9 / 62
第二章
付き合ってるんだよ♪
しおりを挟む
「歩、それでいいか?」
千佳先輩が勧めてくれた本を持ったまま突っ立っていた僕を、紫藤さんが寄ってきて肩をポンと叩いた。
「はい」
「よし、じゃあ来い」
畳の部屋に備え付けられている大きなテーブルの一角に僕を促して、ここに座れと言った。
そして、紫藤さんも僕の隣に座った。
……ドキドキする。
隣に紫藤さんがいるってだけで、嬉しくて嬉しくてしょうがない。
ダメだ、ダメだ。
ただでさえ、みんなに気持ちがバレてしまっていそうな状況なのに、これ以上僕が紫藤さんのことを好きだと思わせるような態度に出てしまってたら、紫藤さんもきっと困るに違いないし。
集中だ!
この本に集中するんだ!
僕はこの小説の一言一句見逃さないぞという気持ちで、一文字一文字をしっかりと目で追う。
そうやってだんだん集中し始めたころに、コツンと軽く肘に何かがぶつかった。
……あ。
紫藤さんの肘だった。
視線を向けた途端にパチッと目が合って、瞬時にまた頬が熱くなる。
まずいと思ってパッと視線を離して、しまった!と思った。
こんなふうにあからさまに目を逸らすなんて、後輩にはあるまじき失礼な態度だ。上下関係の厳しい人だったら、きっとムッとするレベルじゃないのか?
もう色々ごちゃごちゃ考えすぎていて、頭の中はパニック状態だ。
きっと今の僕の顔は、赤くなったり青くなったりと忙しないに違いない。
「あーゆーむー」
「うわわっ!」
突然横から手が伸びてきて、わしゃわしゃと乱暴に髪の毛を混ぜられた。そして僕の頭に手を置いたまま、紫藤さんが顔を覗き込んだ。
「余計なこと考えるなよ。素直に楽しんでろ。ここは俺らにとってそう言う場所だ」
「……紫藤さん」
まただ。
また、ほんの一瞬で僕の心の内を理解してくれた。
そして知らないふりをしないで、向き合ってくれる。
クリスマスの日に初めて会ったあの時、勉強を教えてやるって言ってくれたのも、多分僕が焦りながら勉強に手が付かない状態になっていたことを気づいてくれていたからだ。
綺麗で近寄りがたいくらいにかっこいい人なのに、他人の、しかも初めて出会った人に対してまでも、さりげない優しさを与えてくれるような人なんだよな。紫藤さんって……。
そんな紫藤さんだから、僕は一目ぼれした後に、増々紫藤さんを好きになってしまったんだ。
「そうだよー、ここは緊張しないでいいとこなんだから。それに、歩君はもうこの同好会のメンバーなんだから、好きにしちゃっていいんだよ。こんなふうに♪」
「……え?」
びっくりして目が真ん丸になった。
だって。
僕の目の前で千佳先輩がコロンと横たわって、あの強面の東郷先輩の膝の上に頭をちょこんと乗っけたんだ!
しかもあのおっそろしい東郷先輩もそれに怒るどころか、目じりを下げて嬉しそうに千佳先輩の髪の毛を撫でている。
……どういうこと?
「付き合ってるんだよ、あいつら」
「えっ!?」
驚く僕に、紫藤さんはさらに衝撃の言葉を続ける。
「それにあいつらも」
「ええっ!?」
紫藤さんの指さす方向には、白石先輩と黒田先輩。
白石先輩はそれにはにかんだように笑って、黒田先輩はムッとしたような表情をした。
「…………」
びっくりして、ただただ言葉も出なくて、僕はポカンとした表情で紫藤さんを見上げた。
「フリーなのは俺だけだな」
「…………」
ニッコリと笑う紫藤さんに、僕の心臓がドキドキと煩くなった。
千佳先輩が勧めてくれた本を持ったまま突っ立っていた僕を、紫藤さんが寄ってきて肩をポンと叩いた。
「はい」
「よし、じゃあ来い」
畳の部屋に備え付けられている大きなテーブルの一角に僕を促して、ここに座れと言った。
そして、紫藤さんも僕の隣に座った。
……ドキドキする。
隣に紫藤さんがいるってだけで、嬉しくて嬉しくてしょうがない。
ダメだ、ダメだ。
ただでさえ、みんなに気持ちがバレてしまっていそうな状況なのに、これ以上僕が紫藤さんのことを好きだと思わせるような態度に出てしまってたら、紫藤さんもきっと困るに違いないし。
集中だ!
この本に集中するんだ!
僕はこの小説の一言一句見逃さないぞという気持ちで、一文字一文字をしっかりと目で追う。
そうやってだんだん集中し始めたころに、コツンと軽く肘に何かがぶつかった。
……あ。
紫藤さんの肘だった。
視線を向けた途端にパチッと目が合って、瞬時にまた頬が熱くなる。
まずいと思ってパッと視線を離して、しまった!と思った。
こんなふうにあからさまに目を逸らすなんて、後輩にはあるまじき失礼な態度だ。上下関係の厳しい人だったら、きっとムッとするレベルじゃないのか?
もう色々ごちゃごちゃ考えすぎていて、頭の中はパニック状態だ。
きっと今の僕の顔は、赤くなったり青くなったりと忙しないに違いない。
「あーゆーむー」
「うわわっ!」
突然横から手が伸びてきて、わしゃわしゃと乱暴に髪の毛を混ぜられた。そして僕の頭に手を置いたまま、紫藤さんが顔を覗き込んだ。
「余計なこと考えるなよ。素直に楽しんでろ。ここは俺らにとってそう言う場所だ」
「……紫藤さん」
まただ。
また、ほんの一瞬で僕の心の内を理解してくれた。
そして知らないふりをしないで、向き合ってくれる。
クリスマスの日に初めて会ったあの時、勉強を教えてやるって言ってくれたのも、多分僕が焦りながら勉強に手が付かない状態になっていたことを気づいてくれていたからだ。
綺麗で近寄りがたいくらいにかっこいい人なのに、他人の、しかも初めて出会った人に対してまでも、さりげない優しさを与えてくれるような人なんだよな。紫藤さんって……。
そんな紫藤さんだから、僕は一目ぼれした後に、増々紫藤さんを好きになってしまったんだ。
「そうだよー、ここは緊張しないでいいとこなんだから。それに、歩君はもうこの同好会のメンバーなんだから、好きにしちゃっていいんだよ。こんなふうに♪」
「……え?」
びっくりして目が真ん丸になった。
だって。
僕の目の前で千佳先輩がコロンと横たわって、あの強面の東郷先輩の膝の上に頭をちょこんと乗っけたんだ!
しかもあのおっそろしい東郷先輩もそれに怒るどころか、目じりを下げて嬉しそうに千佳先輩の髪の毛を撫でている。
……どういうこと?
「付き合ってるんだよ、あいつら」
「えっ!?」
驚く僕に、紫藤さんはさらに衝撃の言葉を続ける。
「それにあいつらも」
「ええっ!?」
紫藤さんの指さす方向には、白石先輩と黒田先輩。
白石先輩はそれにはにかんだように笑って、黒田先輩はムッとしたような表情をした。
「…………」
びっくりして、ただただ言葉も出なくて、僕はポカンとした表情で紫藤さんを見上げた。
「フリーなのは俺だけだな」
「…………」
ニッコリと笑う紫藤さんに、僕の心臓がドキドキと煩くなった。
1
お気に入りに追加
239
あなたにおすすめの小説
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話
天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。
レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。
ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。
リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる