、無理に僕の我を押し通すのもなんだか微妙な感じがしたので、僕は素直にそのハンカチの上に座った。
そしたらそこに、
その僕の太腿の上に、紫藤さんが頭を乗っけて寝転んだ。
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