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第七章
恋人の時間 5
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「いっただっきまーす」
先生が注文してくれたお寿司を食べながら、さっきの続きを促した。
「ああ、高階先生の話な……。彼女、今付き合っている人がいるんだよ」
「え? なんだよ、じゃあ何も紫藤先生に頼むこと無かったんじゃないか」
文句を言いながらイクラをぱくり。
うん、美味い。
「……事情があって、そう簡単には打ち明けられない相手なんだよ。それにその時はまだ、片思いだったらしいんだ。意中の相手には、ゆっくりでいいから仲良くなろうと色々画策していたところだったらしいんだが、俺と付き合ってるって噂が流れ始めてから相手の態度がよそよそしくなって焦ったと言っていた」
「てことは、同じ学校の人? でも事情があって打ち明けられないって何? 俺と同じように、相手は生徒なの?」
「いや。生徒じゃなくて、学校の職員だ」
「職員? だったら別に……」
「――相手はな、同じ女性なんだ」
「…………」
ポカンとすること数秒。
女性、女性……?
同じ女性。
「ええっ!? え、え~っ?」
余りの驚きに、馬鹿みたいに「え」を連発して騒いでしまった。
高階先生が、あの美人でスタイル良くって色っぽいあの先生が……!?
信じらんねー!!
「確かに、信じられないよな。俺も最初、それを打ち明けられた時は顎が外れるかと思うくらい驚いた」
「だよね! だよね!」
「ああ。……だけどこれ、内緒だからな」
「大丈夫、言わない。絶対誰にも言わないから」
念を押す先生に、俺は真面目に頷いた。それに先生は目を細めて微笑んで、頭をわしゃわしゃと撫でる。
「これで安心できただろ?」
「うん。……でも、高階先生よく紫藤先生に話せたよね。俺なら相手のこともあるから多分話せないな」
「ふっ……。まあ、普通なら話はしなかっただろ。あれは多分、俺との噂で相手が自分から距離を取り出したのに焦って、俺自身にも生徒を諦めさせるためだけに振りをする手伝いをしているだけだってことを証明してほしかっただけなんだよ。ようするに、それしか方法が無かったって事だろ」
「そうかぁ。高階先生もその人に、べた惚れなんだね」
「そうなんだろうな」
「……俺たちと、一緒だね」
「だな……」
俺としては、心配の材料が減ったことは素直に喜べることだった。
だけど……。
チラッと先生の顔を見る。
パチリと目が合うと、先生は「なんだ?」と小首を傾げた。
う~。こういうトコ!
こういう所が無駄に人をグラグラさせちゃうんだよ!
「……やっぱり俺、心配だなぁ。見えないところに先生を好きで狙ってる奴らがウジャウジャいそう…」
「案ずるな。興味はない」
「……先生が興味なくたって、浜中や小山みたいに無理やりどうにかしようとする奴らもまた出てくるかもしれないだろ」
「――分かった。南が心配しないように、少し気を付けよう」
「うん。ホントにそうしてよ?」
「ああ。その代わりお前もな」
「え?」
「鳥海先生に、無駄に隙を与えないように」
「――あ……」
鳥海先生……。
確かに、あの先生はちょっと気にした方がいいかもしれない。
……先生に言われるまで、コロッと存在を忘れてはいたんだけどさ。
「分かったか?」
「うん。分かった」
「よし、じゃ飯食うぞ」
ついつい話の方に夢中になり、イクラと穴子しか食べてなかった。
先生の方を見てみると、ほぼ俺と同じ状態だ。
パクパクと口の中に放り込んで、俺は先生と食べる美味い寿司を堪能した。
先生が注文してくれたお寿司を食べながら、さっきの続きを促した。
「ああ、高階先生の話な……。彼女、今付き合っている人がいるんだよ」
「え? なんだよ、じゃあ何も紫藤先生に頼むこと無かったんじゃないか」
文句を言いながらイクラをぱくり。
うん、美味い。
「……事情があって、そう簡単には打ち明けられない相手なんだよ。それにその時はまだ、片思いだったらしいんだ。意中の相手には、ゆっくりでいいから仲良くなろうと色々画策していたところだったらしいんだが、俺と付き合ってるって噂が流れ始めてから相手の態度がよそよそしくなって焦ったと言っていた」
「てことは、同じ学校の人? でも事情があって打ち明けられないって何? 俺と同じように、相手は生徒なの?」
「いや。生徒じゃなくて、学校の職員だ」
「職員? だったら別に……」
「――相手はな、同じ女性なんだ」
「…………」
ポカンとすること数秒。
女性、女性……?
同じ女性。
「ええっ!? え、え~っ?」
余りの驚きに、馬鹿みたいに「え」を連発して騒いでしまった。
高階先生が、あの美人でスタイル良くって色っぽいあの先生が……!?
信じらんねー!!
「確かに、信じられないよな。俺も最初、それを打ち明けられた時は顎が外れるかと思うくらい驚いた」
「だよね! だよね!」
「ああ。……だけどこれ、内緒だからな」
「大丈夫、言わない。絶対誰にも言わないから」
念を押す先生に、俺は真面目に頷いた。それに先生は目を細めて微笑んで、頭をわしゃわしゃと撫でる。
「これで安心できただろ?」
「うん。……でも、高階先生よく紫藤先生に話せたよね。俺なら相手のこともあるから多分話せないな」
「ふっ……。まあ、普通なら話はしなかっただろ。あれは多分、俺との噂で相手が自分から距離を取り出したのに焦って、俺自身にも生徒を諦めさせるためだけに振りをする手伝いをしているだけだってことを証明してほしかっただけなんだよ。ようするに、それしか方法が無かったって事だろ」
「そうかぁ。高階先生もその人に、べた惚れなんだね」
「そうなんだろうな」
「……俺たちと、一緒だね」
「だな……」
俺としては、心配の材料が減ったことは素直に喜べることだった。
だけど……。
チラッと先生の顔を見る。
パチリと目が合うと、先生は「なんだ?」と小首を傾げた。
う~。こういうトコ!
こういう所が無駄に人をグラグラさせちゃうんだよ!
「……やっぱり俺、心配だなぁ。見えないところに先生を好きで狙ってる奴らがウジャウジャいそう…」
「案ずるな。興味はない」
「……先生が興味なくたって、浜中や小山みたいに無理やりどうにかしようとする奴らもまた出てくるかもしれないだろ」
「――分かった。南が心配しないように、少し気を付けよう」
「うん。ホントにそうしてよ?」
「ああ。その代わりお前もな」
「え?」
「鳥海先生に、無駄に隙を与えないように」
「――あ……」
鳥海先生……。
確かに、あの先生はちょっと気にした方がいいかもしれない。
……先生に言われるまで、コロッと存在を忘れてはいたんだけどさ。
「分かったか?」
「うん。分かった」
「よし、じゃ飯食うぞ」
ついつい話の方に夢中になり、イクラと穴子しか食べてなかった。
先生の方を見てみると、ほぼ俺と同じ状態だ。
パクパクと口の中に放り込んで、俺は先生と食べる美味い寿司を堪能した。
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