綺麗な先生は好きですか?

くるむ

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第八章

今の俺が出来る事

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紫藤先生は運転中だからもちろん前を向いたままだけど、俺はそんな綺麗な先生の横顔を見るのが大好きなんだ。

「しばらくはこうやって外では会えないが、話がしたかったら電話でもなんでも掛けてこい。俺の方も出来るだけ時間を見つけて掛けるようにするから」

「うん、そうする。でも先生って、お家でも結構忙しいんでしょ?」
「……まあな。やっぱり授業の準備とかはなるべくしたいし、だけど忙しいときはちゃんと言うから、気にしないで掛けてこい」

「うん、分かった。ねえ、先生」
「うん?」
「さっきの和田って人、先生の自宅とか知ってるの?」
「いや、そこまでは知らないよ。だけど連絡先は教える羽目になった。教えないと学校まで来るだなんていうからさ。放っておくと、それくらいしかねないと思ったから、仕方なく……な」

「そうか……。先生、負けないでよ。俺は確かに頼りないけど、力になりたいって思ってるし。それに渚さんもいてくれてるんだから」
「そうだな……、大丈夫だから。こう見えて俺が結構したたかなのは、南も知ってるだろ?」
「……学校での先生が演技だって事は知ってる」

真顔でそう言うと先生は笑った。

家に着いて、お休みの挨拶をした後、先生はそのまま車を走らせて帰って行った。


風呂を済ませて部屋に戻って改めてさっきの話を思い起こしていたら、無性に腹が立って来た。
だってそうだろう?
どう考えたって理不尽な話だ。

イライラしながらベッドにボフンとダイブする。

『南くんも少しの辛抱だから、焦らないでな』

不意に思い出した渚さんの穏やかな声。

そうだよな。俺が怒ったり焦ったりしたところで解決するわけじゃないし、渚さんの知人が調べてくれてるって言っていたから、きっと何か良い案が浮かぶに違いないよな。

――とにかく!
和田って人の意図は分からないけど、俺は先生と2人で絶対幸せになるし、それをあの人なんかに邪魔されてちゃだめだ。

拳を握り、よし!と気合を入れた後、大学のHPを調べてみた。
気が早いかもしれないけど、やる気を出すためにもイメージ作りは大切だ。

管理栄養士の受験資格が得られる栄養学科がある、家から通えそうなところをまず一番最初に探してみた。もちろん必要とあれば県外に出て一人暮らしという手もあるんだろうけど、地元には先生も居るし、離れたくないからやっぱり近場が一番だ。

「あ、県立に栄養学科がある。……私立もあるけど、学費はやっぱり県立の方が安いな。あ、しかも理科の選択科目に物理が入ってる!」

これは……、使えるかもしれない。

明日から受験対策として先生を捕まえて物理の質問をしに行こう。……カモフラージュも必要だろうから、時々数学の先生や小百合先生にも質問するか。

俺は俺の出来ることをする。それ以外にどうすることも出来ないって分かっているから。
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